彼女煩悩
放課後。
みんなはもう下校し始めているのに、彼女はなかなか席から離れない。
さっきの授業のさー、
お菓子食べるー?、
何この落書きかわいー、
人気者のきみの回りにはどんどん人が集まる。
声をかけるタイミングを逃してしまっていたけど、でもそろそろ連れていってしまおう。
きっとそろそろ誰かが言い出すから。
ほら、
「ねえねえ、みんなでファミレス行こーよ!」
でも
「だめ、その子は予約済みデス。帰りマスよー」
盛り上がった空気をまるっと無視する。
きみはにっこり笑ってすぐに席をたつ。
またね、ばいばい、とみんなに手を振りながら自分に駆け寄ってくるその姿だけでにやけれる。
「ごめん、待った?」
「待ってないデスよ」
なんで、敬語?ってきみは笑う。
たぶんキメ顔とか全く考えてなくて、本当ににこーっと笑って真ん丸になる。
「あー、独占したい」
「独占?」
ああ、欲求がぽろっとでてしまった。
そしたら、彼女はポカンとした顔で変なことを言い出した。
「ある生産物を供給する企業が一社のみである市場?」
「なんでや」
それならすでに、デスよ?と、珍しく小悪魔な顔をしだして。
「わたしにドキドキを供給してくれるのは、ゆうちゃんだけデスし」
と言って。
何故かスキップしていく。
他人が言ってたら、よくそんなセリフ素で言えるなあなんてツッコんでしまうだろうに。
ああ。
おれの彼女は今日もかわいい。