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戦いの国の少女アリス-fairy game-  作者: 花澤文化
第1章 1回戦、開幕
5/13

第4ゲーム 種族と、ピアノコンサート

「ですが今日から動くのはそれこそこの事態を飲み込めるような人物だけでしょうね。まずはそのメールが本当なのか、本当だとしたらこの戦いに参加するのか。考えることがたくさんありますからね」

 

 アリスはこちらを見る。

 逆に言えば、今日動いている者たちはすでに状況を飲み込んだ、戦いに前向きの精鋭ということになる。

 そう、汐海はまだこの戦いに参加するかどうかを決めていない。

 汐海宅ではまだ話し合いが続いていた。もう外は日が暮れ始め、夕日がのぼっている。カップ一杯に入っていたお茶もすでに3杯目だ。


「参加しないのなら、腕輪を自分で壊せます。それは開始当日である今日だけ認められる権利で、今日を過ぎると自分で壊す事ができず、相手に壊されるしか逃げる方法はありません」

「壊したら・・・アリスは・・・?」

「負けたときと同じですよ。具体的なことは分かりませんが、なんらかのペナルティが待っているはずです」


 汐海は考える。

 そんなことは出来ない。だってアリスはゲーム内のキャラじゃない。異世界だけど確実にこの世界に住む1人の人間、1人の妖精なのだ。汐海の一存で彼女を不幸にしてはいけない。

 その考えを読んだのかアリスは少しだけ笑う。


「お人よしすぎますね、少し。予想以上に冷静だったということにも驚きましたし、こちらの言う事を1つ残らず信じることにも驚きました。そしてお人好し、汐海様は本当に優しいお方です。しかし、巻き込んだのはこちらの方。あなたには選ぶ権利があります」

「・・・・・・うん、わかった参加するよ」

「だからよく考えて・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」


 アリスは汐海の方を見る。

 目でもう一度言ってと催促。


「え、いやだから参加するよ。アリスのためでもあるし」

「いやいやいやいや!ゲームで普段から合っていたとはいえ実質的には今日が初対面ですよ!なんでそんなにあっさり・・・!さ、最悪死ぬかもしれないのに・・・!」

「うーん、でも難しいことは分からないしさ。知らない人でもひどい目にあうってなったらそれは少し木になるよね」

「でも・・・!」


 自分の命と天秤にかけるまでもない。大事なのは見知らぬ命より自分の命のはずだ。

 しかし汐海の覚悟は決まったのか、そもそも覚悟なんていらなかったのか汐海はひたすら話をすすめる。アリスはそれに動揺しながらもあたふたと答えた。


「さっき、ゲーム機触ってみたんだけど、ステータス表示とかはまだ出来るんだね。残念ながらレベルは2に戻ってた」

「はい・・・い、今まではチュートリアルですから。レベルも1からになります」

「ってことはレベル制ってことだね。1上がったらステータスにポイントを振れる形式。それでさっきの獣人を倒したから経験値が入ってレベルが2に上がった」

「敵の腕輪を破壊すればかなりの経験値が入ります。もちろん、あの空間に入って戦うだけでも少しもらえるのですが、やはり腕輪破壊が一番ですね」


 そこらへんも人間自身を傷つけないための仕様なのかもしれない。腕輪破壊が強さに繋がる。その事実がある限り腕輪を破壊せずに人間そのものを攻撃してバトル終わらせるようなことはしない。もちろん腕輪が破壊されたと同時に時間停止空間も壊れるため、その後攻撃を受けるようなこともない。

 汐海はアリスのステータスを見る。


name:Alice(アリス)

Lv:2

HP:7

STR:4

AGI:15

INT:11

LUK:12


残りステータスポイント:7

PA:【花咲ブルーム


 nameはそのまま名前である。そこにはアリスと書かれている。

 Lvはレベル。HPは体力のことであるこれが高ければ体力がありある程度の攻撃を生身で受けれたり、連続で攻撃しても疲れにくくなったりする。

 STRは攻撃力。物理攻撃力のことである。妖精種であるアリスの攻撃力はかなり低い。

 AGIは素早さ。相手の攻撃をかわしたり、素早い動きで翻弄できる数値のことだ。妖精種はそれなりに高い。

 INTは魔法攻撃力や魔法防御力のことである。これが高ければ高いほど魔法による攻撃力が高く、魔法に対する耐性が高くなる。また、魔法を唱えられる回数や、魔力の使用回数も上がる。

 LUKは運のことだ。クリティカルなどに影響すると聞いたが、状態異常になりにくさもこれによる。上げておいて損はないものだろう。


「ん・・・?」


 汐海は気付く。

 PAとはパーソナルアビリティのこと。花咲とは先ほどの魔法の拳の正式名称なのだが・・・その上だ。残りステータスポイント・・・。


「これはキャラクリエイト時にあるボーナスポイントとレベル上がり分、でいいのかな」

「はい」


 レベルが上がるたびにポイントがもらえ、数値を振れるのだがキャラクリエイト時にランダムでステータスポイントがもらえる。個人個人ポイント数が違うので同じ種族でも結構な違いが出るのだ。

 恐らくボーナスが5でレベル上がりによるポイントが2なのだろう。


「7か・・・」


 悩みどころである。

 妖精種の素早さを活かすならAGIなのだが、全部振ったところで小人種には敵わない。INTでもいいかもしれないが、やはり精霊種には劣ってしまう。妖精種は羽があるとはいえステータス自体は実はそれほど特徴がなかったりするのだった。


HP:7

STR:4

AGI:15+3

INT:11+2

LUK:12+2


「こんな感じでいいかな?」


 一応試しに振ってみる。


「アリスは汐海様に全て任せます。こればかりはやはりパートナーの仕事だと思いますし」

「だよね・・・優柔不断なんだけどなあ僕」


 こういうステータス振りで1日中悩める性格なのである。

 とはいえ、これはゲームではない。1日中悩んでいる間敵が待ってくれるわけではないのだ。汐海はまあ、これでいいやと決定ボタンを押す。



HP:7

STR:4

AGI:18

INT:13

LUK:14


 ステータスが決定した。

 そしてもう1つ、ステータスを振っている時に見えたものがある。汐海はそこにカーソルを合わせ、ボタンを押す。


Silver ring

Lv.2

連射ブースト

【  】

【  】

【  】


 というステータス画面に似たものがもう1つ。そして上に書かれているのはシルバーリングという文字。汐海はすぐに自分の腕についている銀色の腕輪を見た。

 その腕輪は銀色ではあるが、何の素材で出来ているのか分からない、見た事の無いものだった。表面に浮かんでいるのは妖精種の種族旗に描かれているマークだ。


「大体予想通りだと思います。それが私たちをサポートする能力。銀色の腕輪の能力です」

「能力・・・」


 連射、と書かれたそれはどんな意味でどんな能力なのかまるで想像もつかない。それにその下にも空欄がいくつか。さらに能力が解放されるということだろうか。


「私にも分からないので、こればかりは実際に戦ってみるしかありませんね。ただ、あくまでサポート能力って感じなのでそれ単体で戦えるほどではないと思います」

 

 というか、とアリスは話を区切る。


「本当に参加していいんですか・・・?明日になってしまうともう途中で抜け出す事はできないんですよ」

「・・・・・アリスも優しいよね。十分」


 アリスは思わず言葉に詰まる。

 面と向かってそのようなことを言われたのは小さい頃が最後だったか。色々と一瞬で苦悩した結果大きくため息を吐いた。


「しょ、しょうがないですね・・・そもそも私が汐海様を守ればいい話ですし、参加してみましょうか」

「うん、頼りにしてるよ」


 再びまっすぐな好意をぶつけられ、赤面するアリス。

 いかんいかんと大きく深呼吸してから最後の確認をする。


「最後に種族のおさらいです」


 そう言ってアリスは話しだした。

 

 妖精種フェアリー、魔法の前段階である魔力そのものを使える。ただ、魔法にして扱いやすくなること前提のものなので魔力自体威力はあるものの、不安定。一瞬でも気を抜けば自爆に繋がってしまう。暴走しないようにした結果、魔法より威力が低い状態がほとんど。素早い動きが得意で唯一羽があり、空を飛べる。


 精霊種エルフ、攻撃魔法、補助魔法の魔法全般を扱うのを得意とする。また魔法耐性もそれなりにあり、魔法に関しては他の追随を許さない。しかし物理攻撃には弱いため、距離をとって戦うことが多い。初期の時点で使える魔法の種類、回数は多い。


 獣人種ドワーフ、物理攻撃が得意で、物理攻撃耐性もそれなりにある。体力が高く、ずっと戦っていられる。しかし魔法耐性と状態異常耐性がほぼなく、魔法相手だと辛いものがある。力によるはやい動きを得意としたり、直線的な動きは素早いと言われている小人種と同じぐらい。


 小人種ホビット、頭がよく、罠や道具をつかった戦い方が得意。背丈がとても小さく、大人になっても身長的には子供のまま。動きがかなり素早く、妖精種よりもはやい。また、補助魔法を使うことが得意であり、物理攻撃には少し弱い。


 亜人種デミヒューマン、能力自体は平均的。攻撃も魔法もそれなりに使えるが、6つの種族の中で唯一パーソナルアビリティであるPAがない。その代わり、PAを模して造られた人工物の魔具という道具を使う。しかしやはりPAには劣る。道具を使うのがうまく、苦手な攻撃もない。


 異形種イレギュラー、姿形が個人個人で違う。道具の形をした異形も見つけられている。個性的な行動が多く、謎なことも多い。苦手、得意が個人によって違う。


「・・・・い、以上です」


 早口で話し続けたせいか、かなり疲れているアリス。

 その様子を見て、汐海は少しだけ笑った。





 買い出しのつもりだった。

 日は落ちかけており、もう少しで夕方という時間も終わる。先ほど、中断されてしまった商店街での買い物をしようと外出した。

 汐海宅近くの商店街(正確にはただのお店の集まりだが)に行こうとアリスを部屋に置き、1人で歩いている。アリスは1人は散々危ないと言っていたが、今日から行動する奴は極一部だそうだし、と無理やり置いてきたのだった。


(というか・・・)


 目立ち過ぎるのだ。あの格好。

 メイド服のような、外国の人形に着せるファンシーな服はアリスにとても似合っているけれど、今のこの世界には合わない。浮いてしまう。

 ついでに服も見ようかなんて考えながら商店街に向かっている途中のことだった。その途中にある公園に人だかりが出来ていたのだ。

 近くの公園から何か音がする。


(珍しいな・・・この時間は子供も帰りだすのに・・・)


 しかしその人だかりの中には子供もいる。

 何か催しものでもやっているのだろうか。汐海も少しだけ興味が湧いた。どうせ夕飯まで時間もあるし、と歩みをそちらへ向ける。

 近付いていくにしたがって音がはっきりと聴こえるようになっていく・・・。


(聴いた事ある・・・確か有名な曲だったと思うけど・・・)


 別に音楽に興味があるわけでもなかった汐海は頭をひねって考えるも曲の名前は思い浮かばず、簡単に諦めた。その曲はとても耳に残る曲で、頭にするりと入り込む。

 雑・・・だけど聴き入る何かがその音、曲にはあった。

 汐海が見たものはスーツのようなものを来て、シルクハットをかぶったピアノを弾く男の姿。


(あの人が弾いているのか・・・)


 勝手に女性だと思い込んでいたが、どうやら弾いているのは男性。すごいなあ、とひとしきり感心する。するとそのピアノのすぐそばに座りこむ女の子の姿が。中学生ぐらいだろうか。

 あの子もピアノを聴いている1人なのだろうか・・・そう思っていたのだが。


「あれって・・・」


 その少女の腕には銀色の何かが・・・。

 その瞬間、ここらへん一帯に何かが広がる感覚が。見た目的には何も変わりない風景ではあるが、人が1人もいない。ただそこにあるのは現実まんまの風景と、建造物、そしてピアノだった。


「え・・・え、え・・・」


 あたふたとする中、綺麗に響き渡る声が。


「んんんんんんんん!ォオオオマイゴォオオオッド!またか!またもや私のコンサートに邪魔が!!このクズパートナーがいるからかああああ!だからついてくるなと言ったのに・・・!」

「ごめんなさい」


 先ほどのシルクハットの男と少女が2人並んでいる。

 汐海はさすがにそこまで鈍くはない。この状況を把握した。ああ、これが時間停止空間。そしてこれから始まるのがバトルというやつか・・・他人事のように考える。


「まあいい。またすぐに終わらせよう。先ほどの雑魚エルフのように」


 そう言って男はピアノの椅子にまた座り始めた。


「コンサートの続きを始めよう」





 アリスは羽を広げ、時間停止空間を飛んでいた。

 パートナーと種族人が近くにいた場合はそのまま位置を同じくしてバトルが始まるが、パートナーとの距離が時間停止空間の外にある場合は自動的に時間停止空間に転移させられる。

 ただ、その転移する位置はランダムであるためすぐにパートナーと会えるかは分からないのだ。

 時間停止空間の広さはどれぐらいか分からない。

 アリスはひたすらあの商店街へ飛んでいた。種族がバレることを気にせずひたすら。


「だから言ったじゃないですか汐海様のバカー!!」

とりあえずあらかた説明したい部分が終わったので完全なる説明回はこれで最後になると思います。


まだ最初の方ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。


ではまた次回。

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