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落ち着いた自分?

うん、とりあえず息は整った

左右前後、ついでに上下も自分以外はいない


ここに腰を落ち着けて考えてみよう


1つ、ここは現世である

2つ、自分の姿が現世の人に認識される

3つ、何故だか分からないが身体が小さくなってる


う、残念なところがさらに残念

いや断崖絶壁に、女の子としてのアイデンティティが崩壊しそう


更に何?この格好はどこの民族衣装?


鏡が切実に欲しい、身体全体を写せる姿見の鏡が

それに気のせいかな、私


気のせいであって欲しいけど……


思い切って見たさきには垂れ下がったふさふさの尻尾

私の髪の毛と同じ色をした尻尾は確かに私の腰下、正確にはお尻の中ほどから生えていた

恐る恐る触った瞬間に現実だと知る


感覚がある


「獣人、いやケモノ冥官になってしまったの」


ポロポロと涙がこぼれ、尻尾は丸まってしまう


「帰りたいよ、助けて誰か………」


しゃがみこんでアンジュは静かに泣き出した


いくらダメダメな冥官だったとしてもこんな異世界で酷い目に合わなければいけないのか

それに心配してくれる者は限られているだろう、この世界で果たして自分を探してくれるかさえ不明だ

もしかしたら、探してくれずこのまま捨て置かれてしまうかもしれない

そうなれば、元の世界に帰る術を持たない自分は……………


そこまで考え込んでしまい、アンジュは更に身も蓋もなく涙を流す


帰りたい、兄さまのところに


一体どのくらいそうしていたのか、気付けば辺りは薄暗くなり

アンジュを照らすモノは月明かりのみになっていた


「誰かそこにいるのかい?」 


突如として聞こえてきた声に顔を上げ、アンジュは辺りを見回す


「おや、獣人だね。こんな暗がりじゃ危ないから早くお帰りなさい

最近ここらは物騒になってきたからね」


優しい声に涙が更に流れる

月明かりの下に現れたのはそれはとても強面な青年


「熊?」

「………やっぱりか、うん分かってたよ

みんなそう思うよね」

「ご、ごめんなさい。あなたは熊さんに似てるけど優しそうな人です」

「熊さんは余計かな?」


青年の苦笑に、反省する

見かけで判断するのは失礼過ぎる


それに青年の魂はとても澄んでいるため、真実自分を心配しているのが分かったからだ


「熊さん、ここはどこでしょうか?」

「迷子なのかい?名前は分かる?」

「……アンジュ、冥官でいつの間にかあっちにいました」

「アンジュちゃんか。メイカ・ン族の出身なんだね

随分遠いところから、いやいつの間にかってことは転移でもしたのかな」


首を捻り、真剣に悩んでくれる青年にアンジュはまた泣き出しかける


「兄さまのところに帰りたい」


唇を噛み、俯く

兄さまに似た雰囲気を持つこの青年にアンジュの涙腺が緩むからだ


優しい兄さま、この世界に来た時はいつか帰れると思っていたから寂しさもなかったが

現世に肉体を持っていることに言い知れない不安と悲しさでいっぱいになって

優しくてそれでも時には厳しい、温かい兄さまに会いたくて仕方がない


「お兄さんがいるんだね。心配してるよね」


困り顔な青年は慰めるようにアンジュの頭を優しく撫でる


「とりあえず家に来るかい?こんな夜に外にいるよりはマシだと思うから

狭くて騒音があるけどさ」


手を差し伸べてくれる青年にアンジュは頷き、その手を握り締めた

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