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静かです。静かすぎて気分が乗りません

1人です、誰もいません

酷いと思います、何故1人も先生はいないんですか?

確かに研修生を纏めるとは総出しなきゃいけないのは分かりますが、私には1人も付いてなくていいですか?

本当にいいんですか?


「課題はすでに三日目で終わってしまいましたし、掃除は七日目に、図書館の本は既に既読して三周目ですし

皆さんが帰って来るのは、今十一日目だから後十九日くらいですか?」


そう、皆さんはまだまだ帰って来ませんし、練習してみましょうか

ゆっくりと練習出来るだけ

練習すれば出来るかもしれませんし、見返してやるくらいの気合いを入れないと


「誘え、世界の柱よ

我の音を聞きしは碧星、纏う羽は虚の色」

頭上に浮かぶ陣は七色にかがやき、最後に白く瞬く

「第3の隠、絶明羽衣」

その瞬間、陣は前後左右、そして上下に浮かび上がりアンジュを包む

しかしすぐに陣は黒く染まり、ひび割れ粉々に砕け散ってしまう

ハァ、とため息がもれる


「やはり、発動しても途中で壊れてしまいます


なぜでしょう?力の込め方に問題はないと言われてますのに

質?それとも正式な研修生じゃないからでしょうか

イーオンの気が合わないのでしょうか?」


落ちこぼれって言われても仕方ないですね

実技何一つ出来てない

なんとか魂の回収は出来てるもトロい

ダメダメです、失格です


「異世界でもダメな子だとは自分のことなが

ら情けなさすぎです」


今更ですが事故で来てしまったって正直に言えば地獄の研修生達は皆さん優秀な方々だと、言い張れるかもしれないんですが

でもやっぱりそれはそれでどうして私のような事故に繋がるか管理責任を問われるような

そこまでも行かなくてもお前は何者かって聞かれた時に答えを言うのがつらい


どこまで行っても堂々巡りになってしまう


「そうです、少し外の空気を吸いましょう」


冥界と言われて暗いイメージを思い描くだろうが全く違う

人界と同じく太陽と月が空にあり、なおかつ季節もある

違うのは生息する動植物だ


例えば人界に咲く「サリュ」と呼ばれる可愛らしい花は、冥界では「ガハ」と呼び名が変わり毒々しい色の毒花となり

動物は何故か言語を理解して暮らしている


これには流石に異世界と納得したものである


そしてその中でもアンジュにはお気に入りの動物がここで育成されていた

こちらの冥官の方々にあまり不評らしいのだが

叱られてた時や落ち込んだ時に癒やされに行くのだ

あの触り心地よさ、暖かさ、優しい語り口調は兄さまを思い出してしまいます


いつも私のことを気に掛けてくれる兄さま、いつの日にか兄さまのような方になりたい

兄さまのように獄卒として立派に働きたいと憧れています


兄さまのことを考えるとくすぐったい


「うふふ、兄さまのようなあの子達は大人しくいるでしょうか」


苦笑しつつ、部屋から足を踏み出した


瞬間、激しい衝撃に襲われた


一体何、地震?


立っていられなくて床に身を伏せ、不安げに顔を上げる

そしてアンジュは揺れる視界にキラキラと光る物体が現れたのを見た気が

だが確かめる間もなく、意識は突如断ち切られるように暗転した


だから知らない、アンジュを囲むように黒い円が描かれ、ゆっくりとアンジュを飲み込んだのを

そしてアンジュが飲み込まれた後、何事もなかったように黒い円は消え失せてしまったことも


アンジュが行方不明になったことを皆が知るのは実習から戻ってくる19日後のことであった




「今、なんと言われましたか?」


現在聞き捨てならない発言を聞いた気がして聞き返した

画面越しの男は杏樹アンジュの指導官と言っていた


「ですからアンジュは現在行方不明で捜索中でして」

「おい、何故行方不明なんかになる!!

杏樹アンジュから目を離したのか」


一気に頭に血が登る


「全員で現世に特別実習をしていまして、アンジュは能力の面から居残りをさせて」

「1人のしたのか、こちらから出した者を

その意味を分かって実行したのか」


顔が強張っていくのが分かってゆく

大事な杏樹アンジュを1人し、行方不明にした

決して、加護を失っている杏樹アンジュを1人にしてはいけないのに

まだ位階みくらを得てない、獄卒たる杏樹アンジュに世界からの干渉から逃れる術はない


おそらく世界の求めを無意識で感じ、招かれてしまったのか


「その代償は高い」


舌打ちし、瞬時にその出で立ちが変わる


「私がそちらに渡ることにした。今すぐ陣を開けろ

悪いが杏樹アンジュは任せられないと判断した、本来の研修生と共にそちらに行く

話はすべてそちらの冥王と話す」


有無はいわせない

すぐさま、身を翻して消えた彼に画面越しの指導官は呆然と立ち尽くしていた

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