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講義、初級編七十一のこと


〈魂の優しい扱い方をマスターしましょう〉


1.魂は壊れやすく傷付きやすいものです。けして乱暴に扱ってはいけません


2.運命螺旋ノヴァ・アウラから好き勝手に魂は抜かないで下さい。魂が弱り消えてしまいます


3.回収時は専用の入れ物に、そしてランプ代わりにしないで下さい、絶対に守ろう


4.贔屓はしてはいけません。どの魂も平等に扱うこと

魂の行く手を決めるのはあなた方ではありません


5.魂はボールじゃありません。遊ばないで!!

スポーツの道具との勘違いは正して下さい

特に男の性を持つ方はくれぐれも、遊ばない!!



最後に

一般常識的すぎて今更なことを受講させなければならない私達の悲しみが分かるか?

絶望しかない!!


冥官たる者は自覚を持ち、誇りと向上心でもって運命螺旋ノヴァ・アウラを支えろ


やれないならさっさと辞めてしまえ


……異世界って意外と茶目っ気あって良いですね

講座方式で受講しないといけないそうなんです

最初に言わせていただいてもよろしいですか?

なぜ一般常識的な魂の繊細さを今更教えてるんですか?

それから何をしたんですか?先人達は


ランプ代わりにしたんですね

そして魂でスポーツですか?まさかの事実にびっくり

そしてドンマイ!です

血涙を浮かべた教本作成者が見えるのは気のせいだと思いたい


「アンジュ?」

「ハルルリアさん、どうかしました?」

「どうかしたのはこっちの台詞、ぼぉ~としてたけど分からないことでもあった?」


顔を覗きこんできたこの金髪美人さんは私と同じチームのハルルリアさんです

とっても才色兼備なハルルリアさんはこのイーオンの冥界を統べる王を輩出する五名家のご令嬢です

ですが気取ったところがなく姉御肌気質な方で落ちこぼれな私をよく手助けしてくれる良い方です

蜜色の瞳で見つめられたら男は一発で陥落だそうで、確かにハルルリアさんの瞳は綺麗で美味しそう、

あ、失礼しました。流石に食いしん坊な私でもお友達の瞳は食べませんから

もう一度言います、ハルルリアさんの瞳を見る度、蜂蜜が舐めたいなとは思いますが

決してハルルリアさんの瞳は食べません


「分からないことあるならなんでも聞いて」

「ありがとう、そしていつも迷惑かけてごめんなさい、ハルルリアさん」

「もう、迷惑なんて掛けられてないから

それより、次は実技だから早く移動しましょう」 


優しく手を引いてくれるハルルリアさん


私、子供じゃないよ。それに実技場には1人でもいけるから

でも優しいハルルリアさんの手は払いのけられるはずもなく

今日もまた連れて行かれるのでした、まる




「では次の者前に出て」

「はい!!」


わぁ、意気込んでるな

今日の実技は体術か、ちょっぴり苦手である

でも私頑張らないと、みんなの足を引っ張ってばっかだし


「次!!」

「あ、はい。行きます」


相手は………大丈夫じゃないよ

なんで実技トップの子と当たるのかな

精一杯やりますが


え、いきなり投げ飛ばすなんて

あれ、いつの間にか先回りしてる

ギュッ、痛い。叩きつけられました


「それまで、次の者、用意を

それからアンジュはあとで私のところに来るように」


はい、結果当然のように負けました 

一撃も入りませんでした、いえ瞬殺でした

根っからの文官な私には辛い

 

「気にしない、アンジュ

アイツは実技馬鹿で頭はすっからかんだしね

私も勝てないし」


ありがとうございます、ハルルリアさん慰めでもありがたいかぎりです


それしても指導官なんのようなのかな?

悪いことじゃないといいのだけど……




静まり返った実技場、信じられない言葉を聞いてしまいました

思わず聞き返してしまいました


「明日からすべての研修生は現世で特別実習を行う、しかしおまえはその間ここに残り補習していろ

安心しろ課題はたくさん残していってやる」


なんと私一人でここに居残りを告げられました

いくらなんでも置いてけぼりとは

落ちこぼれすぎて実習参加出来ないなんて


もう笑うしかないかな?

いや、笑いごとじゃない

特別実習は全員強制参加のはずなのに

可笑しいです、見捨てられたんでしょうか?


指導官は言うだけ言って後ろも振り返らず行ってしまった

実力主義過ぎて付いて行けないと思ってましたが置いていかれるとは思いもしませんでした


実際されると落ち込みます





泣き崩れる最愛の人の後ろ姿

声を必死に殺し、周りに気づかれないよう涙をこぼす

どうすれば悲しみを、和らげてあげられるだろう

1人苦しみ嘆く姿は見たくもない


だから私はどんな手段を取っても悲しみを取り除くことにした

禁忌だと、異端だと知っている

だが、私は渇望する


「もう一度、かの者を我が手に

我に《鍵》たる理をこの場に現せ」


手を伸ばした先に確かな感触を感じ、一気に引き寄せた


だが、あともう少しと言うところで何かが繋がりを断ち切った


「失敗したのか?…………いや、半分は成功したようだな

この場に引きずり出せなかったがこの世界に落とすことは出来たみたいだ」


握りしめた拳に微かに残る残滓が教えてくれた


世界に理の一欠片が落ちたことを


あとは捕らえ、願いを叶えさせるだけだ


「待っていてくれ、あと少しで君を暗闇から救い出して上げられるから」


冷たくも燃え上がる青い瞳が空を見上げた

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