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誤解からの

地獄、そこは亡者が現世から下る世界


十王の裁きを受け、六道輪廻を繰り返す理

故に魂の循環は尊ばれ亡者は苦しみながら解脱を目指す


私はそんな亡者達の魂を管理する数いる執政官の一人でした

そう、でしたと言う過去形、今は違います

あれは覚えてる体感時間で今から2ヶ月も前のこと




地獄 閻魔庁ある廊下


「あ、そこの貴方、悪いんだけどこれ持って燕鬼様のとこに行ってくれないかしら?」

声を掛けられ、私はため息が漏れる

「・・・分かりました」


私に数本の書物を押し付け、走り去る姿に諦め気味に私は踵を返す

何故私、こんな下働きなことしているんだろうか

ちょっぴり涙が出そう

でも仕方ないか、私現代風に言わせればモブだものね

地味顔、存在感薄い、その他大勢さんに混ざったら見つからないって有名だものね

別に仕事が嫌いじゃないし、獄卒の皆様に仕事押しつけられてもへっちゃらです


えっと燕鬼様だっけ?なんの役職に就いてる獄卒でしたでしょ?

獄卒が多いため重大な役職の獄卒の名前以外うら覚えなので

主要な獄卒は覚え込まされたので分かるのですが

しばし、考えながら歩いて行けば苛々と廊下を行ったり来たりな鬼の獄卒が一人


不審な動きですが何かあったんでしょうか?

内心首を傾げ、申し訳ないですが聞いてみましょうと近付いた


「あの、燕鬼様って方知りませんか?私この書物を届けに」

「やっと来たか!!一体いつまで待たせるつもりだったんだ。お前が最後だぞ

約束の時間はとっくに過ぎている、さっさと入れ」


え?これそんなに急ぎだったんですか?それは………

あら?なんでこの方私を突き飛ばすんでしょうか???床光ってますね

それにこの文字はどこかで見たような


「時間がないから簡単に済ます

すでに他の獄卒達はあちらに飛んでいる

分かっているとは思うが失礼がないように」

「あの、私は………」

「遅れた言い訳はいい、あちらに繋がる門が閉まってしまう

では楽しい研修であることを」


あの私の話を、て何ですかこれは

あちら?研修?、………まさか私違う


「私はちが、キャ~」


身体が引っ張られる、ああ、もう無理

そして私は地獄から飛ばされてしまいました

聞くも涙語るも涙の『獄卒の研修地』へ


「もうこの国っていっつも最悪よ。死人がバタバタ出るんだから」

「可哀相にこんなに小さいのに、私が優しく連れて行ってあげるからね」

「なにやってる、この馬鹿者共が」


わぁ、龍が飛んでるな。あ、あっちには妖精さんがって最初は現実逃避に


「何してるのアンジュ?置いていくよ」


振り返り手を差し出す彼女には大きな翼があります

それは見事な真っ白な翼です

ここは私が居た地獄とは違う世界イーオンの冥界

数百年に一回、このイーオンと地獄は交換留学と言う名の研修を行っているんです

そして今年がその研修の年だったらしいです

私、間違われました。はい、完全なる誤解です

次の研修の年がくるまで帰れません、研修をしなければなりません


どうしてこうなってしまうんでしょうか

私には地獄でお仕事があるのに

ああ、そういえば私がいなくなっていることに気付いて、慌ててないと良いんですが


なにせ私は閻魔大王の補佐執政官の一人なんですからね

まぁ、私一人いなくても困りませんか

優秀な方々ばかりですし、存在感薄いから気付いてない可能性もありますしね


あ、でも流石に兄さまは気付いてくれるとは思いますが

ですがこの状況は変えれない気はしますが

諦めが肝心ですね 


それに私そんなにイーオンが嫌いではありません

ちょっぴりファンタジーに憧れていましたし、数百年くらい留守にしても大丈夫な気がします

二度目ですが地獄での存在感は薄いですし


ですから私、杏樹アンジュは異世界で経験を積みたいと思います

と思ったのですが現実は厳しいですね


私、落ちこぼれすぎて毎回怒鳴られて

今では孤立して私とチームを組んで下さってるこちらの冥官見習いさんお二方と指導官としか話してません


どうしましょう…………私、先行き不安です




その後の地獄の某一室にて


「分かってますよね?」

「はい、今すぐ調査報告を」


直立不動になり、青い顔の獄卒の前にはリズム良く爪で机を叩く青筋を立てた美女が1人座っている

「まさか、無関係な獄卒を勘違いであちらに送るとは

しかも、それが判明したのがつい先程で

間違れた獄卒が誰かも判らないとは」

笑顔なのに、吹き出す怒気が目の前の獄卒を凍らせている

それなのに目を反らせない、いや反らさせるつもりがないのだろう


「早く判明させなければ………」

「全力で行います、行ってきます」

ガタガタと震えながら飛び出して行った獄卒に美女は眉を顰める

「全く、余計な仕事を増やしましたね

今日も徹夜ですか、どう言い訳しますか」


深く息をつき、机の上にある鈴を一度鳴らす

だが何の反応もなく

首を捻り、何かを探すように宙に視線をさまよわせ

椅子から勢いよく立ち上がった


「今すぐに燕鬼を呼び戻せ!!

それからイーオンに繋がるゲートの用意を始めろ」

バリトンの怒声が美女、に見えた美青年から響き渡った

「寄りにもよって杏樹アンジュを送ったのか

待っていろ杏樹アンジュ、兄が迎えに行くからな」

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