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日常

拝啓、兄さま

お元気でしょうか?

皆様を困らせていないでしょうか?私はとっても心配です

私はいつも通りですよ、ある一点を除いてですが………

ですが大丈夫です、だからお仕事頑張って下さいね


PS.そういえば前に先輩が職務怠慢はお仕置きですって言ってましたが何をしたんですか?


では、あなたの愚妹より




長蛇の列となっている転生の間を大きな声をあげ、注意喚起し

「並んでください、そこの方は列を乱さないで」

今日も慌ただしく仕事をこなしています

「転生を希望されたい方はちゃんと順番よく礼儀ある行動を

現在の行動も審判の一つに入ってますよ」 

「お嬢さん、いつまで掛かるんだい?かなり待っている気がするんじゃが」

一人の男性が困った顔で列から顔を出してきた

「神様次第です。現在は審判が長引いているようでして」

情けなそうな表情で返事をすればやれやれと言わんばかりに黙り、列へと戻ってくれた

「次、入ってきてもらって」

「はい、では中に進んで下さい」

不安げに進んでいく人を笑顔で見送り、名簿にチェックを入れた

これでとりあえず半月前までに来た魂の約八割は相談、確定が終えて休息期間に入る

「お疲れ様、交代するわ」

「あ、はい」 

肩を叩かれてようやく魂の整理番交代時間になったことに気付く


んと、次のシフトは現世に降りて魂の回収か


腕に嵌めたブレスレットに軽く触れるとつい先ほどとは違う青い服に変わる

これはあちらにない物のため、慣れるのに時間が掛かったがなんとか使いこなせている

「お~い、早くこっちだよ」

声がした方を向けば色気過多気味な少女?が手を大きくこちらに向かって振っている

「すでに他の者より0.07秒遅れを取っている。仕事は早く、正確、丁寧かつエレガントに、だ」

その横には冷徹そうに懐中時計を見る青年

「はい、申し訳ありません今すぐに」

まだまだ仕事は続きます




光り輝く太陽、白い城、澱んだ最下層の裏通り

まだ数回しか来てませんが、変わりがありませんね、ここ


片手に鳥籠の形をした魂専用ボックス、もう片手には割り当てられた魂回収手帳を持ち周りを落ち着かなげに見る


今日から一人で魂の回収で、もちろん近くでチームを組む二人もそれぞれで魂の回収を行っていますが


キョロキョロと周りを見、そして発見する

まるで塵芥かのごとく打ち捨てられた小さな身体

見開いた瞳に映すものはなくただ虚ろだ

眉を寄せ、深く一礼し作業に取りかかることに

ボックスに近付ければフヨフヨと淡い色の魂がひとりでに飛び込んでゆく

「さぁ、心配はないから。一緒に行きましょうね」

優しく囁きかけ、ふわりと宙を舞うように歩き出す

まだまだ回収すべき魂はあるのだ、残念だが立ち止まっている余裕は残されていない


ボロボロのベットの中で死臭を漂わせた老婆

身ぐるみを剥がされ全身傷だらけの青年

服を破かれ、首を絞められた少女

血の海を作り、苦悶に歪んだ表情の男性


だれもが死にゆくことに未練があり、哀しげに佇んでいる


その一人一人から丁寧に魂を抜き取りボックスに入れ、身軽に走る

大分時間は掛かってしまったが担当する魂は集めた


手慣れていないがキチンと回収したので誉めてくれるとうれしい

損なっていないし、回収した魂も間違っていない


ボックスを両手で大事に抱え、軽やかに宙を飛び回り、見てきた人影に固まった

見間違い?いいえ、見間違うことは許されない方です

私を指導してくれている指導官です


「遅かったな。あとの二人は既に終了し戻っているぞ」

「え?早いですねお二人共」

「貴様がとろくさいだけだ!!毎回毎回集合時間までに回収も出来ないとは

貴様だけだぞ、恥ずかしくないのか!?

他の研修生は優秀なものばかりなのに、貴様はどうやって選ばれたのか

一度、そちらの冥界に伺ってみたいものだ


交換研修生に能力が劣る者を出すとは」


罵りを吐く指導官に小首を傾げ、それから


「すみません、丁寧に慎重に運んでいたため手間取りました」


深く頭を下げ、内心首を傾げる


あれ?よくよく考えば私はここに来る予定ではなかったから事故とも言えるのでは

言い訳がましいですが事実ですし


「これだから異界コミュニケーションは嫌いなんだ

それに友好だと言ってるが、ナメられてはいるのではないか。一度上申したほうがいいだろうな」


私に対することについては返す言葉はありませんが、訂正するならナメてはいませんよ?

事実です、紛れもなくです


不機嫌そうに無言で出された指導官の手に魂回収手帳とボックスを渡せば足元に帰還の陣が発動される


また怒られてしまった……

甘んじて受けなければならないだろう

立場的に自分はこの世界の理の外から来た仮の住人に過ぎない

それに自分は言い返す度胸もないチキンでヘタレである

勝ち目は最初からない


ああ、どうして自分はこの世界に本当来てしまったのか


何度思い返しても納得出来そうにない


だが、来てしまった時点で自分は代表して来た研修生と見なされる

諦めるしかないだろうが、あまりにもお粗末な事故での突発的な出来事


帰還の陣に入った瞬間、景色は一瞬でかわる

漸く見慣れてきた景色に一度安堵の息も付き、歩き出す

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