加藤君と五百蔵さん
〝運命〟そんな言葉を信じているわけじゃないけれど彼女との出会いはそれを感じずにはいられない。
なんというか、ただの興味だったんだ。今考えてみると、なぜあの時の自分は辞書をひかなかったのかと悔やまれる、普通にのっていた。
今更後悔しても遅いが、それくらいに五百蔵 一叶という子は俺の人生というか、生活を簡単に捻じ曲げたんだ。
まずは俺とその子が何故出会ったのか、そこから話すことにしよう。
***
その日、俺は偶然辞書を忘れ、偶然辞書が図書室で借りれると友達に教えてもらい図書室へ行ったところだった。
そう、偶然。本当に偶然だったんだ。そしてそこに彼女、五百蔵 一叶がいたのもきっと偶然のはず。
そこで目の前で本を借りている彼女の図書カードにふと目を落として、つい声にだしてしまったんだ。
「……ご?」
「…いおろいって読むんですよ。」
まさかこの声が彼女に聞こえていてさらに彼女の名字を読もうとしてうっかり出た声だとバレると思っていなかった俺は驚いて、咄嗟にこう言ってしまったんだ。
「か、格好良い名前だね。」
これが俺と彼女のはじまり。こんな小さな事かと思うかもしれないけど、人生ってそんなものだろう。第一俺は絶対に不良に絡まれている人を助けたり朝寝坊してパンをくわえながら登校したりしない。そんな俺がもう入学して大分たつのに名前も顔も認識してなかったクラスメイトと話すようになるきっかけなんて、他にないと思う。
そしてここから、俺は彼女のことを嫌でも深く知るようになる。
それはさっきの続きで俺が図書室から戻り五百蔵という子が同じクラスにいるということを知ったけどまぁ特に気にもせず辞書をつかって授業をうけた後の話。
「なぁテル、お前五百蔵に何かしたのか?」
「え?」
放課後、クラスメイトの木村 誠に言われた一言。ちなみにこの木村は俺のことをテルと呼ぶ、絵に描いたような〝元気だけがとりえ〟という様な奴でまぁいわゆるクラスのムードメーカーという感じだ。そんな彼から言われた一言
「…さっきはじめて話したんだけど…なんで?」
なにかするもなにも、一言話しただけなんだけどなぁ…。俺なにかした?
「いや、あのさ、あいつ昼ぐらいからずっとお前の事睨んでるんだよ。」
「え。」
睨んでる…?えーと、い、い、いろろいさん?えーとなんだっけさっき聞いたのに、覚えにくいな、とりあえず彼女とさっき初めて一言話しただけの俺が?
「気のせいだろ?」
「いや、気のせいじゃないってお前めんどくさいだけだ…あ、」
…あ?
急に大人しくなった木村の目線の先を見た俺はさすがに驚いた。
「……っ?!」
「加藤くん、ちょっといいですか?」
そこにはさっきまで話の中心人物だった彼女がいた。
***
俺何かしたっけ…。
部活動に入っていない生徒たちがぞろぞろと下校をはじめている。
そんな中とりあえず彼女の後をついて廊下に出たは良いけど。正直彼女との思い出があまりにも少なすぎる。色々と考えてみるけど原因が思い当たらない…。
「加藤君。」
「はい?!」
突然振り返り真剣な顔で彼女は話を切り出した。
「単刀直入に言います。私とお友達になってくれませんか?」
「……は?」
聞き間違いじゃない…よな?今この子は確かに、お友達といった、なる?誰と?え?俺と?
「え、えーと…話の意図がみえないんだけど…」
「ダメですか?!私自分で言うのもなんですが見た目も性格もそんな悪い方じゃないですよ?!」
「いや、だからそういう事じゃなくて、ていうか話聞いてる?」
こういう子だったのかこの子は。話したことないから印象もなにもないけどもっと大人しい子だと思っていた。それというのも彼女の見た目は肩まで伸びた黒い少し癖のある髪をゆるく三つ編みしていて、三つ編み=真面目と思っている俺はこれで騙され(?)た訳だ、そして目は少し茶色がかっていてとてもぱっちり、小柄で華奢と…まぁ確かに可愛い部類ではあると思うけど…それを自分でいうか?
「つまり俺が聞きたいのはなんでいきなり俺と友達になりたいって言ったのかって事なんだけど。」
「理由…ですか?」
うーんと考える仕草をする…あぁいい加減名前思い出したいな、、えー…いよろい?いろろい?おしい、何かが違う。
俺がそんな事に頭を悩ませていると彼女は何か思いついたようで、ガバッと顔をあげた。
「私の名前!!どう思いますか!?」
「え、」
今こういう質問されるとは思わなかったなぁ。うーん、どうしよう、思い出せないんだ、とか言ったら失礼だよなぁ
「えーと…格好良いと、思った…けど。」
語尾が自然と弱々しくなる、今どうしても思い出せなかった俺は最初に思った感想をそのまま言った。…さすがに失礼だったかな、クラスメイトの名前思い出せないっていうのは。あと少しのところまで来てる気がするんだけど。
こんな事を考えて眉間にしわがよりまくっている俺とは対照的に彼女はぱあぁっと音が出ていそうな位に顔を輝かせた。…え?
俺が彼女の反応に驚くと突然彼女はバッと俺の方に身を乗り出してきた。
「か、格好良い?!やっぱりあの時も格好良いって言いました?!」
「…え?は?!」
「あの時ですよ!あの時!図書室で私の名前読んだじゃないですか!」
ち、近い近い近い。ものすごく興奮しているのか俺との距離がどんどん近くなってくる。シャンプーの香りがふわっとするあたりがすごく女子っぽい…
っじゃなくて、え?図書室?図書室…って
「もしかして…お昼休みの時の話?」
「そうです!そのもしかしての話です!」
そのまさかの話は聞くけどそのもしかしての話ってあんまり聞かないよなぁ。俺が知らないだけかな、、
「えーと…で?その話がなんでお友達になりたいと繋がってくるの?」
なにか変なこと言った?、と彼女に尋ねる。格好良いって女の子に対して失礼だったのか…。
悶々とする俺に彼女はまたも予想外な言葉を発する
「名字を褒められたなんてはじめてだったんです!私とっても嬉しくてて!だから友達になりましょう加藤君!!」
「え、ちょ、待っ?」
待った、頭が追いつかない。
「それに!今日半日、観察させてもらって容姿もよし性格もよし!と私の第三審査まで合格をしたので声をかけさせてもらったというわけで、、」
「ちょっと待ったっっ!」
やっと声が出た。さすがに今流せないつっこみどころがあった。
「審査ってなに!」
「だから、容姿も悪い、性格も悪い人と友達だなんて嫌じゃないですか!だ、か、ら個人的に審査をしてですねー…」
「……。」
帰ろう。うん、そうしよう。これ以上この子と関わらない方が良い。
「折角だけど俺にはほどほどに友達いるし、君にはついていける気がしない。それじゃ」
「え?!ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!加藤君!!」
笑顔を浮かべ爽やかに足早にその場を去る。後ろで呼ぶ声がしたけど無視。
俺はまだ残っている数少ない帰宅部を抜かしてスタスタと帰った。
***
「加藤君おはようございます!」
「…。」
翌朝、学校に登校した俺の前に現れた少し小さな影。
「意外と遅い登校なんですね加藤君。遅刻しちゃいますよー」
彼女だった。何故か下駄箱で仁王立ちをしている。…まさか
「あのー…いよろいさん?」
「いおろいです!あ、そういえば自己紹介がまだでしたね!」
そういって彼女はその場でくるっとまわって礼をした。
「私の名前は五百蔵 一叶!一つ叶えると書いて一叶です!」
とりあえず上履きは履き替えた。うん、覚える気力が沸いたら覚えることにしよう。
「で?いろろいさんはなんでここにいるのかな?」
「いおろいですってば!今言ったでしょう⁈…こほん、私はですね昨日の話の続きを、」
「だから、その話は断ったはずだけど?」
わざとらしく話をはじめる彼女を遮るように話を終わらせようとした。すると彼女は心外だ!とばかり言い出しそうな顔をする。
「ですから!昨日はさすがに私も急過ぎたかなって反省してます。ごめなさい」
ぺこり、と頭を下げる彼女。…なんだ、意外と普通な面も持っているんだな
「というわけで!まずはお互いを知ってから!と思って今日は私の良いところなど知ってもらおうと思いまして!と、いうわけで迎えに来たので
(きーんこーんかーんこーん)
教室に向かいましょう加藤君!」
「おい。」
前言撤回だ。彼女が普通なわけがない。ていうか鐘、鳴った。急がないと遅刻に…いや、もうされるかもしれない。
「あ?!加藤君?!また置いて行くんですか?!」
間に合うかわからないけどとりあえず俺は全速力で走った。……彼女を置いて。
「ちょっ、ちょっと待ってくださ…っっ、い、意外と…はや、いやほんと待ってくださいって!!」
どんどん後ろから聞こえる声が遠ざかる。まぁ気にしない、とりあえず走ろう。
一心不乱に走った俺が遅刻扱いにならなかったのは担任が優しかったからだと思う。…そして彼女が遅刻扱いになった事は言うまでもない。
そして
「加藤君!次移動ですよ!お荷物お持ちします!」
「加藤君!次、当たりそうですよ大丈夫ですか?」
「加藤君!お腹すきましたねー!飴食べます?」
「加藤君!お昼ご一緒しましょう!私お弁当作ってきたんですよ!」
「加藤君ー!」
彼女は毎時間毎時間隙があれば俺に話しかけてきた。
「…はあぁ。」
お昼休みの後半、彼女はお手洗いに行くとかなんとかで一瞬席をあけた。もちろんさっきまでずっと一緒に…正確に言うとつきまとわれてお昼も一緒に食べていた。もちろんそれは自分のお弁当だけど
「…大丈夫か?テル」
そんな疲れきった俺を心配してくれたのは木村だった。今まで元気だけが取り柄と思ってごめん木村、お前いい奴だよ。
「…あぁ。」
声を出すのもだるいほどに俺は疲れきっていた。
「お前…五百蔵を家来にでもしたのか?」
「してないよ、しないだろ。」
「だよなぁ…。なんか犬みたいだったぞあいつ。」
そう言われて忠犬を連想する。…確かに今日のは明らかに主人を追いかける忠犬そのものだ。耳としっぽまでみえてきそうな気がする。
「困ったなぁ…。」
うん。困った、本当に困った。今日一日で終わればいいけれど、きっと彼女は俺が友達になると言うまで続けるだろう。…なんだかこちらも意地になってきて折れたくない。
「お困りごとですか?!でしたらこの五百蔵 一叶に任せてください!邪魔な者は即排除しますよ!」
「…おかえりいおよいさん。」
「おしい!おしいです加藤君!いおろいです!…で?なにかお困りで??」
「…。」
君のことだよ、と言いたかったけどやめた。なんだか無駄な気がしたから
はあぁっと再び深ーいため息をつく俺をみて木村がそっと彼の大好物であろうマフィンを置いてくれたことは絶対忘れない。
***
俺の予想通り、彼女は俺が折れるまでこれをやめないようだった。
俺も俺で、折れるのもなんだか悔しいというくだらない理由で彼女と友達になることを拒み続けた。
そんなことをして1週間と少しが経過した。
「お前ら…本当飽きねえよなぁ。俺もうお前らがセットにみえるもん。」
「な?!」
「本当ですか?!」
お昼休み。いつも(?)の通り木村と俺が昼飯を食べている所に彼女が入ってくるという形になっていた時、ふいに木村が語り出した。
「おい木村、セットとかやめてくれないか…。」
「いーや、もう諦めろテル。お前らはどう見てもコンビだ、例えるならハチ公とご主人だ。」
「ですって!加藤君!」
「そこ喜ぶ所じゃないからいそろいさん、犬扱いされてる。」
「いおろいです!」
「ほらこれとか最早名物だぜ?俺の中で」
ほれみろ、な顔の木村、尻尾が生えていたらブンブンと振っていそうな彼女。
木村に言われたのは納得いかないけど…まぁ確かに彼女がこの場にいることに慣れ始めている自分がいた。…不本意だけど。
「ていうか五百蔵、お前毎日毎日よく作れるな、それ、テルの分の弁当だろ?」
「もちろんです!お友達になるためですから!…あんまり食べてくれないですけど」
「まぁ俺が食ってるからいいじゃんか!もういっそ俺に作ればいいのに、食費浮くし」
「あ!お昼休み終わりますよ!加藤君!次移動です!」
「おい五百蔵、俺を無視するなー」
「私は加藤君を誘っているので!」
そしていつの間にか木村と彼女が仲良くなっていることも驚きだ。二人ともなんというコミュニケーション能力。
「…俺先に行くからな。」
とりあえず、関わらないようにと二人がじゃれている間に移動する。
「え!あ、ま、待ってくださいよ!」
「えー…走るの?俺歩いていくわー」
…早歩きしていたのに彼女だけはついてきた。
***
「…。」
「はぁ、はぁ…か、加藤君ー…」
廊下を越えて階段に差し掛かった頃、上りの階段で彼女はもうバテてしまったようだ。しかし気力で追いついたのか俺の腕をガシッとつかんだ。…あ、捕まった
「…はぁ、ほら、離してくれる?いろよいさん。」
「……。」
…あれ、おかしいないつもならここでつっこみが入るはず。
ふっと振り返った瞬間、急に俺の腕にかかる力が無くなった。
「……っ⁈ちょっ!!」
***
「…ん?あれ…。」
「あ、目覚ました。」
がばっと起き上がろうとする彼女を押さえつけてとりあえずため息ををついた。
ここは保健室。階段で急に倒れた彼女を俺がここまで運んで来たと言うわけ。木村には先生に伝えてもらうように頼んだので授業の方はとりあえず良いと思う。
彼女が起きるまでずっとここにいて状況を把握している俺と違って彼女は自分がなぜここにいるのかわかっていないみたいだった。
「倒れたんだよ、階段で…覚えてない?」
ベッドに肘をつきながら尋ねる、とりあえず彼女はさっき俺に頭を押さえつけられたからか起き上がりはしなくなったので代わりに俺が覗き込む。
「貧血と寝不足だって先生が言ってたけど?」
「…せ、先生は?」
「いるよ?…なんか勘違いしたみたいでそそくさと外に出て行ったけど」
「え?」
「いや、こっちの話だから気にしないで。…それよりいのろいさん。」
「い、いおろいで」
「お弁当、何時に起きて作ったの?」
「……。」
スーッと俺から目線が外れる。落ち着きが無くキョロキョロして心なしか冷や汗もかいている気がする……当たりかな。
「はぁ…、なんでそんな倒れるまで無理したの。」
「だっ、だって!…加藤君と…仲良く…なりたくて…。」
段々と語尾が小さくなり終いにはしゅーんとしてしまった。小さい彼女がさらに小さく見える。
「…はぁ。」
「なっ、」
俺は再び深いため息、そうか彼女は友達がいたことあんまりないのか。
「あのねぇ、俺にお弁当用意してくれた事は…まぁ頼んでないけどありがとう。あとあんまり食べてなくてごめん。」
「…はい。」
「だけど、仲良くなりたいから相手に尽くしまくるっていうのは違うと思う。たくさん話してただ一緒にいるだけで楽しいとか自分が自分でいれるとかそういう風になれることだと…俺は思うよ。」
彼女の目がしっかりと俺を見つめている。大きい目がさらに大きく見開かれてその目から
「…っ。」
ぽろぽろと、大粒の涙が零れた。
「…ごめん、別にいろよいさんを全否定したいわけじゃないんだけど」
「いっ、いおろいっ、ですっ。そ、そうじゃなくて」
ひっく、としゃくりをあげながら泣く彼女は元々幼い容姿がさらに幼くなったようにみえた。
「うん。」
「わたっ、し。加藤っくんと、とっ、とも、友達になりたっ、なりたくて!」
「うん。」
「最初はっ、名前を褒められたからっだった、けどっそうじゃなく、て」
「うん…。」
「私はっ…加藤君っと…。加藤君の言うような…、そんな風な、友達に、なりたい、です」
「…。」
「楽しい…ですっ、貴方と話すのが…、楽しいんですっ、一緒に過ごすのが」
「…うん。」
「私と…友達になって…もらえませんか…っ?」
…俺の負けだ。完敗。
「うん。」
こんなに必死に言われて、断る奴がどこにいるだろう?ハチャメチャで普通の人よりだいぶ変わってて彼女についていける人なんて、今のところ俺か木村くらいだと思う。なぜか俺は…多分木村も、彼女のこういう所を楽しいと、長所と感じてしまうんだろうと思う。バカな子ほど可愛い…とはまた違うか。
俺がまさかここで折れると思わなかったのだろうか、彼女はまた目を大きく見開いて、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。
「泣かないでよ…。なんか俺が泣かせたみたい。」
「か、加藤がっ、泣かせたんですよっ!うんって!うんって言うから!」
「じゃあまた嫌だって言う?」
「だ、ダメです!」
「ふはっ、冗談だって」
なんだか必死な彼女の姿が面白くて笑っていると、下から少し落ち着いた彼女が少し遠慮気味にちらっとこっちをみた。
「…?なに?」
「あ、あの…。」
心なしか顔が赤い気がするけどそんなに照れることでも
「な、名前で…呼んでくれませんか。」
「…え?」
名前??
「加藤君…いつも私の名前まともに呼んでくれないじゃないですか…。と、友達なれたなら…その、呼んでくれても」
「…一叶。」
「…………え?」
…ん?なんでそんなに驚いて…ていうか、え?名前間違えた?
彼女の顔がみるみるうちに赤くなっていく
「な、なに?」
「え、いえ、あの、まさか一叶って呼ばれると思わなくて…私は苗字をまともに呼ばれたことないって事を言ったんですが。あの、でも!名前の方が嬉しいです!どんどん呼んでください!」
…苗字?…名前で呼ぶって
「ーーっっ////!!!?」
やっと気づいた俺のした失敗に。彼女は俺が五百蔵とちゃんと呼ばないことに対して言っていたのに、俺はそれを通り越して
〝一叶〟
「だっ大丈夫なようなら俺は先に戻ってるから!!!」
はやくこの場から逃げ出したくて俺はそれだけを早口で言って勢い良く立ち上がってドアの方へ向かう。
「え、まっ、加藤君!!最後に!最後に質問させてください!」
「……何?」
顔がなんだか熱い気がするから極力彼女の方をみないようにしてその場に立ち止まる。
「あの、加藤君の名前ってなんて読むんですか?」
「え?」
予想外の質問だった
「名前ですよ!私読めなくて…」
「…自己紹介がまだだったね。俺の名前は加藤 晃正 よろしく、五百蔵さん?」
俺はくるっと回って礼をした。いつだかの彼女と同じように
「…ふっ」
「なっ?!」
彼女に笑われた。
「なんだ!加藤君も中々人のこと言えないくらい変わってる名前じゃないですか。ふふっ」
「な、笑わなくても…ていうか聞いておいて加藤君って呼ぶの。」
「そうですね…まぁ呼びやすいので!ね!加藤君!」
…さっきまでの彼女はどこへ行ったのだろう。一瞬可愛いと思った気がしたけどきのせいだ、あれはきのせい。まぁでもこっちの方が彼女らしい
「…まぁいいよ、好きに呼んで。」
「そういえば加藤君さっき私の事五百蔵って呼びましたけど一叶って呼んでくれないんですか?」
「なっ///」
人がせっかく忘れかけていたことをっっ
「一叶って呼ばれるの好きなんです!なのでほら!どんどん呼んでください!」
あぁもう、友達になったからにはこれからもっと彼女に振り回されるのかな。にやにやと嬉しそうな彼女を横目に見ながらそんな事を考える。
「…いい、やめておく、いいよ、いよよいさんで。」
「だからいおろいですってば!」
きっと何回やり直しても彼女とはこうなってしまうんだろうなぁ
なんとなくそういう気がして、逃げれる気がしなかった。
そんな事を考えながら深いため息をつく俺とは対照的に五百蔵 一叶は花のような笑顔を浮かべるのだった。
はい!ここまで読んでくださってありがとうございました!!
加藤君はこれからきっと大変な人生になりますよw
五百蔵さんとはいつになったら離れるのでしょうね?もしかしたらずっと一緒かもしれません…w