うさぎの夢語り
ぼくは、この世界と向こうの世界を行き来するうさぎ
決められた時間、世界を飛んでいく
いつも時計を気にしている。
だけどある日、一目惚れした。
向こうの世界の、かわいい君に。
空色のワンピースが揺れていた。
ぼくは何度も行き来した。
きみを見たくて行き来した。
ただ君の姿を見ていたくて
だけど、調子に乗りすぎた。
ぼくの姿をきみは見た。
見られてはいけないはずなのに。
会ってはいけないはずなのに。
ぼくは、時計を盗み見た。
どうか許してお姉さま
どうか許して青虫様
どうか許してハートの女王様
ぼくは、この世界と向こうの世界を行き来するうさぎ
決められた時間、世界を飛んでいく
いつも時計を気にしている。
だけどある日、破った掟。
向こうの世界の、かわいいきみへ。
揺れるブロンドに触れてみたい。
君はぼくを追ってきた。
好奇心で追ってきた。
どこかうれしい、けどぼくは
やっぱりきみから逃げ出した。
きみは穴へと落ちて行った。
ぼくをおって落ちて行った。
ぼくは、時計を盗み見た。
ぼくは、君を助けられる?
魔法のケーキで助けられる?
魔法の薬で助けられる?
お茶会は楽しいかい?
ぼくも君とお茶したい。
帽子は君に似合うかな?
良い帽子屋を知っているんだ。
ぼくは、君の為に贈るよ
魔法のケーキを贈るよ
魔法の薬を贈るよ
ねぇ、君も女王様の言いなりになるの?
ねぇ、君もあの猫の言いなりになるの?
臆病なぼく、だけど君を守りたい。
薔薇をも染める優しさが
笑顔をばらまく明るさが
揺れるおおきなリボンさえも
みんなぼくを引きつける。
ついにきみは歯向かった。
女王様に歯向かった。
真っ赤なハートの女王様
ますます真っ赤にそまるとき、
トランプ達が追いかける。
君は、面白半分逃げ回る。
タイムリミットはもうすぐだ。
ハッピーエンドにするために、
ぼくから君へ最後の魔法。
これはきっと夢だから、
心にそっとしまってね。
もしもまたどこかで会えたなら、それこそ運命なのだから、
その時は一緒にお茶をしよう。時間を忘るるそのときは。