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魔法少年・ユウ  作者: 里見
動きの季節
6/16

〜side yu〜内側に向いた人たち

ユウは炎を初めて形にしたその日以来、ほぼ毎日花屋に通った。

誠もたいていそこにいた。

「次は水をやってみるといいよ」

と誠は言った。「これも炎と一緒でイメージしやすいからね。イメージのコツを掴んでいるから、炎のときみたいに時間はかからないはずだよ」

たしかに、水は60回目くらいで形になった。

「あとはそうだな、電気とか、植物なんかも作れるようになるよ。まだ難しいと思うけどね。水の応用で氷や気体を作るくらいだったらわりと早く出来るようになるよ。まぁでもとりあえず、炎と水を上手く操れるようにならなくちゃね。つまり、大きさや形を自由に決められるようにさ」

そう言って誠は左手の人差し指ゆびからピーナッツほどの炎を出した。

その炎はだんだん大きくなっていき、誠はそれでテーブルの上にあったマシュマロを割り箸に刺して焼いた。

「はい」

誠は焦げ目の付いたマシュマロをユウに渡した。

マシュマロは表面が溶けて温かくなっていた。

「うまい?」

と誠は訊いた。

「うん」

ユウは返事をした。

「こんな風にマシュマロを綺麗に焼くことが出来たら合格。それと同時に、これも、ね」

そう言って誠は炎の消えた人差し指を床に向けた。

彼の指から一滴の水滴がこぼれた。

「こういう風に」

中指、薬指と、順番に水滴が落ちた。「小さな水を出すことの方が意外に難しい」

ガラスのテーブルに三滴の水滴が浮いた。

「もちろん君は杖でやるんだよ」

「僕はいつになったら杖なしで出来る?」

「当分先だよ。杖で炎と水を自由に使えるようになってから。慣れるまではこういう媒介が必要で、ちなみにその棒はただの棒だよ。イメージというのは簡単なようで実は結構難しい。はじめはそれを集中させるための何かがいるのさ」

「ふぅん」

ユウは魔法の杖だと思っていたものがただの棒だと知らされてがっかりした。

「だけど」と誠は続けた。「違うものを使おうとすると、やはり上手く魔法を使えないだろう。君がはじめに炎を出したのがその棒だからね。そのイメージが君にはある。それに最初は君、それを魔法のステッキか何かだと思っただろう?そのイメージも、実は炎を形成するのに有利になっていたりするんだ。普通の割り箸を使うよりも早い期間で炎が出せるようになったはずだよ。どちらにしても、魔法にはイメージが非常に大事なんだ。思い込み、ともいう」

誠は割り箸に突き刺したマシュマロを口に入れた。

「思い込みは強い方?」

「分からない。たぶん、強いと思う」

と誠は応えた。

「うん、それは充分な才能だよ。ちなみに俺も強い」

「そんな気はしてた」

「ふふ、俺はずっとそれを自分の短所だと思っていたんだよ。そうだと他人に指摘されたこともある。だけどそれが魔法の上達に役立ったんだから、良し悪しっていうのは分からないものだね」

「そうなのかな。僕にはよく分からない」

とユウは言った。

「まぁ、つまり魔法使いというのはそういう人が多い。自分の内側に思考が向いている人の方が魔法使いとして上手くやっていける。意外かもしれないけど。そして、そういう集団というのは残念なことにコミュニケーションが上手くないんだ。不安になった?」

「ううん」

とユウは応えた。「魔法使いというのは他人に関心がないんでしょう?」

「そういう人も多い。必ずしも思考と関心の方向はイコールではないけど」

「それなら安心した」

誠はくすりと笑った。

「それより」とユウは言った。「魔法が使える人は誠以外にもいるの?」

「たくさんいる」

と誠は応えた。

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