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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

土下座する友人の隣に怪しい黒髪美少女がいる(それでも俺はガチャを引く2)

作者: りょうくん
掲載日:2026/06/15

十年前の続きものになります。

久しぶりに見たらどなたかが読んでくださったようで、私も読み返してちょっとだけ書いてみました。


今ではよくあるお話です。

すみませんが、前作をお読みください。


主人公の金持ちの友人観点のお話です。




 「マジカッケー俺の大親友のジロー様!もう堪えられません!助けてええぇ!!」


 珍しく友人自宅のマンションに呼び出されたと思ったら、玄関入って三秒のスライディング土下座。


 僕は無言でパチャリとスマホでその姿を撮影し、動画撮影開始。土下座したまま固まっている友人に向けて、とてもいい笑顔で笑いかける。


 「助けてってなんなん?ところでさ君の隣で一緒に土下座してる女の子は誰かな?君には姉妹いなかったよね?」

 「あ、こいつはニートで…「やはり死ぬしか!」止めろ!何回も言わせんな!!」


 使えないと言われて何処から取り出したのか、黒髪の美少女はチャキッと短刀を首に当てる。


 すぐに友人である瑞樹に怒鳴られ、美少女はシュンとうなだれた。

 「……申し訳ございません、ご主人」


 ……どこの時代劇かな?

 僕はさらに笑みを深め瑞樹を見下ろした。


 「説明」

 「簡単に言うと

 ガチャでこいつ引いた

 二人分で生活費カツカツ

 最新アップデートのガチャ引きたい

 以上」


 「はっはは。君、馬鹿なの?最後の本音しかわかんないよ。帰るかな」

 「ジロー様帰らないで!俺を見捨てないで!!」


 ガシッと僕の足にしがみつく瑞樹。

 「わかるように説明」

 「信じてもらえるかわからんが、半年くらい前にあった大規模停電覚えているか?」


 そう切り出して友人が語ったのは正直信じられない話だった。

 でも面白かったけどね。


 なんでも停電が起きた瞬間に引いたゲームのガチャで、星五のアサシン黒羽を出したそうな。


  それが現実化して隣で土下座している美少女だとさ。


  僕も黒羽を当ててカードは持っている。確かにイラストで描かれている黒羽っぽい姿の少女だ。


 僕と瑞樹がはまっているスマホゲー『碧空の精霊』はガチャで精霊と呼ばれるしもべを戦闘で使うゲームだ。


 精霊にはレア度があり、星の数でレアを示す。星が多いほど強い精霊になる。

 黒羽のレア度は星五。一番高いレア度で出現率が1%という激レアだ。


 その激レアがなくともゲームではある程度勝てるので、それを欲しがるのはかなり入れ込んだコレクターくらいだろう。


 課金可能なゲームなので僕は金の力で手に入れたけどね。


 ガチャは石と呼ばれるゲーム内の魔石1個で一枚精霊カードを引ける。

 だけどほとんど人は10個でワンセット10枚のレア10連ガチャを引く。


 そっちのガチャはレア度星三が一枚必ずセットに含まれるからだ。


 おっと話が少しそれてしまった。

 僕は手渡された瑞樹のスマホからゲームにログインしてガチャ画面を開く。


 魔石は10個。レア10連ガチャ引ける。


 そのままガチャボタンを押すが、『魔石を投入して下さい』と表示されてガチャが引けない。


 投入?魔石が不足していますというエラーメッセージなら見たことがあるが。


 「パソコンからログインしたら普通にガチャ引ける。


 スマホのバグかと思ってバックアップとって再インストールしようとしたんだけど、アンインストールできないんだよ。


 運営に問い合わせしたけどそんなバグはないって。


 そうしたら黒羽がスマホが魔道具になってるとか言い出してさ。


 本物の魔石いれないとガチャで精霊召喚できないとか言うんだよ」


 「美少女の次は魔道具。魔道具ねぇ」

 「信じられないかもだけど、嘘じゃない」


 「まぁ真偽はおいといて。

 それで僕に何を助けて欲しいわけ?その子の戸籍とか?


 まさか子ども出来ちゃったとかじゃないよね?」

 「馬鹿いうな!三次元に興味はないっ!」


 きっぱりと瑞樹が答える。

だよね、一応信じていたよ。残念な答えだけど。


 瑞樹はゲームが好き過ぎて、恋愛までまだ興味がもてないお子ちゃまだからしょうがない。


 「一人居候が増えて生活費が増えた。海外にいる親に説明できないから生活費を倍にしてくれと言えず。


 特に服代がヤバかった。ユニク○で全部揃えたけど、まとめて買っても割引ないんだな。


 今のスマホは魔道具になったせいかゲーム以外のアプリは使用不可なんで、新しいスマホ買いたい。


 だけど俺がバイトで稼げる金は微々たる程度。もともとガチャ引く分を稼ぐくらいのバイトだったからな。


 倹約してみたけどスマホ代なんてとてもとても……。高い、高いぞスマホ!事務手数料ってなんだよ?


 黒羽は常識教えてる段階でバイトさせられないし。


 そんな状態だから課金ガチャにつぎ込むなんて……月五回だけ。泣くだろう、泣くよな?

 わかるか?俺の苦しみが!!

 今月最新アップデートされたし!

 レア引きてー!


 出世払いでお金貸してください!!」


 ガチャ廃人め。

 まぁ、特に新アップデートがあれば五回じゃ確かに少ないな。

 廃人じゃなくても十回は引く。


 しかし、よく半年も僕から彼女を隠せていたね。

 瑞樹の功績というより彼女の隠密が優れていたのかもしれない。


 「いいよ。但し条件があるけど」

 「喜んで!!」

 そんな簡単に答えるなよ。

 ちょっぴり友人の将来が心配になる。

 まぁおもろいからいいか。



 僕、鬼龍院次郎が友人の話を全く疑わないことには理由がある。


 日本のごく一部の者だけ知っていることなんだけど、日本全体が大規模停電したあの後にダンジョンが見つかった。


 変哲もない川崎のボロ倉庫が消えた。翌日に大きな鉄門に変わっていたのだ。


 そう門。門だけだ。

 表裏どちらから見ても門。


 門はすんなりと開けることができた。

 門の先には湾岸の川崎倉庫街ではなく、薄暗い洞窟だった。


 ボロ倉庫が門に変わっていた時点で警察が呼ばれ、門が開いた後は政府管轄になり自衛隊が周りを固めた。


 その周辺は立ち入り禁止区域となり一部の者以外の箝口令がひかれた。


 その後の調査で自衛隊の特殊部隊が洞窟を探索し、ゲームでスライムと呼ばれる未確認生物を発見。


 銃器は効かず、鋭利な刃物または鈍器で倒せたらしい。


 倒したスライムはしばらくすると忽然と消えた。

 まれに倒れたスライムの代わりに青白い小さな石が後に残った。


 その石はいかなる地球上の物質と合致することなく、魔石と呼ばれることになった。

 なにかに使えないか政府機関、一部の企業で調査中だ。


 その門の先の洞窟、ダンジョンの一階層はスライム。二階層には狼に似た生物が徘徊していた。


 調査は今のところ二階層まで。

 一応三階層への階段は発見済み。

 秘密裏の調査なので大規模に人を送ることはできないため安全重視。


 ダンジョンから魔物が湧き出てくる様子は今のところない。


 停電後に出現したダンジョンと魔石に魔物。

 瑞樹案件である精霊に魔道具を否定できる訳がない。


 とりあえず僕としては、まず政府がここ半年集めて用途がわからない魔石を10個ほど手に入れようと思う。


 もちろん魔道具ガチャを試すためだ。

 面白くなってきた。


 瑞樹にはとりあえず三十万ほどチャージしたカードを渡しておく。


 借金の条件は後で相談することにして、僕は一度出直すことにした。


 マンションから出て待機していた車に乗り込む。


 ドアを開け閉めしてから助手席に乗り込んだ秘書の山内に手早く指示をだす。


 「総理に魔石10個もらって。

あとダンジョン立ち入り許可も必要。


 次に瑞樹の住んでいるマンション買い取って。


 あと立ち退き可能なフロアがあればワンフロア作って。できれば瑞樹の部屋のある階ね。穏便に頼むよ。


 それと『碧空と精霊』作ってるゲーム会社も買収して」

 「かしこまりました」


 そう答えると山内はスマホを操作する。とりあえず総理からかな。

 それほど無茶な話じゃないから問題ないでしょ。


 僕は家に帰った後、祖父の趣味の蔵へと足を運んだ。

 この蔵にはいろいろな武器が収納されている。


 僕は瑞樹に援助をする条件の一つとして、一緒にダンジョンに入るつもりだ。


 実はダンジョンで初めて魔物を倒す(たいがいがスライム)と何処からともなくカードが出現する。


 そのカードは本人の職業、スキル、ステータスなどが書かれている。


 まず職業について。

 職業は学生とかではなくダンジョン内の職業だ。


 今のところ自衛隊で生えたのは剣士、槍士、盾士くらいだけど。

 使った武器によるみたい。


 職業にレベルがあり、スライムを三匹くらい倒すとLv2に上がるそうだ。

 現在一番高い人でLv6。



 次はスキルについて。

 スキルは剣術とか力小アップなど様々。


 聞き取りした感じ、剣術とか武器系のスキルはその人がもともと訓練してたものだった。


 スキルもレベルがあって、剣道で有名な人物でも剣術Lv1だった。



 ダンジョンLv6の人も上がってないし、自衛隊メンバーだけの情報なので、剣術宗家の師範代とかレベルが高そうな人は試せてない。


 スキルのほうがレベルはなかなか上がらないのかも知れない。


 また訓練に関係ないスキル、例えば力小アップとかはどうやら初魔物討伐特典としてたぶんランダムに付与されている。


 そういったスキルはカードに初魔物討伐特典としてスキルが載っているので確かなことだ。


 ランダムなのでは?とは統計をとるには人が少なくてわからないからだ。でも職業とかけはなれたスキルは出ていない感じだ。



 最後にステータス。

 ステータスは数値で記載されており、高ければ高いほどいいのだろうが、自衛隊しかカードを持っていないので大体平均値になっている。


 職業レベルがあがれば少しステータスが伸びていく。


 ダンジョンの外でいろいろな測定をした結果、最高レベルの隊員は国体クラスのアスリート並みの数値を叩き出したそうだ。


 半年毎日こもってLv6。

 なお、最後にレベルがあがったのは1ヶ月程前らしい。

 ゲームとは違って現実は渋いようだ。

 三階層に行けば上がるだろうけど、今二階層で狼の集団にあたると結構手こずるから、もう少し余裕ができてからになるだろう。


 僕はダンジョンに瑞樹と黒羽と三人でもぐるので、その武器探しに蔵にやって来た。


 なぜかって?

 面白そうだからだ。

 黒羽の能力を確認したいし、ガチャ用に魔石集めもしたい。


 瑞樹だけしか魔石ガチャ引けないのかの確認もしたいな。

 僕にロリ魔女精霊くれてもいいんだよ。

 まぁいたら面白いってレベルの話だけど。


 さて、真面目に武器探すか。

 武道はおさめてないので、スライムが倒せればいい。


 一階層でダンジョンカードと初討伐特典のスキル狙いだ。


 非力だから打撃系は無理だな。

刀にするか。


 刀が納められているエリアに向かおうとしたとき、閉めていた蔵戸が勢いよく開けられた。


 「お兄様、私を誘うのを忘れてますわよっ!」


 えー。もうばれたのか。

 めんどくさいな。


 「暗く淀んだ穴蔵から光を解き放つことが我が宿命。聞こえますか?私を呼ぶ魂の言霊を」


 かっと目を見開いて斜めに立ち、大きく十字を切る妹。


 うち仏教だよね。

 うちの妹はまさに中二(せいしゅん)真っ最中。

 暗黒とか大好きで黒羽に会ったら、騒ぎまくるだろうなぁ。


 「三花(みか)はまだ中学生だからなぁ。まだ早いんじゃないかな?」


 「お兄様も成人前ではないですか。

私は武術を嗜んでおりますが、お兄様は?

 お兄様が行ける所ならば私が早すぎることなどないのでは?」


 「……まぁいいだろう。

 だけど、二つ守って欲しいことがある。


 僕の友人及び関連事項について全て秘密。

 ダンジョン内行動は僕の言うこと聞くこと」


 「わかりました。

 この封印されし漆黒の左に誓って」


 左腕をギュッと握りしめる妹。

 会話が少しアレだけど、確かに妹の剣術はそれなりに鍛えられているからね。

僕ほど足手まといにはならないだろう。


 その後妹に適度な刀を選んでもらう。

 結局、一週間後にダンジョンに入れることになった。





 一週間後、僕らはダンジョンに入ダンした。


 ダンジョンには一回に五人までしか入れない。

 その後3分ほど経ってから次の人たちが入場できる。

 入場後の出現地は一層のどこかで、同時入場した人はまとまって同じ場所になる。


 どうやら同時入場はパーティー扱いらしく、一パーティーは五人まで。

パーティーでの戦闘は経験値が均等割りされるらしい。


 「まじダンジョンかよ」

 「まじのまじ」


 一層に入った辺りで瑞樹にダンジョンについて説明する。


 黒羽は話を聞いていないのか、どちらかというと索敵に集中しているようだ。


 「ご主人、二十メートル前方に魔物が二匹。殲滅?」

 「素晴らしい索敵範囲ですわ、お姉様。

さすが漆黒の暗殺者(アサシン)


 妹はやっぱり黒羽に思い切り食いついたようで、目を輝かせている。


 黒羽関連はすでに妹には説明済みだ。

 中二(せいしゅん)な妹は僕よりも簡単に信じたもよう。


 とりあえずさくっとスライム倒すか。

 そう決めたら黒羽がブンって残像残して消えたと思ったら、結構先に現れた。


 黒羽のところまで追いつくとスライムとおぼしきものが二体転がっていた。

 子猫ほどの大きさのゼリー状の青白い物体がピクピクとかすかに動いている。


 「これがスライムか。核なのか?この黒いのは」

 「確か核を潰せばいいはずだよ。核は結構ぐるぐる動いていると聞いてたけどな」


 瑞樹と僕がスライムを観察していると、黒羽が疑問に答える。

 「それなりに動いてた。でも今は弱めたので瀕死。さ、ご主人」

 さっと瑞樹に小太刀を黒羽が差し出す。


 「んじゃまぁ」

 ほぼ動かない核にむかって瑞樹は小太刀をぶっさした。

 するとスライムが溶けるように消えて、その後に銀色の小さなカードが現れた。


 瑞樹が拾い上げたカードを僕は横に並んで覗き込む。

――――――――――――――――――

 高原瑞樹


 職業    召喚師 Lv1(召喚数1)

 スキル   精霊召喚 Lv1 ※幸運Lv1

       ※は初討伐報酬ステータス

 ステータス

  STR 6

  VIT  5

  AGI 6

  DEX 5

  INT  7

  LUK 21(幸運Lv1《10》含む) 

 

 召喚精霊

  黒羽 星五

    属性 闇

    職業 暗殺者Lv38


――――――――――――――――――

 職業は僕の想像通りだったが、黒羽のレベルが高すぎる。


 レベル38ってどんだけだよ?!

 レベル6で国体レベルなんたから、人間の枠におさまらない。


まぁ精霊だけども。


 後気になるのが職業召喚師の召喚数。これレベル低いから新しく召喚出来ないのでは?


 召喚に魔石必要かの確認は早めにしておきたい。だってガチャだから。


 一回で精霊(当たり)を引けない可能のほうが高い。

 当たるまで必要魔石の確保が必須。


 とりあえずレベルが低いなら上げればいい。黒羽がいるから三層階でも余裕でしょう。


 「幸運??どの辺が?俺ガチャ運悪いんだけど!!」

 僕と違うところでひっかかった瑞樹が唸り声をあげる。


 「なに言ってんの?黒羽引いて召喚師なら運がいいんじゃん」 

 「そうか?でもなぁ……」


 「そうですよ!それにお姉様に不服が?私が欲しいくらいですわ!

 薄情な主人なぞ不要ですわ!お姉様、ぜひ私のところへいらしてくださいまし!」

 

 嬉々として黒羽に向かって両腕を広げる妹に、黒羽はしょんぼりした顔を向ける。


 あー。あの捨てられた子犬系の仕草は瑞樹に効く。


 「別に誰もいらないなんて言ってないだろ?!」

 「ご主人!!」

 慌ててフォローする瑞樹に嬉しげにすり寄る黒羽。


 「あとこれドロップしてた」

 「なにこのガラス瓶」

 「これヒールポーション」


 黒羽に渡されたものをかざす瑞樹。

 ガラス瓶のなかに蛍光黄緑の液体が入っている。


 「……はぁ?なにそれ?

 魔石以外ドロップすんの?この半年出てないから、そんなもの!」

 呆気にとられた僕に黒羽が当たり前だろとばかりに頷く。


 僕は呆けた顔をくしゃりとつぶして思わず笑っちゃった。

 あぁ、やっぱり面白くなった。


 「やはり幸運(LUK)値が高いからでしょうか?」


 「僕もそう思うね。確か幸運値は職業レベルが上がっても上がらないって言ってた気がする。


 ところでそのヒールポーション、僕に1個売ってくれる?今日これからどれだけ出るかによって値段は相談だけど。効能もわからないしね」


 「いいぞ。高く買ってくれればなおいい。とりあえず、お前らも初討伐してカード取得しようぜ」


 「そうだね。頻繁に来れるところじゃないからサクサク行こうか。それでは三花お先に」


 僕は瀕死のもう一匹の核に蔵から持ってきた刀をぷすりと刺した。


 ジュウッと刀の先から白い煙が立つ。スライムの酸で溶けているのだ。


 瑞樹が使った小太刀はなんともなかったのに。黒羽の装備品はきっと特殊なんだろう。


 しばらく待ってスライムが消えた後にカードが。もうしばらく待っても魔石やヒールポーションは出なかった。


 「うーん。僕のステータスも平均5で幸運も7。普通だね」

 「職業とスキルが事前に伺ったのと違いますわよ。なんですの、職業か商人って!」


 「そうだぞ、スキルなんて異世界行ったら必須の鑑定じゃねーかよ!」

 「まぁ僕は生まれながらの勝ち組だからね。ぶぃ」


 僕は武術なんて習ってないからね。普段家の仕事関連から商人になったのかな?

 スキルは初討伐報酬の鑑定のみ。

 

 それではさっと蛍光黄緑の液体を鑑定してみるか。


 じっとそれを見つめたらヒョンと吹き出しウィンドウが虚空に出現した。


 そのウィンドウは吹き出しの×ボタン押したら消える。鑑定したいと思わなきゃ出でこない。


―――――――――――――――――

初級ヒールポーション


傷に効く。傷痕も消える。

欠損は補えない。

―――――――――――――――――

 「確かにヒールポーションだね。病気には効かないみたいだね」

 「病気はキュアポーションか治療魔法が常識」

 キリッと精霊界隈の常識を披露する黒羽。


 「そうなんだ。なんかダンジョン常識は詳しいな。出来ない子かと思ってたけど、わりとできる子だったのか」


 「ご主人ひどい!黒羽はもとからできる子」

 「それは頼もしいね。初級ポーションでどの程度の傷が治せるのかな?」


 そう尋ねると、黒羽はストンと無表情になり「私はケガしたことない」と答えが返ってきた。


 はいはい。わからないのね。

 あまり期待しないでおこう。


 妹が私もカードが欲しいと騒ぎだしたので、黒羽がさくっと索敵して次のスライムがいる場所へ。


 妹は職業は剣士、スキルは剣術、敏捷小アップ(初討伐報酬)というよくあるパターンだったので、だいぶ落ち込んでいた。


 「全員カード出たね。次の段階へ進もう」

 「お兄様、さくっとスルーしないで下さい。妹に慰めの一言もないんですの?」


 「はっはは。時は金なりだよ、三花」

 「妹ちゃん、がんば」

 「棒読みでなくもう少し感情入れてもらえません?高原様」


 「妹、レベル上がれば転職可能」

 「本当にですの?お姉様!」


 「ということで、レベルちょっと上げよう。寄生パワーレベリングが可能なんだよね」


 「……寄生。やはりお兄様は悪。悪徳商人の闇は私が切り裂く!」


 「では瑞樹。黒羽にこのフロアのスライム殲滅頼んでくれるかな?」

 「普通に皆で倒すんじゃ駄目なのか?」


 瑞樹は黒羽ひとりに押しつけることに抵抗があるようだ。


 「それだとかなり時間かかるんだよね。魔石ガチャも試したいし。

 黒羽、君ひとりならどれくらいでできる?」


 「このフロアを全て索敵できていない。広さによる」

 「4キロ四方のサイズらしいよ」

 「ならば10分ほどだな」


 主人の瑞樹ではない僕からの質問なのでなんとなく嫌そうに黒羽は答えた。僕の指示で使われるのが嫌なのだろう。


 「僕らが歩いて倒すのに四、五時間以上かかるよ。それだと二階層まで今日はいけない。


 ガチャの当たりだすのに二階層の魔石も集めておいたほうがいいんじゃない?」


 「……ガチャ検証は大切だよな。黒羽、大変じゃないなら頼む」

 「承知」

 すちゃっと黒羽が消えた。

 

 「あぁお姉様、私もご一緒したかったのに」

 妹の愚痴を聞いている間にピロリンと脳内にメロディがなった。


 カードを確認するとレベルがひとつ上がっていた。


 「瑞樹、カード見せて」

 瑞樹の職業レベルもレベルニになっていたが、召喚数はまだ一のままだ。


 「アイテムボックスのスキルがあれば、椅子やテーブルをもちこめましたのに」


 休憩とばかりに地べたに座って黒羽の帰りを待つ僕ら。

 スライムが酸で溶かすから休憩用になにか設置できないんだよね。


 そして五分後。

 ピロリンとお知らせが鳴る。さすがに早い。

 もう一度確認したら、レベル三で瑞樹の召喚数が無事にニになっていた。



 「今さら気がついたんだけど、またうまく召喚できたとして、それも俺が面倒みないといけないの……か?」


 orzと瑞樹が固まる。

 「気づいちゃったか。お金の面は僕がサポートするから安心していいよ」


 無事に瑞樹の住んでいるマンションは購入できたし、ここ一週間で同じフロアだけでなく高原一家以外の人たちはこころよく新築分譲マンションに移ってもらってる。


 賃貸から分譲にアップグレードしたので穏便にすんでよかったよ。


 「信じてるぞ、親友!」

 「人の派遣も考えてるから。

 秘密が守れるメイドとかね。家事とかしてくれるから楽になるはずだよ。

 今日帰ったら紹介するね」

 

 「まじか!メイドなんて秋葉ですら会ったことないぞ。

 どうしよう。お土産いる?

 帰りにイオソよる?」


 瑞樹はメイドで気分が浮上できたようで、今度はソワソワと落ち着きがない。


 「不要ですわ。お土産ってなんですの?」

 「土産?土産はこれで足りるか?」


 影から突如現れた黒羽が、両腕にかかえた魔石をじゃらじゃらと地面にばらまく。


 「任務完了。こちらはヒールポーション」

 黒羽は懐から十本程のガラスビンを取り出して、瑞樹に向かって掲げた。


 「えっと、ありがとう。お疲れ様」

 「これしきのこと、まったく問題ありませぬ」


 「とりあえず先に召喚試そうよ」

 散らばった魔石を拾いながら提案すると、瑞樹もそうだなと言って魔石を拾う。


 「そんでは……試しにひとつ。おー、スマホに魔石が吸い込まれていく。そして消えた。

 よし『ガチャ可能数一』って表示された」


 「レア10連ガチャのがランク高くなるはずだからとりあえず魔石十個いれてみて」

 「わかった。おー、スマホ地面に向けただけで拾ってないのに勝手にチャージされた。便利だな。

 レア10連ガチャできそう。引いていいかな?引くぞ?」


 瑞樹がスマホを一回タップすると、スマホを中心に球状に青く輝く。


 ニ、三秒だろうか。光が収まり「うがぁぁぁぁぁぁ」と瑞樹の呻き声が。


 いつもの外れの効果音(呻き声)だね。

 瑞樹のスマホを覗き込むと一番よくて星三の操り人形師。それ以外は星一とニ。操り人形師はレア10連ガチャをひくと必ず入る特典の星三にあたる。


 星三までの精霊は実体化しないのか。星五だけが召喚対象なら最悪黒羽が最後になりかねない。


 なにせ魔道具のほうのガチャは星五が当たりやすくなるキャンペーンなどないので常に1%。


 『碧空の精霊』の精霊数は三千を余裕で超えるのだから。どれだけ魔石が必要になるか……。


 「お兄様。ガチャがほかの人に引けるかの検証忘れてましてよ」

 ガチャをまた引こうとしている瑞樹を眺め妹が教えてくれた。

 黒羽がもってきた魔石は五十はないからね。連打されれば検証できない。


 瑞樹を慌てて止めて、全員で一回ずつ引けるか試すことにした。


 やってみた結果。

 うん。だめだね。やっぱり召喚師じゃないと扱えないみたいだ。


 「ということで、続きどうぞ」

 「おっしゃぁぁ!」

 ここから瑞樹の気合いの挑戦四回。


 「うがぁぁぁぁぁぁ(一回目)」

 「うがぁぁぁぁぁぁ(二回目)」

 「うがぁぁぁぁぁぁ(三回目)」

 「うがぁぁぁぁぁぁ?」


 四回目にスマホから金色の光が。星四が出たね。星四は確率十%。僕らコレクターからみると外れだけど。


 金色の光がなかなかおさまらないので召喚としては当たりなのかな?


  たっぷり三十秒くらい光っていたスマホから光が消える。

 じっと瑞樹を中心に異変を確認するけど、特になにもない。


 「やはり召喚は星五だけかな」

 「いや、なんかいる気がする」

 キョロキョロと瑞樹が何かを探す。


 何もない……いや、瑞樹の影からニョキっと頭だけ黒羽が顔を出している。


 「ご主人、お探しはコレですか?」

 黒羽はがさごそと影の中からなにかを摘まんだ左腕をすっと掲げた。


 大きさは猫くらいだろうか。色は黒。姿形はモモンガそのもの。小さなつぶらな瞳が、くりくりと忙しなく辺りをうかがっている。


 「黒饅頭?」

 瑞樹の呟きで思い出す。

 時空王の使い魔。通称黒饅頭。二年くらい前に追加された時空王シリーズの星四精霊だ。


 その精霊は時空王の膝上に丸まって寝こけてる姿から黒饅頭とユーザーから呼ばれていた。


 カード属性は時空。

 戦闘スタイルは獣特有の引っ掻きや噛みつき等であまり強くない。


 ただこいつの特殊能力がなかなか良い。魔力五百を代償に時空王の気まぐれを発動する。


 時空王の気まぐれとは時空王の魔法を一度使えるのだ。といっても劣化版だが。


 「というか代償の魔力ってどうなん?」

 「獣、さっさと答えないか!」

 黒饅頭はプランプランと首根っこを黒羽に捕まれ揺らされる。


 「……魔力は魔力なの」

 「喋りましたわ!」


 「精霊だから喋るんじゃない?魔力がよくわからないだよね。カードにも書かれていないし」


 「ダンジョンカード持ってるなら魔力は持っているの!うちも魔力で召喚されたの!

 あとうちは黒饅頭違うの!テティなの!」


 黒饅頭……いやテティは尻尾を逆立ててちょっと怒っているようだ。


 「魔石の魔力で?」

 「魔石の魔力は魔道具を起動するだけなの。召喚は召喚師の魔力が必要なの!」


 「ほーん。俺魔力あるんか」

 「みんなあると言われたわ。やはりこの私も漆黒の魔道師なのね」


 「はいはい、ちょっと黙ってて。魔力の数値的な情報はないの?

 例えばテティは時空王の気まぐれに対価として五百捧げられるんなら、そのくらいは持ってるんだよね?」


 「ウキュ。テティは魔力ないのよ。魔力対価は召喚師が払うの。

 魔力は(INT x 10) + DEXなのよ。

 ご主人レベル上げないと気まぐれ使えないの」


 レベル三の瑞樹の魔力は100にすら届かない。テティの特殊能力のハードル高過ぎ!


 「いい加減放してなの!」

 ウキャーとテティが黒羽を威嚇する。


 「なんかちょっといろいろありすぎて疲れたかも。召喚検証もできたし、とりあえず今日は一回帰ろうか」


 「構わないけど、お土産ってヒールポーションでも平気か?やっぱりイオソよる?」


 寄らないよ。はいはい、撤収!

 ちなみメイドは五十代のおば様だから。会わせるのが楽しみだね。





 なんて呑気に考えてたら、僕らの乗った車が襲撃されているんだけど。


 自衛隊の皆さんから見送られて五分ほど。倉庫街の人通り少ない道で、後ろから装甲バンが突っ込んできた。


 「きゃ――っ!!」

 「うわぁっ!!」


 見通しが悪いコンテナ間に隠れてたようで、こちらのワゴン車の死角をついた。


 後部にバンが突っ込んですぐに前方もトラックで道を塞がれた。


僕は衝突による激しい揺れに翻弄されながら、ひじ掛けの下部につけられている非常連絡ボタンを押下する。


 「大丈夫か?」

 「あぁ、シートベルトしててよかったよ」


 車内を見回し皆の無事を確認。瑞樹と三花はケガしてないようだ。運転手と秘書もエアバッグが作動し問題なし。

 ただ黒羽とテティの姿はない。


 「すぐに警察に連絡を!」

そう言って秘書がスマホを操作していると、トラックから降りてきた柄が悪そう男たちが銃を構えて怒鳴った。


 「動くな。スマホを下ろせ。動くと撃つぞ」

 といいつつ動いていないのに威嚇として一発撃ってきた。


 「なんか久しぶりな展開だね」

 「ですわ。まだ鬼龍院を襲う馬鹿がおりますのね」


 「緊張感なさすぎ兄妹」

 「瑞樹もね。おおかた政府の秘密を聞き付けたお呼びでない連中なんだろうね」


 僕らが呑気に会話している間に、外にいる男たちがボコボコと倒されていく。


 やば。倒す手際見とれちゃって、エマージェンシーコール解除してない。


 僕は慌てて電話をかけてうちの特殊部隊を止めた。秘書も警察へかけなおししているようだ。


 「あー、ヒールポーション試しに使ってみる?」

 瑞樹が死なない程度に流血して倒れた男をみてそう聞いてくる。


 「もったいないから、いやかな。あ、僕リアルで初めてムササビの滑空みたかも」


 「あれはムササビではありませんわ。ムササビは人にあんな攻撃しませんわ。

 ところで全員倒す前に私が交じって剣士の動きを確認しても問題ないのでは?今日は真剣持ってますし」

 「妹ちゃん、問題しかないから。それからあれはムササビじゃなくて、黒饅頭だぞ」


 「いや、テティでしょ。飼い主なんだから名前覚えてあげなよ。可哀想に」


 「……頑張るわ」


 しばらくして外で動くとやつがいなくなり、健気な精霊(げぼく)が車に戻ってきた。


 「ご主人、終わりました。テティが倒したやつがちょっと流血しましたが、死なない程度なので大丈夫です」


 「お疲れ様。ありがとう」

 「ご主人を守るのは我の務め。礼は不要」

 「なのよー」

 テティはすかさず瑞樹の膝に飛び込みくるりとまあるくなる。


 「僕からもお礼を。ありがとう。

 替えの車がきたらどこか美味しいものでもごちそうするよ」

 「私からもお礼させてくださいませ。ありがとうございます」


 僕らからの礼はさっと精霊から流されるが、お礼したいのは僕らなので構わない。

 替えの車がついてから僕らは貸し切りにしたお店で満腹になるまで美味しいご飯をいただいた。


 今日は疲れたので解散してダンジョンの続きは来週に。僕らはみんな学生だからね。


 ともかくダンジョンについては謎が多すぎる。今日の襲撃犯の黒幕や一般に解放できる状態じゃない。


 精霊プラス召喚師様には頑張って手伝ってもらわないとね。

 僕ももちろん手伝うよ。面白いからね。



ほぼ説明で終わってしまいました。

続きかけたらいいなぁ。




だらだらのほうもいまだに読んでくださっている方がいることに驚いています。

ありがとうございます。

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