5:初めての活動
ゲーム対決の回です。
皆さんはルールを守ってバトルしましょうね。
・・・
「はーい、では皆さん集まりましたね。」
アドベンチャー部部室にて、
顧問の細川先生が場を取り仕切っていた。
「今日はですね。新しい部員の人は
初めての活動という事でですね、
簡単なTVゲームをやってみたいと思いまーす。」
手が上がる。
くせ毛のヤンキー系ギャル・・・泉山京香である。
不満そうに質問を投げかける。
「えーっと、この部活って結構自由に活動するんじゃあ
なかったんすか?何で今更ゲームなんかやるんすか?」
それに対して細川真美江が答える。
「えっとね、今日は特別な日でね、
新入部員の初めての活動ということでね、
簡単なデモンストレーションって事でゲームやる事になったの。
今回やるゲームはみなさんご存じアミュステの
『超喧嘩・クラッシュシスターズ』でーっす。」
「あぁ、そうっすか。」
彼女は嫌々、しかしすぐに納得した。
何故なら、京香はあまりコンピューターゲームが得意ではないからだ。
早速バトルの準備が始まった。
使用するゲーム機は「アミューズメントステーション(※通称アミュステ)Ⅲ」、
少し古い機種だが、今でも多くのゲーマーに遊ばれている人気ゲーム機である。
遊ぶソフトは「超喧嘩・クラッシュシスターズΔ(※通称クラシス)」、
格闘ゲームの「超喧嘩」シリーズ第四作目で、
様々なゲームや漫画、アニメ、ライトノベル等から
作品の枠を超えて人気の女性キャラクター達が登場し、
バトルフィールドで戦う人気の萌え萌え格闘ゲームなのだ。
「タイマンモード」、「アーケードモード」、「ストーリーモード」等、
主に3つのモードから選ぶ。
ちなみに超喧嘩シリーズの続編は、まだ発表されていない。
ジャンルは「直感バトル対戦アクションアドベンチャー格闘ゲーム」である。
2チームに分けて2つのテレビで通信対戦する
「アーケードモード」のチーム戦をやる事になった。
丁度10人分のコントローラーが支給されるが、
プレイヤーは1チーム最大で5人なので、
対戦する為の2人組を作る事になった。
阿戸は亜香子と組まされた。
「阿戸たん、よろちくでちゅ。」
「うん!亜香子ちゃん、よろしくね!
私だってゲームには自信があるから、負けないよ!」
互いに握手する二人。
ライバル同士、敬意は欠かせないのだ。
ちなみに京香はかなたと、
アドレーヌは桐子と、幸は水香と、楓は羽矢と
AチームとBチームに分かれてそれぞれ対戦する事になった。
「では、今からルールを説明しますね。」
細川先生がルール説明を開始した。
「まず、大前提としてリアルファイトは禁止ね。
狼藉を働いた者は即失格となりまーす。
次に、公式ゲームで指定されてる禁止キャラは使わない事ね。
でもどうしても使いたいって人は相談して。
そして三つ目。これが一番大事なルールだからよく聞いてね。
『相手を尊重する事』!リアルでも大事だから守ってね!
まあ、そんくらいかな?後は自由にやってね~。」
ルール説明が終わった為、かなたがアミュステⅢの電源を入れ、
中にクラシスΔのディスクを差し込む。
モーター音が静かに鳴り始め、テレビの入力切替を行い、
両チームの画面にアミュステのロゴが映し出される。
ホーム画面にクラシスのアイコンが表示されたのを確認した後、
細川先生がメモリーカードを差し込み、セーブデータを読み込む。
メモリーカードを使わない状態でプレイできない訳ではないのだが、
ゲーム中のミッションをクリアしたり条件を達成したり、
ストーリーモードを攻略しないと解放されないキャラもいる。
『Playername:Kaede Moemoe Data:100%complete』
今回は部員の楓があらかじめ全クリしたデータを使う事にした。
全てのプレイアブルキャラクターを開放する為には
コンプリート率100%達成が必要不可欠だからだ。
オープニングムービーが流れ始める。
数々の女性キャラがいやらしいアクションでド派手な必殺技を使っている。
全キャラのシルエットが崖の上に映り、フラッシュした。
「「「「「超喧嘩!クラッシュシスターズ!!」」」」」
豪華女性声優陣による萌えボイスによるタイトルコールと共に、
タイトルロゴが表示される。
各チームがスタートボタンを押し、モード選択画面に移る。
アーケードモードの「チーム戦」を選択し、
各々の部員がコントローラーを接続する。
するとキャラ選択画面が表示された。
一応クロスオーバー作品なので、
様々な女子キャラの顔アイコンで画面が埋め尽くされる。
最初に戦う事になったのは、山岡幸と山崎水香であった。
「さっちんは~可愛いキャラがいいなぁ~。
うーんと、皆可愛くて萌え萌えでさっちん迷っちゃ~う。」
幸はアイコンを適当に動かし、キャラを選択しようとする。
水香はそれが気に食わないのか嫌味を言う。
「ふん、随分とろくさい方ね。
ゲームのプレイヤーキャラなんて適当に選べばいいでしょう?
貴重なプレイ時間を無駄にするとは、無能ね。」
しかし幸はあまり気にしていないようだ。
「じゃあ~、この『シフォン・ソリディア』って子にしよ~っと。
まん丸で超キュート。」
あざとい彼女の事である。
幸はボーイッシュなロリキャラである「シフォン」を選択した。
彼女は「ファインド・シーカーズ」シリーズから参戦したキャラで、
漫画版のみならず、小説版やゲーム版にも登場する。
シフォンは近距離だけでなく、中距離の攻撃技も持っており、
防御性能が高いので使いやすい初心者向けキャラである。
その為、最初から解放されているキャラの一人であり、
多くのプレイヤーが彼女を使用している。
「ふん、初心者キャラしか使えないとは、雑魚ね。
こうなったら私はより上級者向けで高レベルな、
そして今の多様性の時代に合わせてブサイクなキャラを選ぶわ。
楓さん、貴女こういうの詳しいでしょう?
上級者向けのブスキャラ誰かご存じなくて?」
突然楓におすすめキャラを聞く水香。
「あっ・・・えっと・・・じゃあ・・・
下から3番目の・・・右から5つ目・・・・
『鉄槌鎖のマガリア』とか・・・どうですか・・・?」
「あら、ちょうどいい感じのおブスね。
コイツにするわ。なんか強そうだし。」
水香は「マガリア」というキャラを選択した。
彼女は格闘ゲーム「ストレェトブレェカー」シリーズからの出身で、
メインのパワーと鎖ハンマーによるリーチ、スタミナが特徴なのだが、
当たり判定が無駄に大きく、攻撃されやすい糞キャラとして有名である。
・・・後、ガチムチで太っていておっさんみたいな容姿なので、
メインのプレイヤー層からの評判は良くない。
それでも上級者向けキャラなので、使う奴は使うのだ。
両プレイヤーがキャラを選択し、
ステージセレクト画面が表示される。
「じゃあ、今回は全員『最終地点』っていうステージ選ぼうね。」
細川先生がステージを選択し、ロード画面に入った。
いよいよバトル開始である。
「three・・・two・・・one・・・GO!!!!!」
カウントダウンが終わると同時に画面にシフォンとマガリアが登場。
バトルフィールドでの取っ組み合いがスタートした!
最新の3Dグラフィックで構成されたステージに、
2大戦士が激闘を繰り広げる・・・
「ふっ・・・なかなかやりますわね。幸さん?
でも、この程度のザコキャラ選ぶようじゃあ、私には勝てませんわ~♡」
序盤は水香が優勢だった。
普段全くサブカルチャーに触れぬゲーム初心者の水香だが、
ゲーム下手糞な幸に対していい感じにイキる。
マガリアの怪力パワーとハンマー攻撃により、シフォンの・・・
幸側の体力ゲージがゴリゴリ削れていく・・・
それに幸はシフォンの基本技しか使っておらず、
そのせいで余計に体力を消費してしまっている。
「剣に変身して突進する技」しか使っていない・・・
コマンドの出し方が分からないのだ。
「あ~ん、シフォンちゃんボコボコだよぉ~
さっちん負けちゃいそ~大ピンチなんだけどぉ~」
緊張感が無いあざとい声色で焦る幸。
さっちんチームに緊張が走る・・・
そしてついに3つしかないシフォンの残機を一つ消してしまった。
「かえでちゃ~ん・・・助けて~。」
なんと、幸は楓に助けを求め始めた。
「あっ・・・えっと・・・シフォンはですね・・・
『メタモルスフィア』って技があるんですけど・・・
あの・・・丸まって攻撃する攻防一体の技で・・・
出し方は・・・→B↓Aです・・・」
コマンドを教える楓。
キレる京香。
「おい、横槍入れてんじゃねェよ。
二人同士のタイマンじゃねェかよ?」
「あっ・・・すみません・・・」
しかし、形成を覆すには十分なサポートであった。
幸は先ほど教えられたコマンドをおぼつかない指で入力する。
しかし入力が間に合わずに、再び残機を消費してしまった。
もう一つしか残機が残っていない・・・
「はっ!猪口才な手を!!
そんな事しても無駄ですわよー!!!」
しかし、水香はマガリアの必殺技
「アースブレイカー」でシフォンにとどめを刺そうとする。
巨大化したハンマーがシフォンに振り下ろされようとしたその時!
コマンド入力が成功し、シフォンは球体になって
ハンマーを弾き返し、そのままマガリアのどてっ腹に命中!!
「「ごふうううううううううううう!?!?!?」」
マガリアとプレイヤーである水香の断末魔が同時にこだまする!
結果、マガリアは連続ダメージを食らう異空間に放り込まれ・・・
残機を一気に3つ消費。
幸の大逆転勝利となった。
部室内に歓声が響き渡る。
「やったぁ♡さっちんの大勝利ぃ♡」
ウインクとピースサインを決める幸。
しかし水香は
「あああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああ
てめえええええええええええええええ!!!!!!!
こんな!!!!こんなああああああ!!!!!!!!!!
私に勝ちやがってええええええええええええええええええええええええ
ああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああ
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞
糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞
糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞」
顔を真っ赤にし、汗と涙と唾液をスプリンクラーの様に撒き散らし、
信じられない表情で見苦しく騒ぎ立てていた。
そんな彼女に京香は
「ガタガタ抜かしてんじゃねえ。
敗北は敗北だろうが。潔く敗北を認めやがれ。」
しかし水香は
「うっせえええええええええええええええ!!!!!!!!!!
元はと言えばてめえのチームの楓とかいうクズが
私の勝利を台無しにしやがったんだろうがああああああ!!!!!
責めるんなら私じゃなくて楓の方だろうがあああああああ!!!!!!!」
そして攻撃対象を楓に変更する水香!
楓の顔は恐怖に歪み、涙を浮かべていた。
「しねえええええええええええええええ!!!!!
このチートやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
クソガキャああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
物凄い表情で楓に飛び掛かる水香!!!
すると
バキィッ!!!!!!!!!!!!!!!
物凄い打撃音が部室に鳴り響く・・・
かなたが水香の首に手刀を食らわせたのだ。
「・・・」
白目を剥きながら地面に倒れ込む水香。
「・・・わりぃ。暴力行為やった奴はペナルティだろ?
それでも、あたしは我慢できなかった。
コイツがあまりにも見苦しかったからだ。」
細川先生がフォローを入れる。
「え・・・えっと・・・
今のは流石に先に暴力振ろうとした水香ちゃんが悪いから大丈夫だよ・・・
それにほら・・・同じチームだし。」
京香は水香を抱え、首を観察する。
そして驚愕する。
(なんという手刀だ・・・
一撃であの水香を気絶させやがった。
それに、水香へのダメージを最小限に・・・限りなくゼロに抑えてやがる。
この技は、実戦の戦闘と限りなく過酷な鍛錬と経験を重ねた者・・・
そして数々の死線をくぐり抜けてきた奴にしか出来ねェ芸当だ。)
京香はかなたを見つめる。
「かなた。この勝負は後でゲームでつけよう。」
「良いよ。望むところだよ。」
・・・その後、水香はチームから追放された。
・・・・・・・
・・・・
・・・
騒動の後、すぐに第二ラウンドが開始された。
次はアドレーヌと桐子のバトルである。
アドレーヌは良く分からない魔法少女のキャラを適当に選び、
桐子はなんか良く分からない女騎士のキャラを選んだ。
女騎士のキャラに関しては桐子が好きなキャラとのこと。
「よ、よろしくお願いいたします・・・!」
「ふっ。片目に宿した魔神に代わって、
この私が、一撃で冥界に送って差し上げよう・・・」
両者は互いに攻撃の機会を狙う・・・
一触即発の状態。
先に動いたのはアドレーヌだった。
「はは!愚か者め・・・
勝負はッ!!生存競争というものは
先に牙を見せた者が敗北するサダメなのだ・・・!!!
能ある鷹の技をとくと味わうがいい!!!!!」
しかし、アドレーヌには作戦があった。
桐子の死角・・・眼帯をしている方の目の方に回り込み、
一撃で異空間に放り込んだ!!
先程の水香と同様に、桐子のライフが3つ一気に消滅した。
再びAチームの勝利である。
「えっと、か、勝ちました・・・!」
「何!?!?!?遊戯の巫女とも呼ばれたこの私がッ・・・!?!?
この私があああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああ
あああああああああ・・・・・・」
ぐにゃあ・・・
・・・・・・・・
次に戦う事になったのは、
阿戸と亜香子である。
「亜香子ちゃん、改めてよろしく!
お互い全力で頑張ろうね!!」
「よろちくでちゅ。
コンピューター研究部の底力、見せてやりまちゅよ。」
第三ラウンド開始!!後半へ続く。
To be continued・・・