1:「どんな人たちなのかな」
こんにちは。夢島勇喜です。
シナリオを描く練習の為に学園の日常ストーリーを描いてみることにしました。
不定期更新ですが、なるべく早めに執筆していきたいです。
よろしくお願いします。
・・・
薄くオレンジ色を帯びた光が
カーテンの隙間を通して部屋に注ぎ込まれる。
目覚ましのアラームがけたたましく鳴り響く。
夢うつつな状態で普段のルーティン通り、
目覚まし時計を止める。
おぼつかない足取りで部屋の電気を点け、
廊下に赴き、洗面所で冷たい水を顔に浴びる。
服をジャージに着替え、見たしなみを整え、
髪をまとめる。
朝の支度を整えるうちに、
ぼやけた意識が鮮明になっていく。
ドアを開けて、外へと飛び出す私。
普段から習慣にしているランニングの開始だ。
今朝の目標は120キロカロリーの消費。
体に流れ込む、冷たい空気と風が
モチベーションと意識をより確かなものにしていく。
・・・
尻甕市の河川敷。
そこの周囲にはランニングコースが存在する。
早朝なので、ここで散歩している者は老人か、
犬を連れた主婦くらいのものだ。
程よい寒さと穏やかな陽気、
ランニングには絶好の環境だ。
気がついたら1キロ以上の距離を走っていた。
セットしていた腕時計のメーターが
残りの距離と消費カロリーを伝える。
早朝に運動をする事で、
自身の肉体に活力を呼び戻していることが分かる。
そして何より、今日はよりその効果が明確にみられた。
・・・だって、今日は始業式なのだから!
新しいクラスで新しい関係を築き、
そこでは新しい冒険が待っている。
自分にとってこれほど素晴らしい出来事が
他にあるのだろうか。
自分は何て幸せなのだろう!
大空に向かって叫びたくなった。
・・・
数キロの距離を走り終え、心地よい気持ちで
ベンチに座りながらほっとため息をつく。
水筒の中のスポーツ飲料を飲んでいると、
大きな影が目の前に現れた。
上を向くと、そこには大柄な女子が一人。
身長は180を軽く超えるだろう。
「・・・座っていいかな?
・・・拒否しても座らせてもらうけど。」
大きな女子は静かに、しかし威圧的にそう呟くと、
私の隣に腰を下ろした。
「どうぞ。」
すこし遅れた同意の言葉を彼女に伝える。
私の目線はその女子の肉体に
いつの間にか吸い込まれていた。
・・・その女子の体は、引き締まった筋肉と、
独自の圧迫感を放っていた。
もしも集団の中に彼女がいるとなると、
皆、彼女のオーラに釘付けになってしまうだろう。
気が弱い者で足がすくんでしまう者もいるはずだ。
「・・・なんか用?」
その女子が横目で私を見下ろす。
何か睨まれた様な気がした。
「ご、ごめんなさい。つい、気になってしまって。」
そっと謝罪する。
私は誰とでもなるべく友好な関係を築いていきたいと
思っているが、彼女はどうなんだろう。
「ま、いいや。あんた何年だ?」
大柄な女子から学年を聞かれた。
・・・もしかして同じ学校の子なのかな?
「はい、今日から2年になる、早乙女阿戸です。
よろしくお願いします!」
「名前まで聞いてなかったけど、ま、いっか。
あたしはかなた。戸谷かなただ。
今後会う事は少ないかもしんねえけど、
よろしくね。」
かなた・・・さん。
なんて魅力的な人なんだろう。
静かで寡黙な雰囲気だが、
しっかりしたところがあり、誇りの高さは隠せない。
まるで、昔ヒーロー映画で見た
主人公の様な逞しさが彼女にはあった。
私は彼女の謎の魅力に釘付けになっていた。
しばらくして、彼女がそっと立ち上がる。
「おっと、もう時間だ。
そろそろ戻んねえと。じゃあな。」
彼女はそのまま、朝陽の中へと消えていった。
遠のく彼女は光に飲まれていく。
「さて、新しい仲間はどんな人達なんだろう?」
私も期待を胸に、彼女と反対の道にある
帰路を急いだ。
ジャージから制服に着替えて、
2年生としての準備を整えなければ・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
暗く青い闇が、
カーテンの隙間を通して部屋に注ぎ込まれる。
闇の中に閉ざされた小さな部屋の中で、
唯一の光源ともいえるであろう
パソコンのディスプレイから発せられる
おぼろげな光が、私の顔を照らしている。
漏れた光が、部屋に置かれた美少女フィギュアと
アニメのポスターも照らしていた。
憂鬱な状態で、普段のルーティン通り、
適当にあてもなくゲーム攻略サイトや
インターネット掲示板、アニメのwikiを巡る私。
ただ、ひたすらにキーボードで文字の羅列を打ち込み、
少しも笑えないレスを交わす。
何もかもが空しく、憂鬱に感じる。
私っていったい何なんだろう・・・
「・・・喉、渇いたな・・・」
服をジャージに着替え、
ボサボサの長い黒髪と汚れた眼鏡という
乱れた見たしなみのまま外に出ようとする。
夜の支度を整えるうちに、
ぼやけた意識がより陰鬱になっていく。
ドアを開けて、外へと出る私。
自動販売機で水でも買おうかな・・・
ただ、流されるまま、従わされるまま生きる私。
体に流れ込む、冷たい空気と風が
モチベーションと意識を
より冷たいものにしていく。
「今月のお小遣い・・・少ないんだっけ・・・
アニメの円盤買えるかな・・・」
・・・
尻甕市の河川敷。
そこの周囲にはランニングコースが存在する。
丑三つ時なので、ここで散歩している者はカラスか、
そいつらの餌食になるウジ虫くらいのものだ。
・・・まるで私みたいだ。
手足がかじかむ寒さと陰気な闇、
目立たず買い物に行くには絶好の環境だ。
気がついたら自販機の前に立っていた。
自販機の中に110円を入れると、
ガタンとペットボトルの水が落ちてくる。
深夜に外出をする事で、
また母親からなじられるかもしれない。
でも何より、今日はもうそんな事どうでもいい。
・・・だって、明日は始業式なのだから・・・
新しいクラスで新しい関係を築けず、
そこでは新しい地獄と孤独が待っている。
自分にとってこれほど憂鬱な出来事が
他にあるのだろうか。
自分は何て不幸なのだろう・・・
地面に向かって呪詛を吐き散らした。
「・・・せめて、私より不幸な人が・・・
目の前にいればいいのに・・・」
・・・
特に何もせず、空っぽな気持ちで
ベンチに座りながらため息をつく。
ペットボトルの中の水を飲んでいると、
街灯に照らされた影が目の前に現れた。
上を向くと、そこには女子が一人。
身長は私よりかは大きいだろう。
「・・・座ってもよろしくて?
・・・拒否しても座らせてもらうけど。」
女子は威圧的にそう呟くと、
私の隣に腰を下ろした。
「あっ・・・あの・・・」
拒否するまでもなく、私の隣にドカッと座る女子。
その女子は、金髪のショートヘアで、鋭い顔つき。
まつげが長く、私と同じように眼鏡をかけている。
眼鏡から放たれる威圧的で鋭い眼光が私に突き刺さる。
まるでラブコメ漫画から出て来た様な
典型的なクイーンビーだ。
・・・私の一番嫌いなタイプの人間だ・・・
・・・早くどっか行ってよ・・・
「・・・なんか用?」
その女子が横目で私を見下ろす。
何か睨まれた様な気がした。
いや、睨まれた。確実に私に対し敵意を持っている。
「あっ・・・あ、すみません・・・」
振るえた声で謝罪する。
私は誰ともろくな関係を築けないまま、
人生を終えるのだろう。
「ふん、随分暗い方ね。貴女は何年なの?」
威圧的な女子から学年を聞かれた。
・・・もしかして同じ学校の人なのだろうか?
・・・だとしたらまずい・・・
「え、えっと・・・
秋葉楓・・・です・・・
今年から・・・3年・・・なのですけど・・・」
「名前まで聞いてなかったでしょう?
3年の癖して、みっともない、変な方ね。
私は2年の山崎水香という者よ。
今後会う事は少ないとは思いますけど、
もし学校で遭ったら・・・
貴女、どうなるか分かってますわね?」
彼女の眼鏡の眼光がより鋭いものになった。
・・・最悪だ・・・
よりにもよってこういう系の女子に
ターゲットにされてしまった・・・
残り1年の高校生活・・・耐えられるのだろうか・・・
もうやだ・・・もう辞めたいよ・・・
まるで、昔ヒーロー映画で見た
敵の女王の様なおぞましさが彼女にはあった。
私は彼女の謎の威圧に心がもうボロボロになっていた。
しばらくして、彼女がそっと立ち上がる。
「おっと、もう時間ね。
そろそろ戻らなければ。じゃあね。
ゴミムシ先輩?」
彼女はそのまま、夜の中へと消えていった。
遠のく彼女は闇に飲まれていく。
「うう・・・
新しいクラスの人達や
その他の人達はどんな人達なんだろう・・・?」
私は絶望を胸に、彼女と反対の道にある
帰路を急いだ。
曇った眼鏡の隙間からは、
いつの間にか涙が溢れていた・・・