1人目
人通りのがほとんどない夜の港、そこに男が倒れていた、男の首筋には、刃物で切られた切り跡があり、そこから出た血溜まりが男を囲っていた
◯
イスカイア王国にある冒険者育成学校、そこで生徒達が噂話をしていた
「ねえねえ、港で人が殺されてたらしいよ」
「びっくりだよね確かA2ランクの冒険者らしいよ」
「Aランクを殺すとなるとAかSランクレベルの人が犯人なのかなー」
そんな生徒の話を机に突っ伏しながらアミは聞いていた
「いやー、物騒な話ですな〜」
「本当にね、通り魔の無差別的行動だったら心配だわ」
「心配って言ったら、あーしは今日のテストの方が心配〜」
アミの言葉に友人のエリーとカレンが答える
「な〜にカレンちゃん、テストが心配なの私は問題なしのばっちぐーよ!」
「えっ!?アミっちの癖に自信ありなの!?」
「そんなわけないでしょアミなのよ」
「え〜、2人とも酷いな〜でも本当に問題なしなんだよ、解ける問題がなしだけどね〜」
「それのどこが、ばっちぐーなのよ」
アミの言葉に呆れるエリー
「だって勉強嫌いだしー、覚えたって役に立たないじゃーん」
「さすがアミっち、マイペースだねー」
「でも流石に常識的なことはわかるでしょ、アミこの大陸は東と西2つの国に分かれてるけど西の国の名前は」
「タップリン王国!」
ため息を吐く、エリー
「じゃあ私たちの住むこの国の名前は」
「いいスイカ王国!」
頭に手を置いて呆れるエリー
「この大陸の名前は」
「フラフラ大陸!」
大きなため息を吐くエリー
「ダメだはこれは」
「さすがにあーしでも間違えないよ、アミっち」
「えー、でも全部そんな感じの名前でしょう〜」
「まず西の国がダブリュリン王国、私たちの住む東の国がイスカイア王国、そして大陸の名前がフラフリシア大陸、少しはかすってるんだからあとはちゃんと覚えるだけでしょ」
エリーが呆れながらアミに答えを教える
「いーじゃん別に、分からなくても困ることないしー」
「これで366位中350位なのもびっくりよ後ろの16人は一体どれだけ酷いのやら」
「本気を出したらもうちょっと上なんだけどね」
「当然でしょ、アンタ身体能力は結構高いんだから」
「言えてる、あーしも身体能力には自信がある方だけど本気のアミっちには敵わないからな〜」
アミ達の通う冒険者育成学校では、実技、筆記のテストがあり、二つの総合結果で順位が決まる
そしてこの学校には学年が存在せずその順位がそのまま学校全体の順位になる
総合順位以外にも部門ごとの順位も存在する、例えば狙撃ランキング、魔術ランキングなど選択科目でのランキングなどだ
また学年が存在しないことにより一つのクラスに様々な年齢の人が在籍している、最小年齢は入学条件が15歳以上であることから15歳、最高年齢は55歳になる
15歳を超えていれば何歳からでも入れるので理論上100歳の人も入ることができる
「でも、そんなに手を抜いてたらいいギルド入れないわよ」
「別にいいよー、なんとな〜くで入れてくれるギルドがあればそれで〜」
「そんなギルドがあればいいけどね」
「もしなかったら、エリーちゃんかカレンちゃんがつくってよー」
「無理に決まってるでしょ、私たちがSランクになれるわけないでしょ」
学年が存在しない、この学校卒業条件は1つギルドに加入すること、そのためにテストによる順位がギルドへの宣伝となるのだ
ギルドとはフラフリシア大陸の中央、2つの大国をまたがるように聳え立つ頂上の見えない塔、『無限の塔』に挑む冒険者が集う組織である
ギルドの種類は様々、塔の頂上をただ目指すクライムギルド、塔の中に出現するモンスターを倒すハンティングギルド、塔の財宝を求めるトレジャーギルドなどだ
クライムギルドやハンティングギルドはモンスターの知識やそれを倒す戦闘能力が必要なので特に学校の順位が大事になってくる
またギルドの設立条件は代表者がSランク以上であることで、Sランクになる条件は無限の塔の100層を踏破すること、その際の人数がランクの横につき4人ならS4、3人ならS3となる、ただし1人で踏破した際は、S+と言われる
「私のために頑張ってS+になってよ〜」
「バカなこと言わないで自分で頑張りなさい」
そんな会話を続けていると突然後ろから声がかかる
「やあ!レディ達ご機嫌よ今日も麗しいね!」
声をかけてきた男はキザなセリフを吐くと、その男と一緒にいた女性が男の耳を引っ張る
「普通に挨拶しなさい普通に、おはようアミちゃん、エリーちゃん、カレンちゃん」
「おはよう〜シズク、ハルト〜」
「おはようございますお二人とも」
「オハオハ〜今日も仲良いねお二人とも〜」
「いやいや、このバカを放っておくと見境なしに女子生徒に喋りかけに行くから私が監視してるだけだから」
そう言ってシズクはハルトの耳を引っ張りながら開いてる席に着いた
それから少し経つと講師がやってきて、テスト用紙を配り始めた、テストの時間は90分間、主な内容は、フラフリシア大陸の歴史、塔における知識、戦闘技術における基礎の問題だ
教室内の生徒全員がテストを受け取ったのを確認すると講師が始めの合図をする
周りの生徒がテストの問題に向き合う中、アミは名前だけ書いて眠り始め
それを横目で見ているエリーは溜息を吐き、カレンはくすくすと笑っている
講師がテストの終わりを告げるとアミは起きて伸びをした
「あ〜、よく寝たなー」
「よく寝過ぎよ名前しか書いてないでしょ」
「清々しいほどだったね〜アミっち」
テストの時間中アミは口から涎を出すほどぐっすりと眠っていたのだ
「さーて、これからどうする〜無事にテストも終わったしカフェでも行きます〜?」
「賛成〜確か港町の近くのカフェのベルベットで新作のパフェが出たっぽいから、あーし行きたかったんだよね、エリっちは」
「ええ、それでいいわ、じゃあベルベットに行きましょうか」
そうして、テストを終えた3人は港町のカフェベルベットへと向かった
ベルベットに着くと早速新作のパフェを注文する3人、パフェが届くまで、話題は朝に聞いた殺された冒険者の話になった
「にしても怖いよねこれじゃあ、あーし夜に迂闊に出歩けないじゃん」
「でも、噂だとその殺された男は相当粗暴な悪い人だったって聞くは、方々から恨みを買うような悪さをしていたとも言われてるそうよ」
「エリーちゃん詳しいね〜もしかして情報通〜」
「ただ小耳に聞いただけの話よ所詮は噂よ噂、無差別の通り魔の犯行だったら私たちも気をつけないといけないんだから」
そうこう話していると、パフェが届いた、届いたパフェを食べ始めるとカレンが知り合いを発見する
「あれ?王子っちとクズハっちじゃん!おーい!」
カレンが見つけたのはイスカイア王国の王子名前をランディと言う、彼は知識や経験を深めるためにと冒険者学校に入学したらしい
そして、一緒にいるのは彼の護衛者であるクズハ、彼は護衛にしてはまだ若いがどうせ学校に通うなら歳の近いものがいいとランディが、指名したようだ
「やあカレン、アミ、エリーそれがここの新作パフェとやらか、俺も気になってなー、ここのスイーツは俺も贔屓にしてるんだ」
「じゃあせっかくだし、一緒に食べようよあーしたちもまだ食べ始めたばかりだし」
「よいな、ぜひ俺たちも参加させてもらうとしよう」
「しかし王子がこんな無防備なところで食事など」
「なーに、硬いこといってんのさ、クズハっち、大丈夫だよこんな開けたところで堂々と狙ってくる人なんていなっしょ、いたとしてもクズハっちが守ってくれるでしょあーし達ごと」
カレンにそう言われて少し戸惑るクズハ、それを見てアミがからかう
「クズハってカレンちゃんに弱いよね〜、なーにもしかしてクズハ、カレンちゃんのこと好きなの〜」
「え〜まじ、あーし大歓迎なんですけど〜」
「な、何を言うんですかアミ殿、そ、そんなことがあるわけがないですよ」
クズハは、焦りながらそれを否定する
「否定されるとなんか、ショック〜」
そんなやりとりをしながら、クズハを説得して、ランディとクズハも一緒にパフェを食べることにした
すると、少し離れたところに人だかりができているのに気づくアミ
「なんだろ〜、なんか人だかりができてるよ」
「人を囲ってる見たいね、誰か有名人かしら」
するとその人だかりはこちらの方に近づいてくる、人だかりの中心には整った顔のイケメンがおり、その周りは女性で囲まれていた
「あの方はS4の冒険者ミュラー氏ですね、Sランクの実力勝ることながらそのルックスも相まって女性人気がとても高い方のようです」
そのミュラーという男がベルベットの方へ近づいてくると、王子の存在に気づき、彼らの方に寄ってくる
「あなた様は、ランディ王子ではありませんか?僕はクライムギルド花月のミュラーと申します」
「存じてるぞ、Sランクの実力者だそうだな隣国のダブリュリンに負けなよう励んでくれよ」
ランディはクズハから聞いた情報を言い、まるで最初から知っていたかのように振る舞う
「ご存知でしたとは、嬉しい限りです、よろしければこれから僕の家でパーティがあるのですが王子もどうでしょう」
「ハッハ、流石に今会ったばかりの者の家に行くほど軽い身分の者ではないので、遠慮しておくぞ」
「そうですか、それではそちらの女性陣はどうですか?」
ミュラーはランディに断られるのは分かっていて本命はアミ達女性陣だったかのように彼女達を誘う
「私は、パーティとか興味ないからいいやー」
「同じく、遠慮させてもらいます」
「あーしは別にいいんだけど2人が行かないなら遠慮しようかな」
「そうかい、ではまたの機会があったらぜひ参加してくれ、王子もよろしければ」
そう言ってミュラーとそれを囲む女性たちは遠ざかっていく、その際にミュラーを囲む女性達は「ミュラー様の誘いを断るとか何様なの?」「こんなチャンス二度とないのに偉そうに」などとアミ達女性陣に聞こえるように言い去っていった
そんなことがあった後話はランディのテストの出来はどうだったのかなどの話をしてパフェを食べ終えると、その日はそのまま解散となった
そして、日は落ち夜になった、そこは人通りの少ない港町の路地裏、そこに1人の男がいた
男の名はガロンド、昨夜殺された男ユルゲンスの相方のA2ランクの冒険者である
ガロンドは怯えていた次は自分なのではないかと、ではなぜそんな彼が人通りの少ない路地裏にいるかというと、彼らのボスである男から商品の受け渡しを待っているからである、彼にとってボスに逆らうのも死を受け入れるのと同じであるので、恐怖に怯えながら路地裏で待っているのだ
すると奥の道からコツコツと足音がする、ガロンドは焦り振り向くとそこには何もいなかった、なんだ気のせいかと前を向いた瞬間ガロンドは首筋を切られ、大量の血を流し絶命した、闇の中の影で起こった一瞬の出来事だった
◯
翌日の朝学校での話題は、昨夜起こったガロンドの殺人による話でもちきりだった
「ねぇねぇエリっちまたA2ランクの冒険者が殺されたんだって〜」
「それも一昨日の男の相方らしいわね」
「本当に物騒な世の中ですな〜」
「でもでも、殺された2人はコンビだったんでしょう、やっぱり2人を恨んでた人に殺されたって噂でしょ、なら通り魔の線は無くなったってことっしょ」
「そうだといいわね、その方が私たちも安心だわ」
この日の学校での授業は明日の実技のテストに向けた各々の自習の時間になっていた
テスト内容は単純で100層までの通常モンスターの強さを模倣したゴーレム時間内に何台倒せるかという者だ
階層のレベルは各々が自分で決め、制限時間30分の間にレベルを変えることも可能、階層のレベルがそのままポイントとなり10層の敵なら1体につき10点、100層なら100点と低階層で大量に倒してポイントを狙うか、高階層で一発に大量得点を狙うかは各々の判断だ
このテストに関してはアミだけでなく、エリーも憂鬱そうだった、アミは単にやる気がないだけだが、エリーは戦闘が苦手であり、前衛で戦うものを支援する役割のタイプであるからだ
逆にカレンは意気揚々としている、頭で考えるより体を動かすのが好きそうなカレンは筆記テストより実技テストの方が得意と言える、実際に身体能力も高いので、実技のみの結果なら50位程度となかなかに上の順位である
本来ならそのカレンよりも身体能力が高いアミだが、やる気がないので、やったとしても10層レベルのゴーレムを1体で終わってしまう、が一度だけ遊びで挑戦した100層のレベルのゴーレムを倒しているので本気を出したら30位以内は狙えるとカレンとエリーは見ているようだが、アミはその気がゼロである
そしてその日の自習を終えた3人は学生食堂でご飯を食べていた
「今日はどこか行く〜エリー、カレンちゃん〜?」
「ごめんアミっち今日はあーし用事があるんだよね」
そう言ってアミの前に手を合わせて謝るカレン
「ありゃりゃ、それじゃあ今日はお開きにしますかー」
「そうね特にやりたいところがあるわけでもないからそうしましょうか」
「それじゃあ、今日は解散なのだ〜」
ご飯を食べ終えた3人は、別れ家に帰るのであった
◯
夜、一昨日殺された男がいた現場に別の男がいた、ミュラーだ
「出てきなよ!僕を狙ってるだろ!僕は逃げも隠れもしないぞ!」
ミュラーは誰もいない闇に叫ぶ、するとコツコツと足音が聞こえるミュラーは振り向くが誰もいない、そして前を見た瞬間、キーン!と金属と金属がぶつかり合う音がする
「あまいよ!2人が首筋を切られてるのを知ってるんだ、そう簡単にやられてたまるかよ!」
ミュラーは、暗殺者からの攻撃を防ぐとすぐさ暗殺者めがけて剣を振りかざすが容易にそれを避けられる
暗殺者は黒装束で身を纏い黒の布で顔を隠す黒子の見た目をしている
「どこで知ったか僕が女達を拉致して密売しってその協力者である、ガロンドとユルゲンスを殺した、そして今度は僕が狙いなんだろ、2人を殺せるほどのレベルってことは君もSランク程度の実力者なんだろ、だけど甘いね、僕は公にはしてないがソロでも100層を超えることのできるS+の実力者なんだよ!!」
そう言うと同時にミュラーは風の刃を放つ、音よりも速い高速の刃は、暗殺者めがけて突き進むがそれを紙一重で避ける暗殺者、しかし風の刃は暗殺者が頭に身につけている黒布をかすめ、暗殺者から外れ落ちる
「お前は!昨日の!」
「あっちゃ〜外れちゃった〜、おじさんに顔を見られるなって言われてるのになー、流石に今のはしょうがないかな、まぁ、仕留めたら見られてないのと同じだから、問題ナッシング」
黒布がはがれそこに出てきたのは冒険者育成学校の生徒アミであった
2件の冒険者殺人の犯人はアミだったのだ
「今までに密売した女の誰かの妹かなんか、で復讐のために殺してるってところか、黙ってれば見逃してやるから、ささっと僕の前から消えな」
「違うよ、私はただ依頼されただけだよ、だから私ターゲットのあなたを倒すんだよ、それが人の役に立つことになるからね〜」
「調子に乗るな!ガキが!!」
ミュラーは無数の風の刃をアミに放つ、しかしそれはどれも当たらずアミは全てを紙一重で避ける余裕を見せる
「S+って言ってたけどこれくらいなんだね、じゃあ私はそれ以上ってことだ」
そう言うと唐突にミュラーの前から消えるアミ
「どこだ!どこに消えやがった!!」
いきなり目の前から消えた、アミを必死で探すミュラー、しかしミュラーは闇の中から彼女を見つけることができない
「ほら、私を見つけることのできないあなたは所詮はその程度ってことだよね」
「っな!?」
そしてミュラーの背後に現れた次の瞬間にはミュラーは首から血を大量に流し倒れ込んだ
ミュラーは薄れゆく意識の中で彼女を見た、その彼女の顔はやっと宿題が終わった少女のようににこやかに笑っていた
彼女は影に隠れターゲットを狙う、普段はテストを嫌うめんどくさがりやな少女の姿だがそれに裏表はない彼女自身の素の姿、ただ本気を出すことのないだけの、ただの怠慢、彼女が本気を出すのは仕事の時、ターゲットを狙うその時だけ
彼女は暗殺者である




