神刀と幼女と初野宿
前回投稿時間ミスってたので、今日も投稿しておきます。すみませんでした。
神刀視点
「今日はここで寝る。ほら、お前の分の毛布だ」
道の途中でジンダがそう言い、荷車から毛布を引っ張ってよこした。
確かにもう空は暗くなってきている。休み時かもしれないな。
「うん」
「休憩中は、見張りは交代でやる。疲れてるなら先に休んでいいぞ。途中で起こしてやる」
「うん」
ユエナは元気がない。大分疲れているようだ。
まあ無理もない。ユエナはあれからも現れるいっぱしひよこを倒していた。疲れるのも当然だ。
それに、その時からユエナの表情がすぐれない。きっとモンスターを倒すことが精神的にきているのだろう。
早く乗り越えてほしいが、これは主次第だ。我はただ願うばかりだ。
ダメヤンの時はモンスターを倒して喜んでいたんだが。あれはあれでやっぱりダメか。ダメヤンだし。使われる方としては楽だったのだがなあ。いや、もう絶対あのダメなやつのことなんか認めん。今はユエナ一筋だ。
だから、我が主には強くなってほしい。ゆっくりでもいい。我を使うにふさわしい英雄になってくれ。
「安心しろ、ジンダ。見張りは我が請け負おう。我は睡眠など不要なのでな。一晩中警戒していられる」
「そ、そうか。凄いな」
「神刀故な」
「神刀様、私、寝るね」
「うむ。安心して眠るがいい。ユエナ」
「おやすみなさい」
ユエナはすぐに毛布にくるまって横になった。やはり疲れていたのだろう。
そして少ししてから、ジンダが言った。
「やっぱりガキだな」
「ああ、そうだな。だが、ユエナは我が選んだ主だ。すぐに一流の剣士、いや、侍になる」
「侍か。確か、異国の剣士の呼び名だったな」
「我は刀故な。ジンダよ、今少しの間、ユエナに色々助言してほしい」
「そりゃあ、ガムナさんの頼みだ。ちゃんとやるが、だがガキだぜ。戦う力はまあ、一流だが、本当に大丈夫かよ」
「一流では足りない、超一流だ」
「はいはい」
「ユエナの至らない点は、我も補う。この旅は我の旅でもあるのでな。まあ、危険はないだろう。なにせ、我がついているのだから」
「まあ、そうだろうけどな。だが、なあ、神刀、様」
「なんだ?」
「そんなちびより、俺のものにならないか。俺ならこいつよりずっと上手く使えるぜ」
ジンダがそう言って近づいてくる。
なので我は、氷魔法で少し周囲の地面を凍らせた。
ビキビキビキビキッ。
「げっ!」
「あまり我が主を舐めないでもらおう。そして我もだ」
「ああ、わかったよ」
「ユエナは英雄になれる。偶然にも我と出会い、我を手にして戦えた。ユエナは我を手にするにふさわしい。それに我も、そう簡単に主を変えようとは思わん。主を信頼してこその、刀なのだ」
「くっ」
「お前も、妙なことはこれ以上考えるな。自分の力を磨けない半端者に、我を手にする資格もない。そういう言葉はせめて、我を持つユエナと同等に戦えるくらい強くなってから言うのだな」
「お、俺がこいつに負けるってのか!」
「見ればわかる。お前は我と同調したユエナの足元にも及ばない」
面と向かえ合えば、自然と相手の力量はわかるというものよ。
「くうっ」
「少し頭を冷やせ。我はもうユエナのものだ。盗人の考えをする者を、ユエナのそばにはいさせられぬぞ」
「ちっ。わかったよ」
ジンダはそう言って、少し離れた。
我も、凍りつかせた地面を元通りにする。ユエナが冷えてしまうかもしれないからな。
そして、また少しして、ジンダが言った。
「少し、頭を冷やしたよ」
「そうか」
「ルギラメを倒してくれて、ありがとう。俺じゃ、どうにもならなかった」
「その礼は、ユエナにも言ってやれ」
「わかったよ。言うよ。けどそれは、別れる時にだ。ガキに礼を言うのは癪だからな」
チリンチリーン。
「敵か」
「またもやいっぱしひよこだ。数は一体。任せたぞ。ジンダ」
「わかってるよ。凄いな、本当に。神刀様は」
こうして、夜は更けていった。
幼女視点
「ぴよぴよ」
「ぴー!」
真っ黒な場所で、いっぱしひよこが襲ってくる。
「えい、えい!」
私はそれを、神刀様を頼りに倒す。
「ぴよぴよ!」
「ぴー!」
けど倒せば倒すほど、いっぱしひよこは現れて、増える。
「えい、えい!」
ぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよ!
「えい、えい、えい!」
ずっと戦い続けていると、やがてとてつもなく大きないっぱしひよこが現れた。
「ぴーよー」
「し、神刀様!」
私は、神刀様を握りしめて戦い続ける。
だって私は、英雄になるんだから。
英雄にならないと、いけないんだから!
「えーい!」
そこで私は、目覚めた。
「ユエナ、おはよう」
「はあ、はあ、はあ。え?」
私は神刀様を見て、慌てて握りしめる。
「お、おはよう、神刀様」
「飛び起きてどうした。悪い夢でも見たか?」
「え?」
思い出そうとしたけど、できなかった。
「ううん、思い出せない」
「そうか。まあ、まだ旅も慣れないだろうからな。仕方ないだろう」
「神刀様」
「うん?」
「私、絶対英雄になるから」
「ああ、そうだな。頑張れ」
「うんっ」
「だが、時々は頑張らなくてもいい」
「え?」
「苦しいなら、辛いなら、一旦忘れよう。離れよう。辛いことをする必要もないし、自ら苦しくなる必要もない」
「し、神刀様は、それでいいの?」
「ユエナに無理はさせられないということだ。それに、主はまだ子供だ。子供は寝て食べて遊ぶのが本業だ。修羅になることもない」
それで、いいの?
本当に?
「神刀様」
「少し、ユエナには急がせすぎてしまったかもしれないな」
「え?」
「ユエナ、お前はまだ幼い。英雄になるのもいいが、それ以外の道も探すのは有りだ」
「あり、なんだ」
「無論、我の目標はユエナの英雄だが、別にそれ以外でも構わぬ。主の両親も納得するだろう」
「そう、かな?」
「うむ。とにかく、根を張り詰めすぎるな。せっかくの旅だ。できるだけ楽しもう。戦い以外のことも、たくさん憶えるといい」
「うん。神刀様、ありがとう!」
「うむ!」
「でも、神刀様。私、やっぱり英雄、頑張るから!」
「うむ!」
神刀様は、ちょっとうれしそうだった。
いや、やっぱり結構嬉しそうだった。
神刀様に心配させちゃった。これからは気をつけなきゃ。ううん、しっかりしなきゃ!
だって私、英雄になるんだから!




