神刀と幼女とひよこ 2
神刀視点
「だ、だが、肝心の成果はどうだ!」
ジンダがそう言って走り寄ってきた。
そして2つになったいっぱしひよこを確認する。
「へへん、ジンダさん、倒したよ!」
「ああ、そうだな。だがこれじゃあ冒険者としては不合格だ」
「え、なんで?」
「見ろ、魔石が半分になってる」
ジンダがそう言っていっぱしひよこを指さした。
「うっ」
「ユエナ、大丈夫か?」
「うん、平気」
可愛らしかったひよこがグロくなっているのだ。忌避するのも当然だろう。
「この体の中にある小さいのが魔石だ」
ジンダがそう言って、2つの魔石を取り出す。
「魔石は傷つけない方が価値が高い。特に、こんな雑魚レベルの小さい魔石じゃ、2つになったら金にならん。いっぱしひよこは素材も高く売れないし、これじゃあ倒し損だ」
「あう」
「なに、ユエナはまだ戦い始めたばかり。そんなのはこれから憶えても遅くはない」
「それもそうだが、冒険者の基本だ。モンスターを倒すときは、特に魔石は傷つけない。これからは気をつけるんだ」
「じゃあ、どこなら斬ってもいいの?」
「基本は頭、首だな。上手くすれば心臓を一突きという手もある。だが魔石は大体心臓の近くにあるからな。難しい」
「心臓って?」
「ここだ。ドクドク言ってるだろ。モンスターの心臓も大体この位置にある」
ジンダがそう言って自分の胸を叩く。ユエナも自分の心臓あたりに手を触れる。
「ここ」
「だが心臓を斬ってもモンスターってやつはまだしばらく動くらしいからな。やっぱり狙うのは頭だ」
「頭。わかった」
「よし、もう行くぞ。いっぱしひよこはこのまま放置だ。さっき言ったように素材の値段もたかが知れてるし、今優先すべきは輸送だからな」
「うん!」
「ユエナ」
「なに、神刀様?」
「今の一撃、良かったぞ。その調子だ!」
「うん!」
良い子は褒めれば伸びるのだ。
ジンダはこの調子だが、我は主を褒めて伸ばすぞ。
それが我の方針だ。
それから少しして。
「むっ。どうやらまた敵が近づいてくるようだぞ」
「神刀様、本当?」
「ああ。しかもどうやら、この気配からして」
チリンチリーン。
「あれは、またいっぱしひよこだな」
「私が倒す!」
ユエナは我を握りしめて駆け出した。
「ピー!」
その先にいるいっぱしひよこに躊躇なく向かっていく。
そして。
「狙うは、頭!」
真上から振り抜かれた我は見事にいっぱしひよこの頭を両断した。
うむ。上出来だ。
「よし! うっ」
しかしユエナは、そこからすぐに手を地面につけてしまう。
我、流石に慌てる。
「ユエナ、大丈夫かっ」
「ゲロゲロゲロゲロ」
どうやら吐き気を覚えたようだ。
「ユエナ、落ち着け。まずは深呼吸だ」
「さっきは、大丈夫だったのに」
「おーおー、派手にゲロったな。魔石はすぐに剥ぎ取る。すぐ行くぞ」
「う、うん」
どうやら我が主はまだ、命を奪うことに慣れていないようだ。
だが、そのうち慣れるだろう。慣れさせようというのは、少し心苦しいが。
生きている限り、命をもらうことからは免れない。ただその時期が早すぎる気もする。が、これから英雄になろうというのだ。早く乗り越えてほしい。
早く我を扱うにふさわしい精神に育ってくれ、ユエナよ。




