神刀と幼子、すぐに旅立つ
幼女視点
「なんで?」
「もう昨夜の間に、神刀様を狙う者が現れたんだ」
「この事態を憂いて、村長さんがもう、神刀様は村から離れるべきと決定したのよ」
お父さんとお母さんに、そう言われる。
神刀様を狙う人が現れたのなら、仕方ない。私、その時は寝てて何もできなかったし。
でも。
私はお父さんとお母さんを見つめる。
「お父さんとお母さんは?」
「村のこともある。俺達は一緒にいけない。ユエナ1人で旅立つんだ」
「そんな」
そんなの、すっごく、すっごく心細い。
泣いちゃいそうだ。これからは、1人だなんて。
「ユエナなら大丈夫さ。絶対に立派な英雄になれる」
「そうよ。それに、神刀様も一緒よ」
「そうだ、ユエナ。そなたには我がいる」
「あっ」
そうだ。私にはもう、神刀様がいるんだ。
「神刀様」
思わず神刀様をギュッと握る。
「ユエナ。心細い時、寂しい時は我を頼れ。我はずっとお主とともにいる。お主がくじけそうな時は、我が支えてやろう。お主が下を向きそうになったら、我が上向かせてやろう。我はただの刀ではない。我はそなたの、ユエナの相棒だ」
「相棒」
神刀様は、ずっと私と一緒にいてくれる。
だったらもう、寂しくない!
「うん。私、神刀様がいてくれれば、泣かない!」
「うむ。よし、このついでに、我のことはもうダイセツザンと呼んでもよいぞ」
「ユエナ。俺達との心も、離れてていてもずっと一緒だ」
「あなたのことを、毎日思っているからね」
「うん。お父さん、お母さん、神刀様も!」
「あ。う、うむ」
「私、旅に出る。旅に出て、立派な英雄になる!」
「そうだ。行ってこい、ユエナ!」
「怪我のないようにね。病気にも気をつけてね」
「うん!」
神刀様がいるから、私はお父さんとお母さんと離れ離れになることになった。でも、そのお父さんとお母さんを、神刀様は救ってくださったから。
だから私は、決意する。旅に出て、強くなって、いつかお父さんの言う通り、立派な英雄になる。
その時まで、待っててね、お父さん、お母さん!
神刀視点
やれやれ、まさかこんな幼子がたった1人で旅に出る羽目になるとは。
我が原因ゆえ、多少はいたたまれない気持ちになる。だが、我がついているのだ。これ以上の不幸はないだろう。
ユエナは本当にすぐに旅立つこととなった。少しの荷物を持ち、村の出口まで向かう。
まあ、体力関係は我を持っていれば大丈夫だろう。我との同調は手放さない限り常時発動だからな。故にユエナが力尽きる心配はない。
そして村の境まで来ると、そこには荷物を積んだ荷車と男が待っていた。荷車はリヤカーともいう。
「やっと来たか」
男はユエナを見てそう言った。あまり歓迎されていないようだ。幼子を相手に情けない。何者も多少は寛容な心を持ったほうが良いというのに。まったく、異世界の男は。まさか、ずっとこんなダメヤンばかりではないだろうな?
「ジンダ、待たせたな」
「おはようございます、ガムナさん。いえ、大した程じゃないですよ。この子がユエナで、あれが神刀ですね」
「そうだぞ」
「しゃ、喋った!」
「神刀故にな」
「ジンダ、このまま一緒にトナールの町へ行ってくれ。そしてあるきながら、冒険者の心得を教えてやってほしい」
「わかってますよ。ガムナさん。この俺に任せてください!」
そう言って男、ジンダが胸を叩く。まったく、調子だけは良さそうだな。
「ユエナ、このジンダと一緒に、町まで行くんだ。そして町に着いたら、ジンダからこの荷車の荷物、ルギラメの素材を売って得たお金を、半分もらえ。それがユエナの旅の資金だ」
「うん」
「そこから先は、本当に1人だ。もし、平和に暮らしたいなら、ずっと町の中にいて戦わずにいてもいい。それはお前の自由だ。だが。神刀様はたくさんの人を救うことができる強大な力だ。英雄になるなら、冒険者になることだ」
「うん!」
「それじゃあ、行って来い、ユエナ。幸運を祈る」
「うん、行ってきます!」
ジンダがあるき出し、ユエナがそれについていく。
その時、ユエナが我をギュッと握った。
心細いこともあるだろう。まだ幼子だ。幼子が英雄になるのは早すぎる。
だが、この子は我と出会った。もしかしたら、そういう運命だったのかもしれない。
では、この旅が幸運なものとなるために、我は全力で力になろう。
我は今、そのために生きている。




