幼女vs地竜、決着
モールト視点
急いで目的地に駆けつけると、そこでは神刀使いと大型モンスターが戦っていた。
その戦闘スピードは、目で追うのがやっと、いや、追い切れるものですらない。
とてもではないが、戦いの次元が違った。一目でわかる。これは俺達が手を出せる強さではない。
「団長。あれは、なんでしょうか」
「おそらく、地竜だろう」
配下の言葉に推測を述べる。
ドラゴン種。強力な強さを持つ災害級モンスター。地竜は飛べないドラゴンだが、それでも強い。
少なくとも、俺達の手に負えるような相手ではない。
「地竜!」
「団長、どうしましょう?」
「俺はこのまま戦況を伺う。お前たちは他の部隊との合流、救助者の発見をおこなえ。最低でも信号弾を撃った者の生死は確認するんだ」
「はっ!」
「団長、しかし団長一人では危険では?」
「くどい。俺は一人でも大丈夫だ。いや正確には、あれに目をつけられれば何人いても同じことだ」
「くっ。団長、ご武運を!」
配下達が散っていく。
俺は冷静に、地竜と神刀使いの戦闘を目で追い続ける。
幸い両者とも俺など意に介さない。俺が狙われることもないようだ。これならチャンスをうかがえる。
地竜はその巨大な体で、木の間をスルスルと通っていく。時折木の一本や二本が簡単にへし折れるが、その程度だ。
それに、悔しいが神刀使いもかなりのものだ。地竜と互角に戦っているだけでも凄まじいというのに、手傷を負っている気配もない。
彼女がいなければ、おそらく俺達は全滅していただろう。
それがわかるからこそ、悔しいし腹立たしいし、妬ましい。が、それでも俺達は騎士団だ。
俺だけの問題じゃない。俺達の存在意義がかかっているからこそ、ここで何もしない、できないは許されない。
幸い、俺には力がある。そしておそらく神刀使いにも奥の手がある。俺が少しでも力になれれば、この戦いに終止符を打てるだろう。
そしてその瞬間が、やっと訪れた。
丁度俺の眼の前で地竜が止まる。その衝撃と風圧で体が吹き飛びそうになる。だが準備だけはしていた。
ここで、決める!
「クラッシュサンダー!」
強力な雷魔法だ。俺の得意魔法。これがあるから俺は騎士になることができた。
そして右手から放たれた雷が地竜に直撃し、一瞬動きを止める。
これで決めきれるとは思っていない。だから。
やれ、神刀使い!
「パワーブレード!」
俺の期待通り、神刀使いが地竜の首を斬り飛ばした。
「倒せたようだな、神刀使い」
「おじさん」
俺は神刀使いに話しかける。
「こいつはおそらく地竜だろう。名まではわからぬが、5ランク、いや6ランク以上の強敵であったことは間違いない」
「これが、地竜」
ホーオオオオ!
その時、はるか上空からモンスターの鳴き声が聞こえた。
咄嗟に見上げると、空には白と黄色の翼を持った巨大なモンスターの姿があった。
あれはもしや、飛竜か?
まさかこの森に地竜だけではなく、飛竜までもいるとは。
「神刀使い。今からお前に依頼を頼みたい」
「?」
「これを持って、急ぎ町の騎士団の元へ行け」
俺は騎士団長の証、バッジを渡す。
「地竜、そして飛竜が出たことを報告してほしい。依頼の報酬は、この地竜でいいな。俺達がかわりに全て運ぼう。森での行動は、その後だ」
「それは、うーん。いいよ!」
「そうか。では、頼む。それと、助けてくれて、ありがとう」
「! うん!」
こうして、森での調査は飛竜討伐作戦へと移行する。
だがあの飛竜は、我ら騎士団のみで相手をする。
それでこそ、騎士団の価値を示せるだろう。
たとえ、我ら一人一人の力は足りずとも、騎士団全員でかかれば、もしかしたら討伐しきれるかもしれん。何より、冒険者達の出番はその後だ。
もう今は恥だの誇りだの考えている場合ではなくなった。だが、それでも騎士団の肩書は伊達ではない。故に、今回は冒険者には手を出させない。
だがもしもの時は、またこの小さき英雄を頼ることになるだろう。
今までは目の上のたんこぶだったが、控えていると思うと頼もしい。おかげでこちらも死力を尽くせる。




