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騎士団長、焦る

 モールト視点


 少々面倒なことになった。

 ツーギ町にモンスターの大群が押し寄せていると聞いた時は、内心歓喜した。

 やっと俺の功績が立てられると。

 騎士団は見栄えが華々しいが、いざという時の戦いがなければなんの意味もない。

 年に数回、町内や各地での騎士の集まりがあって、それで刃を交じわせる程度。

 脅威となるモンスターの討伐なんかは滅多に無く、またいても冒険者達が先んじるため、平時では刃の振るいようが無いのだ。

 そして俺は騎士団長に選ばれたばかりの若手。要するに早く手柄が欲しかったのだ。

 そんな今になって、念願のチャンスがやってきた。このスタンピードは、俺にとって大きなチャンスというわけだ。

 ここで大活躍して、ツーギ騎士団にモールトありと言われたい。

 だが、スタンピードを迎え撃つのは俺達騎士団だけではない。

 足踏みが揃わぬ冒険者達。そして、町長、もとい子爵家の長男として戦いに出向くズラズルーリ。

 こいつらのお守りをしなければならない。

 まあ冒険者達はまだいい。一応は戦えるやつらだ。適当に壁にでもなってくれればいい。数も100人程度と聞いたから、俺達騎士団100人と同数だが、まあきちんと戦場での立ち位置を指示しておけば邪魔にはならないだろう。おそらく。

 それに、ゼンダーという冒険者ギルドからの使い走りはそれなりに強いと聞く。つい朝耳にした神刀の使い手とやらも強いらしいが、まあゼンダーさえいればもしもの時は使えるだろう。

 だがズラズルーリ。こいつだけはいただけない。

 まずこいつは、やたらプライドが高い。そして常に自分の思い通りになると思い込んでいる。戦場に素人がしゃしゃり出て、しかも指示までとばしてくるんだから、邪魔なことこの上ない。だがこれでも子爵家の跡取りだから、丁重に扱わなくてはならない。それがひどく疲れる。

 とりあえずやつとの接触は最低限に。身の回りの世話は部下に任せる。それでいこうと思った。

 その判断が甘かった。

 騒ぎが起こって駆けつけた時には、すでに部下の騎士達がやられていた。人が多いせいで現場はあまりわからないが、モンスターと戦う前にこれだ。団長としては頭が痛くて仕方がない。

「おい、一体何があった」

「はっ。どうやら冒険者の少女、いえ、幼女と我らが交戦中のようです」

「その幼女が何をした」

「それが、ズラズルーリ様がその子の神刀を奪おうとしたのですが、それを言う前にズラズルーリ様が氷漬けにされてしまって」

 思わず気が遠くなった。

 冒険者共だけでもこうなる程手が付けられないというのに、よりによってあいつが騒ぎを起こすとは。

 こうなることなら最初から自分が監視しておけばよかった。

「火魔法を使える者を集めておけ。ズラズルーリ様が助かれば、暖を取らせる」

「はっ」

「お前ら、一度引け、ここは俺に任せろ!」

 騎士達を下がらせて、まずは俺一人で騒ぎの収拾にあたる。

 見れば神刀の使い手は本当に子どもで、これでも精鋭である騎士たちを傷一つ負わせずに倒していた。

 正直、俺では真似できないだろう。騎士団長とはいってもそれなりに優秀な男でしかない俺が、ほぼ100人もの騎士を相手にどれだけもちこたえられるか。10秒生きていれば良い方ではないか?

 不幸中の幸い、子どもは話がわかるやつだった。おそらくチッサーナ族だろうが、これだけ強ければ頼もしいことには違いない。噂の神刀が喋ったのには驚いたが、まさか意思ある武器とは。これでは奪えたとしてもその後も大変だろう。俺はすぐに神刀への興味を失くす。ズラズルーリが既にやられているのだ。あれには近づかない方が良い。

 ズラズルーリも生きていて、今は震えながら魔法の火で暖を取っていた。滑稽だが、これでも要人。生きていてもらわなければ困る。でないと俺の失態となるからな。

 ズラズルーリが回復したら、早速出発だ。最初から上手くいかないが、このいらだちはモンスターを倒して慰めるとしよう。


 そして移動中、俺の横にいたズラズルーリが悪党の笑みを浮かべて言った。

「そうだ。モンスターの群れにまず、冒険者共を突っ込ませよう。そしてあのガキもろとも死んだ後、俺達が倒して残った神刀もいただくのだ!」

 そう上手くいくとは思えないが。どのみち、俺はこいつの命令を通すしかない。

 くそっ。折角の手柄のチャンスだというのに、なんともどかしいことか!



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