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幼女、冒険者ギルドで寝る

 神刀視点


「ここがギルドの寝床か」

「冒険者、いっぱいいるねー」

 ラルテアにつれられて(宿泊料も払った)来た冒険者ギルドの宿泊施設は、広い部屋に冒険者たちを押し込んだだけというひどいものだった。

 明かりも遠くにあるのでここは薄暗い。まあ眠るだけならちょうどいいかもしれんが、パーソナルスペースが狭すぎる。

 我が主がちょっと歩くだけで他の者とぶつかるのだ。これでは気が抜けないな。

「ユエナちゃん、こういうのは慣れよ!」

「うん、わかった!」

「いや、わかってはいかんぞ、ユエナ」

「んえ?」

「ここはユエナが寝るにふさわしくない。我を扱う者として、もっと贅沢な空間を好むべきなのだ」

「贅沢は敵よ!」

「ううーん」

 ユエナが我とラルテアを交互に見て悩んだ。

 ラルテアはアイフをカンテラにしまいながら喋る。

「確かに冒険者たるもの、金と贅沢は夢だけど、今は非常時。ギルドがいつ緊急依頼を出すかもわからない。ここは我慢してでもギルド内にとどまって、緊急依頼を最速で受けられる状態をキープするのが先決なの。ユエナちゃんも、そう思うでしょ?」

「うーん」

 ユエナは悩んだ。そして。

「神刀様。私、きんきゅういらいの時に、贅沢におねむなんてできない!」

「むう」

 ユエナがそう言うなら、仕方あるまい。

「わかった。ユエナ。だが、このようなことはもうこれっきりだぞ。どこの馬の骨だかわからん輩共とひとつ屋根の下で寝るなど、我慢ならん」

「うん!」

「どこの馬の骨だかわからなくて悪かったな!」

 やはりここは良くない場所だ。悪そうな男が一人近づいてきた。

「俺達はモンスターの群れが来るっていうから、詳しい話を待つのにわざわざこんなところにいるんだ。ここはガキの遊び場じゃねえんだぞ!」

「遊びじゃないもん!」

 ふっ。そうだ。ユエナ、もっと言ってやれ。

「私も、戦う。私は英雄になるんだもん!」

「はっ。どうせ金持ちのあまちゃんだろ。装備のおかげで戦えるだけのもやしが偉そうにしてんじゃねえ!」

「うっ」

 ゆ、ユエナ、がんばれ!

「たしかに、そうだけど。神刀様のおかげで私は戦えるけど、でも、だからこそ、私が戦う!」

「そうだ。その意気だユエナ!」

「はっ。じゃあ代わりに、俺がその刀を使ってやるよ!」

 男がそう言って近づいてきた。

「ふん」

 我は当然、その男の足を凍らせた。

「あん?」

 男が自分の足を見る。そして、すぐにうずくまった。

「お、俺の足がああああ!」

「ユエナに近寄る不埒者は、この我、ダイセツザンが許さん。無論、我をユエナから取り上げようとする者もな」

 今この場にいる全員が、ざわざわとざわめきだす。

「神刀様、ありがとう」

「うむ。これしき、なんともない」

「やっぱり強いわね、神刀様。グッジョブよ!」

「(グッジョブ!)」

 ラルテアとアイフからも称賛される。

 ふ、当たり前だ。

 我はユエナの刀である。故に、ユエナの前に立ちはだかる者は許さぬ。

「ほら、あんた達も見たわね。この子を邪に見る者は、誰であろうと神刀様が成敗するわ。ユエナちゃんがまだ小さいからって、甘く見ないでよね!」

「わ、わかったから、わかったから足を元に戻せー!」

「ふん、刀に頼む態度がなっていないようだな」

「冷たい、足がちぎれそうだー!」

「神刀様、元に戻してあげよう?」

「うむ。ユエナがそう言うなら、やぶさかではない」

「でも、ちゃんと反省してからねっ」

「うむ。そうだな」

「(こういうバカにはどっちが強いかハッキリわからせないとダメだよ)」

 うむ。アイフの言う通りだ。

 これ以降ユエナに絡む者はおらず、ユエナはこの場ですぐに眠りにつく。

 ユエナよ、疲れていたのだな。今はゆっくり安め。

 その間我は、ずっと周囲に気を配っていよう。

 ユエナが我を最大限に使えるように、我もユエナを最大限サポートするのだ。




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