神刀と幼女、緊急依頼に臨む
「冒険者たちにはじきに緊急依頼を募る。有志がいれば外壁付近やギルド内で待機と警戒にあたってくれ!」
お兄さんはそう言うと素材センターのカウンター側に行っちゃった。
回りの冒険者達はざわざわしだす。
「どうやら慌ただしくなりそうね」
「お姉ちゃん、緊急依頼って?」
「私も初めての経験だけど、今さっきの人が、大勢のミノタがこっちに向かってくるって言ってたわよね」
「うん」
「たぶん、そいつらと戦うのよ。ユエナちゃん、戦える?」
「うん!」
よくわからないけど、私はルギラメが村に現れた時のことを思い出す!
モンスター、絶対許さない!
「ラルテアお姉ちゃん。私、神刀様と戦う!」
「ああ、我もだ!」
「ええ。もちろん私達も行くわ。でもその前に、さっき緊急依頼をこれから出すって言ってたわよね。それまで待ちましょう」
「うん!」
ぐううー。
「あうっ」
「ふふ。それに、ご飯も食べましょうね」
「うん!」
ルギーナ視点
ああ忙しい忙しい。
まったく、ただでさえ日常の雑事が片付かないというのに、モンスターのスタンピードだと?
おのれモンスター、私を過労死させる気か。恐ろしいやつらめ。
「いやはや、大変なことになりましたな」
「スタンピードとは、10年ぶりくらいですか」
「最近は平和でしたのに、真に残念です」
「しかしこの事態も、皆で力を合わせれば乗り切れます。まずは状況を整理しましょう」
台詞の順に、この町の領主、ズラカブール子爵。
ツーギ騎士団大団長、スアッソム。
魔法ギルドマスター、バレック。
教会ツーギ支部代表大司祭、ラレーク。
皆、モンスターのスタンピード発生、及び接近との報告を受けて、対策のために集まったわけだ。
そしてそれはもちろん、この私も例外ではない。
「今偵察のメールフクロウをとばしている。正確な数と強さはまだ確定していない」
「ですがわかっている情報もあるでしょう? まずはそれを確認です」
子爵の言う通りだ。
「数はざっと100以上。モンスターはミノタだ。おそらく中には進化先個体のミノタウも紛れている。問題はそのミノタウが何体いるか、そして更に進化先の個体、ミノタウロスがいるかどうかだ」
「ミノタウロスがいるとすれば、我らツーギ騎士団の出番だ。第一騎士団の半数もいれば仕留められるだろうが、露払いともなるとな。最悪3体以上いれば、こちらの手に余るやもしれん」
まあ、騎士団のところの戦力はそれくらいか。この町もまあまあ小さいからな。それでも比較的大きい騎士団ではあるが。
「ミノタウロスが2体くらいならゼンダーがなんとかしてくれる。流石にミノタの群れにミノタウロスが2体以上いることはないと思うが、念の為だ。冒険者ギルドからはあいつを出す」
「町の守りはどうするのですか?」
「私が残る」
「そうですか。それなら安全ですね」
大司祭がうなずく。
「ゼンダー様が行くのならば、私達の方からも支援者を行かせられるでしょう。大勢は流石に無理ですが、希望の人数はありますか?」
「いや、行く気がないやつは行かせても仕方ない。そこは善意の輩だけにしとこうか。こっちも同じだしね」
「なるほど。では、後のものは緊急事態として西の門に集めておきます」
「よろしく頼むよ」
「私の方も似たようなものだ。魔法ギルドといっても冒険者にならない臆病者ばかりだからね。門壁の上からの支援くらいしか期待しないでくれ」
「十分助かるよ。そっちはそれでいい」
まあ、あまりにも数が多くない限りは、先発隊だけで大丈夫だとは思うけどね。
私としてはそう思っているが、しかしあちらは適度に緊張している。久しぶりの緊急事態だから、わからないでもないけどね。
「騎士団からも討伐隊を出そう。第3師団の団長がまだ若く、やる気でいるからな。第1師団と第2師団は門で待機だ」
「おや、そんなに出すのかい。それはこちらとしては助かる」
「冒険者等に期待してはいかんからな。町を守るのはあくまで、我ら騎士団の仕事だ」
「うむ。そのとおりだ」
領主がうなずく。まあ、騎士団は町の税金で運営しているからな。領主だってそっちに信頼を置くだろう。
「すると指揮系統はどうする? 私としてはゼンダーにまかせてもらうのが楽なんだが」
「ふん。元彼の肩を持ちおって」
「元彼じゃない」
もちろん今の彼でもない。
「ルギーナには悪いが、指揮系統は騎士団最優先で通してもらう。役割的にその方が良いだろう」
やっぱりそうなるか。まったく、現場がわかってないやつめ。
「では、ゼンダーにはそのように言っておく」
「冒険者には期待せんが、数はそれなりに確保してもらいたい。少しでも戦いが有利になればいいからな」
どっちだよ。私だって本当なら騎士団総出で出張ってもらいたいものだがね。
だが今回の有事、タイミング的には都合が良いかもしれない。
「数は揃えられないかもしれないが、期待はしておいてほしいもんだね。なにせ今、この町には注目のルーキーがいる」
「ほう」
「まあ」
全員がこちらに注目した。まあ、今言っても悪くないだろう。どうせ有名になるなら早くたって遅くたって変わりはしない。
「ルギーナ様、まさかあなた程の方が目を留める冒険者が現れたのですか?」
「ああ」
私はたっぷりうなずいてから、もったいぶって言う。
「名はユエナ。今日冒険者になったばかりの少女だ。その手には喋る神刀を持ち、その強さはゼンダーをも凌ぐ」
嘘は言ってない。ゼンダーを負かしたのは事実だ。まあフル装備じゃなかったし、私もやられたのは言わないけど。




