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神刀と幼子、父から旅をせよと告げられる

 お父さん視点


 ここはタート村。その中の一番大きい家である、村長宅に、大人皆が集まっている。

 話す内容は決まっている。ユエナが村を襲った強敵モンスター、ルギラメを倒したことだ。正確には、ユエナが手にした神刀様が。と言えるだろうが。

 ルギラメが村に侵入した時は皆散り散りに逃げていったが、時間をおいて戻ってきたようだ。まあ、村を出ればそのうちモンスターと出くわすからな。逃げた先で襲われたくないから、皆俺が倒しておいてくれると信じて様子を見に来たのだろう。

 そんな俺の結果は、なんとも悲惨なものだったが。だがまあ、幸い今はこうして生きている。妻も、娘もだ。

 あの神刀様には、感謝してもしきれないな。

「つまり、本当にユエナが倒したんだな?」

「はい。村長。突然天より現れた神刀様を手にした瞬間、娘は戦神の如き強さを発揮しました」

 実際には俺はその瞬間を見ていなかったが、再び立ち上がれるようになった時にはルギラメが倒されていて、ユエナが神刀様を持って泣いていたのだ。そう信じるしかない。

「その刀さえあれば、この村は安泰だ!」

「そうだ。刀はこの村の宝にしよう!」

 村人達がそう言い始め、ほぼ全員がうなずき、賛同する。

 だが、俺と妻は賛成しかねた。

「うむ。では決まりだな。ガムナ。リユム。娘から刀を受け取ってきてくれ。その刀はひとまずこの家で預かる」

「いいや、それは心配だ。ここは俺が持っておく!」

「いいや俺だ。次は俺がその刀で戦う!」

「お前らはそう言って刀が欲しいだけだろ、いつの間にか売られたり逃げられたりしたら事だ。ここは俺が持っておく!」

「なんだとこの!」

「そんなこと言って、お前が刀を欲しいだけだろ!」

「静まれ!」

 喧嘩になりそうだった空気を、村長が一喝して静める。

「この村を守る、それは大きな責任だ。それを背負うのは、代々村長を務めているわしらの一族が適任だ。故に刀はわしが大切に保管する」

 村長がそう言ったきり、静寂が訪れる。

 空気が重い。わかってる。皆、強敵を一撃で屠るあの神刀様が欲しいんだ。

 目の前に強すぎる力がある。それが村人全員の心を曇らせている。

 俺には、この者たちに神刀様が力を貸すとは思えないが。だが今は、この機会に、自分が言いたいことだけはハッキリ言っておこう。

「村長。俺は、ユエナを神刀様と共に旅をさせたいと思う」

「ガムナッ、正気か!」

 どよどよ、ざわわ。

「村長。俺はこう思っている。ユエナは神刀様に選ばれた、伝説の勇者なんじゃないかと」

「世迷言をっ」

「では誰がルギラメを倒した。ユエナだろう!」

 一瞬場が静まる。が。

「だが、それは刀を持っていたからだろ?」

「そうだ。俺達が持てば、もっと強い敵も倒せる!」

「そうだそうだ!」

「まさかガムナ、お前、刀を独り占めする気か!」

 また場が静まるが、視線は俺に注目している。

 俺は臆さず言った。

「伝説の勇者、そしてその武器である神刀様は、この村で収まる器ではない。ユエナならきっと、いや間違いなくこの国さえ守る伝説の英雄となる。俺はその道を閉ざしたくない」

「あなた」

「リユム、わかってくれ」

 妻はうなずいた。

「はい。私も、あの子には大きな力が眠っていると、今日実感しました」

「ならぬ!」

 村長が断固反対する。

「その刀は必ずこの村の守り神となる。それを旅に出す幼子に持たせるだと。そんなこと我慢できるか!」

「村長。村は神刀様がなくとも守れる。危険なモンスターが現れたんだ。冒険者ギルドに応援を頼もう。4ランク冒険者が1パーティでも来てくれれば、もうあの程度のモンスターが来ても大丈夫だ」

「ふん、こんなさびれた村にそんな者が来ると思うか。冒険者は金の亡者だ。こんな何もないところに来るわけなどない!」

 その言い分も、確かなのだろう。

 だがここで引いては、ユエナを守れない。

 ユエナ。

 あの子には怖い思いをさせた。もう少しで殺されてしまうところだった。

 しかし、ユエナのそばに神刀様がずっといてくださったら、ユエナは生涯、守られる。

 このチャンス、こちらだって逃せないんだ。

「皆。ルギラメは強いモンスターだ。だがそれ故にベテラン冒険者からは人気がある。ルギラメが出た村という噂があれば、少なくない数の冒険者が現れるだろう。それで、少なくとも村の平和は守れる」

「そう、なのか?」

「そうだ。そして、これをきっかけに村に活気が生まれれば、暮らしも豊かになるだろう。むしろ、神刀様がこの村にあると広まったら、どんな悪人が寄ってくるかわからないぞ。最悪泥棒で済めばいい。盗賊団に村を焼かれたりでもしたら、恐ろしい被害となるだろう」

「そんなに、ひどいのか?」

「このあたりにも盗賊は出るだろう。あれが一斉に襲ってきたら、神刀様だけじゃ村を守りきれないかもしれない」

 また静寂が広がる。だがこの静けさは、俺側の流れだ。

「それなら、刀を村から出したほうが良いかもしれないな」

「おい!」

「考えてもみろよ。とんでもなく強い武器がこの村にあるって噂が立ったら、どんなやつが来ると思う?」

「俺達でさえ欲しかったんだ。むしろ、頼みの冒険者だって手を出そうとするかもしれないぜ」

「うっ」

 決まったな。後は、念を押すだけだ。

「村長、ご決断を」

「う、うむ」

 村長は目をつぶって考え出した。

 だが答えはもう決まっているだろう。これでもまだ神刀様を持っておきたいなどと言えば、村人達の疑念や不安は溜まる一方だ。

 だが、ほんの少し不安があるとすれば。

 娘の旅がどんなものになるか、想像もつかないことだろう。


 幼女視点


「とうわけでな。ダメヤンは本当にダメなやつなのだ」

「うん。本当にダメね。ダメヤンは!」

「だろう、そうだろうユエナ!」

「うん!」

 私は家で神刀様のお話をずっと聞いていた。

 神刀様は今までダメダメな神様に使われてたんだって。

 ダメダメな神様って、ダメだよね。どうして神様なのにダメダメなんだろうね?

「でも、そんなダメな神様のおかげで、神刀様は私の元に来てくれたんだよね」

「う、うむ」

「ありがとうございます、神様」

 一応は助けてくれた神様みたいだから、ダメダメでも感謝。

「ま、まあ、そういう味方もあるかもしれんな」

「神刀様も、ありがとう!」

「うむ、そうだ。感謝の念は我のみに捧げるといい!」

「えへへっ」

「ふははは。それと、我を呼ぶ時はダイセツザンでよいぞ。もうお主は我の装備者なのだからな」

「うん、神刀様!」

「う、うむ」

 神刀様と楽しくおしゃべりをしていたら、お父さんとお母さんが帰ってきた。

「お父さん、お母さん、おかえりなさい!」

「ただいま、ユエナ」

「ただいま。ユエナ」

「ユエナ、今からユエナに言わないといけないことがあるんだ。よく聞いてくれ」

「うん。なに、お父さん?」

「 ユエナはこれから、村を出て旅をしなくちゃならなくなった」

「え?」





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