神刀と幼子、出会う
この話は、「神刀が異世界転移」と全く同じです。
続いてほしいと感想をいただいたため、作者は喜んで連載しようと思います。
どうかよろしくお願いいたします。
ダイセツザン視点
「おや、我が主よ。今日は武器屋に寄るのか?」
「ああ。ちょっと様子見にねー」
「我が主には既に我という刀があるだろう。無駄なことを」
「まあいいじゃない。暇つぶし暇つぶしー」
我が名はダイセツザン。神刀だ。
天才鍛冶師ドワーフ、オヤブンが生み出した渾身の一刀よ。そんな我を、我が主、器用貧乏の神ダメヤン様が購入したのだ。
我が主は特定の力を持つ神ではないため、毎日いろいろなところをブラブラしていた。その中に魔界のモンスター狩猟という予定があり、我はその時力を振るっている。たまにマグロの解体に使われるが、まあそこは目を瞑っている。
そんな我と我が主は、オヤブンの店に入っていった。
「ちわーっす。オヤブンー。なんか良い武器あるー?」
「おお、ダメヤンか。丁度今新作ができたところだ」
「え、どれどれ、見せてー」
ふむ。どうやら我の後輩が生まれたらしい。
まあ我程の力は無いと思うが、どれくらいできるかひとつ見てやるとしよう。
そうしてオヤブンが持ってきたのは、一振りの美しいロングソードだった。
「どうも、初めまして」
「!」
「!」
その神剣の声を聞いて、我と我が主は驚く。この神剣はなんと、女だった。
鈴を鳴らしたような美しい声は、そのロングソードのものだったのだ。
「オヤブン、すげーな。女の武器なんて珍しい!」
「ああ。そうだろう。それに切れ味も申し分ねえぞ。おそらくはお前の腰のダイセツザンをも上回るだろう」
なんだと!
「え、じゃあ絶対その剣買う。俺そいつに乗り換える!」
「な、バカな。我が主よ、我というものがいながら、それはあんまりだ!」
「うるせえよおっさん。俺は最初からおっさん刀を腰につける趣味はなかったっての。声を聞くなら断然女っしょ!」
「ありがとうございます♪」
「おのーれー!」
このクソ神、まさかこんなやつだったとは!
いやまあ、常日頃からダメな言動は多かったが、今日だけは許せん!
「ということで、ぽい。さよーならー」
ダメヤンはそう言って俺をそこらに投げ捨てた。
「こうなれば!」
自力抜刀!
シャキーン!
我は自力で鞘から出た。そして!
「斬撃レベル111!」
我は自由落下する刃を利用して、空間を切り裂いた。
説明しよう。スキル斬撃はレベル100を超えると空間をも切り裂くようになるのだ!
そして切り裂いた先は、異空間。更にその先で別の世界につながっているという。
使うのは初めてだが、こんな場末にクソみたいな理由で転がるよりはマシだ!
「憶えてろクソ神いいいい!」
我は怨嗟の叫びをあげながら異空間へと落ちていった。
そして、しばらく不思議な空間を漂った後。
やがて異空間を唐突に抜けて、直後、青い空の真ん中に出た。
幼女視点。
「ユエナ、今のうちに逃げるんだ!」
「ユエナ 、お願い、生きて!」
目の前で、お父さんとお母さんがそう言って、すぐそこにいる大きなモンスターに立ち向かった。
「おとうさん、おかあさんっ」
私は恐怖で足が震えながらも、お父さんとお母さんの背中を見守る。
だって、お父さんとお母さんは、この村で一番強い冒険者なんだから。
お父さんは、剣士。お母さんは、治癒士。
お父さんとお母さんなら、こんなモンスターなんかに負けないもん!
「守りの鎧!」
「うおおお、強斬撃!」
お母さんが魔法でお父さんを守って、お父さんが剣を振りかぶる!
これなら、あんなモンスターなんて!
「ぐおー!」
ぐしゃっ。
え?
お父さん、倒れちゃった。
「ひっ、聖なる矢!」
お母さんの魔法が、モンスターの大きなお腹に刺さる。
けど効果はたったそれだけで、モンスターは見た目以上の速さで走ると、持っている木槌でお母さんもやっつけちゃった。
「ぶもおおー!」
「あっ、あっ」
そしてモンスターが、私を見る。
青い体。長い鼻。腰だけ隠したボロい布。
全部、全部汚い。気持ち悪い。醜い。
なのに。そいつが木槌を肩にかついで、ゆっくり私に近づいてくる。
どうしよう。
私は。私は。
「うっ、うっ」
「ぶおっふぉっほ」
お父さん、お母さんっ。
「ふえっ、ふぇっ」
目の前が歪んで滲む中、私の目の前に突然刀が現れた。
「我を使え、少女!」
「よくも、お父さんとお母さんをやったなー!」
私は、走る!
戦うために!
モンスターは笑って私を見つめていた。侮っているんだ。私と、この刀を!
負けるもんか!
許さない、絶対に許さないんだから!
走りざまに跳んで、刀をつかむ!
「装備許可、同調開始!」
次の瞬間、私の中にものすごい力が流れ込んできた。
体中に元気があふれる。体が軽い。力が入る!
これなら、これなら!
あのモンスターも、倒せる!
「ええええええい!」
「ぶも?」
モンスターはそう言った後、真っ二つになって倒れた。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「やったな。少女」
「はあ、はあ。ありがとう、刀さん」
「ふふ。我はただの刀ではないぞ。我は神刀、ダイセツザンだ。そなたの名は?」
「ユエナ、です」
「ユエナか。良い名だ」
「あ!」
私は慌てて、お父さんとお母さんの元へ走った。
お父さん、お母さん、死んじゃやだよ!
「お父さん、お母さん!」
慌てて近づくと、二人は血まみれのまま笑って言った。
「良かった。生きててくれて」
お父さん、お母さん!
「うわああん、うわあああん!」
「おい、ユエナよ。泣いている暇はないぞ。早く手当てのために薬か治癒士が必要だ」
「あ、私が治癒士です」
「あ、それはどうも」
「いえ、ごほっ。ごほっ。やはり結構、キツイので。少し、休憩。ああ、なんだかきれいな川が見えてきた」
「いやいや母君、それはまずいぞ!」
「おかああさああん、おかあさあああん!」
私はこの日のことを、一生忘れない。
私と神刀様が出会ったその日、しょっぱい涙の味を味わった。
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土日更新を目標にしたいと思います。




