表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

act2-4 ウィニングボールを君に

「あの女だけは、許せない」


 あれ以来、人事部の越前谷(えちぜんたに)が私の事を何かにつけて、心良く思ってないようだった。


「ねえ、あの女、また出て来たらしいわよ」


 高校の時の私の手下たちも、こそこそと聞こえる内緒話。希望が通り、正社員になった私が、高校の時と立場を逆転させたから、気に入らないらしい。


(野球の声援の声と違う、声が聞こえる) 


 その日、会社行事の部署別野球大会があった。


 まったく、社内の野球の試合で、私の悪口まで言うなんて、とんだ会社に来たものだわ。ま、美しく、才能があり、実力主義の中では勝ち誇る私だから、仲間からやっかまれるのだろうけど。


 プロチームではないが、レクリエーションの一環で、我が社には野球チームがあり、トーナメント試合をやっている。


 私ら職員は表向きは業務外だが、暗黙の圧力で応援に駆り出される。


 ただ、天気の良い日に野球観戦となると、良い気晴らしになる。


 近くの野球場に行って、カキンという音、試合会場の雰囲気に、私も楽しさを感じていた。


「部長、確認させてください。会社行事は業務外ですか、それとも業務上ですか?」


「ま、まあまあ、沢島さん、そう怒らなくったって。いつも、やってるじゃないか。単なる草野球の試合だから、あとは、居酒屋にしけこんで、皆楽しくやるんだからさ」


「部長らは良いですよ。そうしてしけこめば。でも、見てください。皆、しけこんで行くから、何も片付いてない。これ、後片付けするの、私らなんですからね」


 試合場となったグラウンドには今はほぼ人はいない。皆、居酒屋へ行ってしまった。


「おいおい、沢島さん、言い過ぎでないか、相手、部長だっての分かってるのか?」


「やっぱ、噛みつくよなあ」


「いつも野球部員や応援団は先に、居酒屋へ行ってますよね、社長?」


「う、うむ」


「今日は社長もいらっしゃるのに、あいつは元気だな」


 影でこそこそ言っていた同社内の職員。


 私がぎらっと睨むと、すごすごと散っていく。


「四の五の言ったって、散乱したバッドやボールは勝手に片付かないんですからね。もっと片付ける人を増やさないと、ね、社長、そう言ってくださいよ」


「う、うむ」


 気の弱い社長は、何を言ってもうん、とか、ううーんとかしか言わない。だから、弱気社長。いても役に立たないとか、うっとうしいと言われて、あまり尊敬されてない。


「社長、ああいうので大丈夫なのかな?例の買収会社の連中がまた、来てるんだろ?」


「知らね。売られたら売られたときさ」


 無責任な会社連中は、影口までこそこそ言ってる。


 でも私は言わない、言うぐらいなら正面向かって言う。黙ってこそこそするなんて嫌。


「あんたら、何を言ってるの?ちょっとこちらに」


 と言いかけたら、私が社長にまで文句を言うと思った上司から、引き止められた。


「お、おい、沢島さん、いい加減、止めてくれ。特に社長は、社長には食ってかかるな。俺らが片付けたらいいんだな」


「仕方ないですねえ。部長らはもう居酒屋行ってください。あとは私らが片付けて置きますから」


「お、すまない、沢島さん。じゃあ、お言葉に甘えて」


「部長がもう待ちきれないみたいですから。放置して行ったら、グラウンドの人も迷惑でしょ」


「悪いね。じゃあ頼むよ。女子らはもうあとは、帰っていいから」


「はい」


 ふん、おじさんらばっかりの居酒屋なんて、セクハラばっかりよ。誰が行くもんですか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ