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深夜の時間は長い……長いようで、短いようなもの。
俺は死霊術師である彼女の「記録」に目を通してみたら、間もなく朝の時間になった。
太陽が完全に昇っていない若干紫色に混じっている深夜の時間帯。
“もうこんな時間だ”という感想は、過去の人生ではあまりなかったが、それほどの文章量だ。
あっという間というのがまさにこのこと。
特に書き方とまとめる感じは、あまり読書していない素人の俺でもちゃんと見えるようになるし、見やすいものだ。素直に感心する……はずだった。
もし、この「記録」を見ている人は俺でなければ。
「……最初から、見抜かれたんだ。」
死霊術師。
これを聞くと、大体の人はこんなイメージが浮かぶ――死者への冒涜する職業だと。「アンデッド」を作って、世界を荒らす人達だと……
つまり、いい印象がないヤツら。当然、俺もそんな印象を持っている連中だ。じゃないと、これらのことを知れるわけがない。
では、いい印象を持っていないヤツに、人は素直に全部の事実を言い出せるのか?いいや、ない。
少なくとも、俺ができるわけがない。
彼女が言っている「未練」に、俺は確かに嘘をついていない。でも、何も包み隠さずに話したわけでもない。
冒険したかった話は子ども頃の夢だ。
冒険者たちの話を聞くと、憧れを持ったのも本当だった。
疑問を感じたのもそう。ただし、それらのことは成長していくにつれて……「家庭」を持つことに連れて、「大人」になったのだ。
俺が冒険したかったのは、ただ冒険したいわけではない。
俺が冒険したい本当の理由は――
「……見られちゃいましたか。」広大な草原だからか、彼女の声が僅かに木霊している。
背後から伝わってくる気配。
俺は「記録」を持って、彼女の方に身を翻す。
「その辺に適当に置いていれば、見られない方が難しいだろう。」
「隠すつもりはいたよ。でも、運命は許してくれないようです。」
「……ならば今後、運命のいたずらに細心の注意を払ったほうがいい。むしろ、常に持ち歩いたほうが見られない。」俺は「記録」を彼女に戻した。
「……そうします」と彼女はそれを手に持った。
彼女が池に行く間、俺は彼女の荷物の中から「記録」を発見した。
隠すつもりはいるだろうが、倒しているバッグの中から、その書物の姿がどうにも隠せなかった。
俺も……無視できなかった。
だから見た。そして予想通り、あまり良いものではなかった。
「なんも言わないのか?文句とか……」と俺は言った。
「見られてしまったものは仕方ありません。責めるつもりもありません。」
「……なんだそれ。」気持ち悪いくらい動揺しない……いや、動揺したかもしれないが、顔に出さなかっただけかもしれない。
わからない。
わからない……でも、腹が立つ。
……なぜか、むやみに。
自分に。
腹が立つ!
「どこへ行くつもりですか?」
「……死にいく。」
「すでに死んでいますよ?」
「ならばもう一度死んでればいい!」
「やはり……囚われましたか。」バルードさん、君は自分の「未練」に――
彼女の声が耳元に囁いているのを感じて、俺は心の何かが制御できなくなっていくのを感じた。
ああ。おかしい……おかしいな。
何もかもがおかしくなっていく中、意識がどんよりと沈めていく。
そしてふと、ある日のことを思い出す。
2024.10.29 テコ入れました。だいぶ修正しましたね。