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冒険とは、何なんだろう。
この哲学じみの考えはずっと俺の脳内に巡りに巡って、離れられない。
俺は今、夜番をしている。
夜間の警備をしつつ、考え事をする。
魔物は襲来しないため、正直、楽な仕事だ。今までの「冒険」もずっとこんな感じだったし……
でも、だからだろうか、俺は逆に不安しか思わない。
風も吹いてないのに、たき火はゆらゆらと揺らいでいる。まるで俺の心境を表している。
アンデッドになってから、思考を含め、色々変わったことがある。
例えば、アンデッドは日の出に弱い。運動能力が下がる。身体が鈍いという感じはこの原因である。
更に言えば、日の出が弱いということは、夜の時に元気が出る。夜番をする理由もこれである。
もっともっと言えば、アンデッドは五感が正常でも、五感だけ頼る必要はない。常人にはわからない仕組みで、食事なしでも、睡眠なしでも生きていける。
まさに夜番に相応しい存在だ。
もし、「あの時」俺はすでにこの体になれれば、今は――
パチ。たき火の音に驚き、俺は考え事をやめた。
死霊術師である彼女は俺にさせる一つ一つの行動は、「ちゃんと理由がある」。少なくとも彼女に疑問を問いかけた際、答えてくれる。
故に……不安しか感じられない。「罪悪感」しか感じられない。
なぜ、俺なんだろう?
なぜ、何も聞かずに「俺の話」を信じてくれたのだろう?
もし便利なアンデッドを探しているだけなら、俺より便利で強いアンデッドがいるはずだ。
でもなぜ、俺は選ばれる?
彼女が最初の時に言ってた「未練」は、一体、なんなんだろう。
そして、いろいろ考えているうちに、思考が少しずつ跳躍し、俺は最後に、「ふん」と、冷笑した。
お前が考えすぎただけだ。農夫であるお前には似合わねえよ。普通なら――
普通なら……普通なら……と、生前の俺と同じく、俺は今も自分の心にそう言い続けている。
俺は冒険したい……これは間違いない。
俺は彼女に嘘をついていない。
ただ、一つの事実を伏せていただけ。
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これは、とある観察記録である。
……
2024.10.29 少しテコ入れ、修正しました。