表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

7

 冒険とは、何なんだろう。


 この哲学じみの考えはずっと俺の脳内に巡りに巡って、離れられない。


 俺は今、夜番をしている。


 夜間の警備をしつつ、考え事をする。


 魔物は襲来しないため、正直、楽な仕事だ。今までの「冒険」もずっとこんな感じだったし……


 でも、だからだろうか、俺は逆に不安しか思わない。


 風も吹いてないのに、たき火はゆらゆらと揺らいでいる。まるで俺の心境を表している。


 アンデッドになってから、思考を含め、色々変わったことがある。


 例えば、アンデッドは日の出に弱い。運動能力が下がる。身体が鈍いという感じはこの原因である。


 更に言えば、日の出が弱いということは、夜の時に元気が出る。夜番をする理由もこれである。


 もっともっと言えば、アンデッドは五感が正常でも、五感だけ頼る必要はない。常人にはわからない仕組みで、食事なしでも、睡眠なしでも生きていける。


 まさに夜番に相応しい存在だ。


 もし、「あの時」俺はすでにこの体になれれば、今は――


 パチ。たき火の音に驚き、俺は考え事をやめた。


 死霊術師である彼女は俺にさせる一つ一つの行動は、「ちゃんと理由がある」。少なくとも彼女に疑問を問いかけた際、答えてくれる。


 故に……不安しか感じられない。「罪悪感」しか感じられない。


 なぜ、俺なんだろう?


 なぜ、何も聞かずに「俺の話」を信じてくれたのだろう?


 もし便利なアンデッドを探しているだけなら、俺より便利で強いアンデッドがいるはずだ。


 でもなぜ、俺は選ばれる?


 彼女が最初の時に言ってた「未練」は、一体、なんなんだろう。


 そして、いろいろ考えているうちに、思考が少しずつ跳躍し、俺は最後に、「ふん」と、冷笑した。


 お前が考えすぎただけだ。農夫であるお前には似合わねえよ。普通なら――


 普通なら……普通なら……と、生前の俺と同じく、俺は今も自分の心にそう言い続けている。



 俺は冒険したい……これは間違いない。


 俺は彼女に嘘をついていない。


 ただ、一つの事実を伏せていただけ。


 ****


 これは、とある観察記録である。


 ……

2024.10.29 少しテコ入れ、修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ