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これは、とある会話記録である。
「なあ、リサ。本当に行くつもり?」
「ああ、行くよ……だって、徴兵されたんだ。この村では一番実力があるのは私なんだし……」
「でもこの遠征に参加したら、君はきっと……」
「大丈夫よ。必ず帰ってくるさ。だからこの間、娘は君に任せるよ?」
「……」ああ、やだな。なぜ俺は、何の戦いの才能もないんだろう。
もし、俺が戦えることができるのなら……
「仕方ないねー」
チュッ。
「……」
「……ふふ。娘の世話をする時、君はカッコイイよ。」
「……」
「もう……行ってくるね。」
「……行っ、てらしゃい……」
これは、とある夫婦の会話記録である。
*彼はあの時に何も言えなかった。彼女は――
2024.10.29 少し修正しました。妻の名前も増やしました。