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 振り返ってみれば、俺の人生は普通だった。


 俺は一人の村人であり、農夫である。


 灌漑や草狩り、虫や動物除け、他に栽培と荷物運びなど……ずっと農業に関わる仕事をこなしていた。


 農業の仕事以外、あまり関わったことがない。


 だから俺は、少し気になっていた。


 昔からちょっと憧れていた冒険者の仕事は、一体どんな感じだろう?


 どんな風に冒険をしたのだろう?


 だって、危険に伴う仕事って一体どんな価値があるのだろうと、普通、気になることだろう?


 時々自分の村にいらっしゃった冒険者様は、村の人たちに何件の冒険譚を持ち込んだことがある。そのどれの話も壮観な話で、とっても、とっても面白い話だった。


 だが、よくよく話を聞いていくと、俺は思わず考えてしまう。


 その面白い話の反面に、その冒険の裏話には、本当に表面の冒険譚みたいに素晴らしいだけの話だろうか。


 本当は、人に聞かせるために、悪い話を除けようと思っていないのかと、考えてしまうんだ――


「――だから、俺は冒険したかった。気になっているんだ。冒険は一体どんなことなのかをね……」と俺が言った。


 言い終わったところ、少し沈黙の時間が続いていく。


 パツ、パツ……と、たき火がぼうぼうと燃えている。


 俺たち――俺と死霊術師のお嬢さん――は今、たき火の近くに座って、話し合っている。


 いいえ、もっと正確に言うと、喋っているのは俺だけだ。


 彼女は俺が冒険したい理由が聞きたかったから、今説明していた。


 だが……


「……そうですか。」と死霊術師である彼女は何の表情もなく、淡々と相槌を打つ。


 元々黄昏近くの時間帯に話した長話を言い終えて、今となってはすっかり暗闇になった。


 この間、彼女が返事してくれた言葉は少ないくらい短かった。


 今回の返事は若干聞き慣れた「うん」と「そう」ではなく、今まで一番長かった言葉だが……やはり、まともな返事が欲しかった。


「そうですかって……お嬢さん。自分で聞いておきながらも、この返事は冷たくないですか?」俺は言いながら、自分の身体を見ている。


 骸骨になったこの身体は、不思議と生前の感覚とあんまり変わらない。筋肉一切ないのに、軽くなった感じが全くない。


 むしろ……鈍い。


 俺は一体、どういう原理で動くんだろう?一つの疑問が浮かんだところ、内心の片隅にはそう考えてしまう。


 まあ、魔法があるこの世界では、こんな些細なことを気にする意味がないだろうけど。


 そして、俺が余計なことを考えている間、彼女は返事した。


「そう……すみません。話すのが苦手で。」彼女はこう言っていたが、淡々とした口調はあまり変わらない。


 むしろ、どこか上の空という感じだった。


 ぼんやりとしていて、まるで俺の話に興味がない様子だ。


 俺は内心でため息をついて、顔を俯いた。


 はぁ、なんで俺は死霊術師なんかに……俺は地面を見つめて思う。


 いや、たしか「未練」って言ったか……と俺がそうこう考えているうちに、ちょうど彼女の方が気になって見てみると、自分が見られていることに気付いた。


 彼女は何も言わずに、ただ虚ろな目で俺を見詰めている。


 その目で見られると……なぜか自分の考えが見透かされているような感じだ。


 少し不安を感じた俺は、何か言おうとする時、彼女は先に喋った。


「……火番は頼みました。」と、彼女はそう伝えて、俺の返事も聞かずに就寝しに行った。


 俺は、火番を務めさせられた。


2024.10.29 少しストーリーを修正しました。

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