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文章拙すぎてすみません
入学式当日。私は、主学院の正門の前に立った。
ついに入学か…などと感慨深く学院を見渡すと脳内に軽やかな音楽が流れ出す。ゲームのオープニングテーマだ。少しテンションがあがる。
正門をくぐると、知り合いや友達に会えたであろう新入生があちこちで話に花を咲かせていた。
ちなみに、私には友達や知り合いはほぼいない。…いや、一応1人いると言えばいるのだろうか。
そもそも、ほぼ勉強や稽古ばかりしていたので同世代と交流をしていない。両親は少しそのあたりを心配してくれていたが、全て断っていた。
どのみち、学院に通えば、少しくらい、ね…友達できると思うし…自信はないけれど。
そんな事を思いながら、目的地に向かって歩きだそうとした瞬間。
「ふーふふーんふふふー♪」
先ほど脳内に流れてきた音楽を鼻歌にスキップで私のすぐ横を通り過ぎていく女生徒に目を奪われた。
緩やかなウェーブのかかった銀髪に、パッチリ二重のパステルピンクの瞳。春の妖精を思わせるようなその出で立ちは、ヒロインのそれだった。
「まさか…」
思わず声が出た。その声を拾ったのか、ヒロインだと思われる彼女は振り向く。一瞬、目をパチクリさせた後、私へと手を差し出した。
「アナタも新入生よね?これからお世話になります!よろしくね。」
そうして私と握手を交わしているところへ、後ろから声をかけられた。
「早速友達ができたのか?サリー」
私が振り向いた先には、唯一に近い知り合いがいた。
「ライン、おはよう。在校生が何でここにいるの?」
彼は2つ歳上で、富豪商人の跡取り息子だ。裏で情報屋もやっている。私の知識のうち、本や教師に学べる以外の情報は彼から仕入れたものだったりする。
兄の幼馴染でもあるのだが、なんとゲームの攻略対象である。
茶髪という特に目立たない髪色に無造作なウルフカットで、こめかみのあたりをピンで留めているチャラ系の見た目。瞳も本人曰く無難なブラウンということだが、私は綺麗な瞳だと思っている。
横から小さく、え?ライン?という独り言が聞こえたかと思ったら、彼女は焦ったかのように走っていってしまった。
「何だ、早速できた友達に逃げられてんじゃん。」
ラインは、走り去った彼女の背中を目で追いかけながらも私をからかう。
「そんなんじゃないわよ。」
私がため息をつくと、ラインは笑った。
「なんだその態度、ヒトがせっかく不安な思いをしてないかと心配してきたのに。」
「誰も不安な思いなんてしてない。」
などと軽いやり取りをしていたら、明らかに目立つ御方が近づいてきた。
「おはよう、ライン。」
その名の通り、輝くような美しい金髪を柔らかな風がなびかせていく。イエローの瞳は、目が合えば希望を思わせた。
彫刻のようなその美男子は、シャイン殿下。今のところ、将来この国を担うであろう第一王子だ。
「シャイン。おはよう。今日も爽やかだな。」
「有難う。ラインもイケメンだよ。」
びっくりするやり取りである。
学院内は完全平等であり、どのような階級も総て対等に接する。
というルールがあるのは知っていたし、実際ゲームをプレイしていた時もタメ語だった。でも、この世界で生きてきて、実際にそれを見ると少し戸惑うのも事実だ。
「サリー、この方がシャイン殿下だよ。」
ラインが私にシャイン殿下を紹介する。
「初めてお目にかかります、シャイン殿下。」
そう挨拶すると、シャイン殿下は軽く頷いてくれた。次にラインはシャインの方を向く。
「シャイン、彼女がサリーだよ。」
何だか含みのある言い方だなと思ったら、シャイン殿下がニッコリ笑った。
「君の話はよくラインから聞いているよ。ようこそ学院へ。あと、殿下も敬語も要らないよ。ここは学院だからね。まあ、どちらでもいいけどね。」
爽やか青年の笑顔の殺傷力半端ない。でも私はモブですからね。極力顔に出さないようになんでもない愛想笑いを返す。
「えっと、有難うございます?」
どう答えたらいいか解らない私を見て、ラインがまた笑う。
「入学式の会場は解るよね?どーせ学院内の地図脳内に焼き付けてるだろうし。」
それに、もちろんと返すと、ラインとシャイン殿下は「またね」と私の目的地とは違う方向へと去っていった。
その姿を見送りながら、先ほどのヒロインの態度を思い返す。もしかしたら彼女も転生者なのかもしれない。
そろそろ目的地へ向かおうと一歩足を踏み出したところで、また声をかけられた。
「あなた、シャイン殿下とお知りあいなの?」
艶やかな漆黒のストレートロングに吸い込まれそうなほどの真っ黒な大きな瞳、少し吊り目でキツイ印象を与えるが、美人とはこのことかと改めて思い知らされるような女生徒が私を見下ろす。
ライバル令嬢登場である。
「いえ、初めて挨拶させていただきました。知り合いなのは、もう一人の」
「ああ、あの商人の息子…ん?アナタ…」
私の言葉に被せるように言いながら、私の顔を見たライバル令嬢の眉毛が一瞬ピクリと動いた。
「まあ、いいわ。わたくしローズと言うの。…アナタは?」
ローズ、ライバル令嬢の名前だ。
「私はサリーよ。よろしくね。」
「ええ、サリー。こちらこそよろしくね。ではまた。」
ローズが先にスタスタと歩き出していってしまった。
さすが入学式当日。主要人物登場しまくりで、暫く動けなくなっていたが、そろそろ受付締め切り時間が迫ってきている事に気づき、学院内へと入っていく。
その道中、遠くでヒロインを見つけた。もう1人男子生徒がいて、ヒロインはまた少し焦ったように胸の前で手を振って断っているようだった。
少し気になったが、それを確かめている時間はなかったので、私は目的地である入学式会場へとそのまま向かった。
その後、入学式は何事もなく無事に終わり、ついにゲームシナリオへと突入した。
本来のゲームシナリオ
オープニング後、学院正門から入学式会場に向かうまでに、攻略対象がランダムに1人登場する。その攻略対象と会場まで一緒に向かうを選択すると好感度がアップする。