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王女と女執事~夜の公務は危険な香り~  作者: 肉厚+ME-TO=80㌕
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第2章 新たな旅立ち

 ◆旅立ち

夜明けにアリアナとジュリエットは王国を発った。北へ向かう旅路は広大な大地が広がり、美しい自然に囲まれていた。二人は馬車に乗り込み、アリンドールという小さな村へと向かう道中を描いていく。


馬車の中でアリアナは窓の外を見つめていた。澄んだ青空や風景が、彼女の心を穏やかにしていく。


一方のジュリエットはアリアナの横に座り、時折彼女の手を取り、優しく撫でるような仕草を見せる。


「ジュリエット、この旅で何をするつもりなの?」


アリアナが尋ねると、ジュリエットは微笑んで答えた。


「もちろん、お嬢様を守ることですよ。そして、お嬢様には様々な経験をしていただきたいと思っています」


「そう…アリンドールへの道中で、どんな経験をさせるつもりなの?」


ジュリエットの瞳に少しだけ悪戯な輝きが宿った。「それはサプライズですよ。お嬢様はきっと喜ぶと思います」


アリアナは首をかしげながらも、ジュリエットの意図を信じて微笑んだ。二人は互いの距離を縮め、惹かれ合うような雰囲気に包まれていた。


やがて馬車が森の中を進むと、リディアという宮廷魔術師が現れた。彼女は長い黒髪と蒼い瞳を持ち、知的で謎めいた雰囲気を纏っていた。


「アリアナ様、ジュリエット様、おはようございます」とリディアが丁寧に挨拶した。


「おはよう、リディアさん。一緒に旅をするのね?」アリアナが尋ねると、リディアは微笑んだ。


「はい、エルシリア王よりお手伝いの申し出があり、私も旅に同行させていただくことになりました」


リディアは魔術に優れ、その力は王国でも一流と言われていた。彼女が同行することで、旅路の安全がより確保されることは間違いなかった。



さらに、アリアナたちは「魔法の森の賢者」として知られるフィオナ・レインハートという魔術師とも出会う。彼女は自然の力を操り、森の生き物たちと意思疎通ができると言われている。


フィオナはアリアナとジュリエットに対し、それぞれの力と感性を磨くための助言を与えた。彼女は自然の美しさと力強さを讃え、アリアナとジュリエットの絆を深めるような言葉を贈った。


「自然は、私たちに多くのことを教えてくれます。その中で、あなたたちの本当の想いと力を見つけてください」


二人はフィオナの教えを胸に秘め、新たな気持ちで旅を続けていった。自然の中での冒険や出会いは、彼女たちの心にさまざまな影響を与えていった。


馬車を進めるうちに、道は次第に荒れてきていました。平坦な道から不安定な地形の中へと変わっていきます。


やがて馬車は広がる沼地の中に足を踏み入れました。


「ここは…どうしたの?」とアリアナが不安げに尋ねると、ジュリエットは深呼吸をし、落ち着いた声で答えました。


「恐れることはありません、お嬢様。ここは通り道ではありませんが、別ルートを使ってアリンドールへ向かいます。」


リディアとフィオナも応援のような表情を見せました。


この困難な道を進むことは、アリアナとジュリエットの成長と絆を深める大切な経験になるでしょう。

アリアナの心にはドキドキとワクワクが混ざり合っていました。


彼女はジュリエットの手を握りしめ、力強く微笑みました。


「任せて、ジュリエット。この冒険を楽しむわ.」

ジュリエットも嬉しそうに微笑み返し、「かしこまりました、お嬢様」と言いました。



馬車を降りると、二人は沼地の中を歩き始めました。足元は泥だらけで、しっかりとした道はなかったが、彼女たちは決して諦めることなく前に進んでいきました。途中、鳥のさえずりや自然の音色が響き渡り、二人の心を癒してくれました。


ジュリエットがアリアナに手を差し伸べ、共に一歩ずつ進みました。彼女たちの絆が深まっていくのを感じながら、アリアナは勇気を持って言葉を紡ぎました。


「ジュリエット、ありがとう。あなたがいてくれるから、私は強くなれるの。」


ジュリエットの瞳には優しい光が宿りました。


「お嬢様、私も同じです。あなたがそこにいるから、私は勇気づけられます。」


二人は微笑み合い、共に前へと歩み続けることを決めました。この困難な旅路が、彼女たちの心と絆をさらに深めることは間違いなかったのです。


途中、リディアとフィオナが魔術を使い、足元の道を整えてくれることもありました。彼女たちのサポートがあったからこそ、アリアナとジュリエットは困難な状況でも前に進むことができたのです。


 

◆アリンドール村

そして、長い沼地の旅路を経て、やがてアリンドールの小さな村が姿を現しました。二人は感慨深い気持ちでその村を見つめました。


「よくがんばりましたね、お嬢様、ジュリエット様」

とリディアが声をかけると、フィオナも微笑んでうなずきました。


「本当によくやったわ。この経験が、お互いをさらに理解することに繋がったことでしょう。」

アリアナとジュリエットは共に微笑み合い、手を繋いで村へと歩を進めました。


ジュリエットが少し生ぬるい態度を感じていたため、いつものような感じの悪戯好きなサディスティックな執事に戻っていました。アリアナはジュリエットの変化に気付き、微妙な表情を浮かべました。


「ジュリエット、どうしたの?」


アリアナが尋ねると、ジュリエットは少しだけ不敵な笑みを浮かべました。


「お嬢様、こうしたほうが私らしいと思って。悪戯好きな私のほうが、お嬢様にとっても楽しいのではありませんか?」ジュリエットが冗談めかして尋ねました。


アリアナはジュリエットの言葉に心の奥底でわずかな安心を感じました。

彼女が以前のサディスティックな態度に戻ることで、彼女たちの距離がまたひとつ近づくような気がしたのです。


「そうね、ジュリエットのほうが私らしいわ。でも、少しだけ優しさも欲しいかもしれないわね。」


アリアナが微笑むと、ジュリエットは驚くほど柔らかな表情を見せました。


「かしこまりました、お嬢様。少しだけ、優しく接することも心掛けます。」

二人は微笑み合い、絆を深めていくことを約束しました。


その後も旅は続き、アリンドールに近づいていきました。


アリンドールは小さな村でしたが、温かい雰囲気に包まれていました。


村人たちが笑顔で迎えてくれ、アリアナとジュリエットは心地よい時間を過ごしました。村の中央にある広場では、地元の子供たちが元気に遊んでいました。


アリアナは彼らの笑顔を見て、ほのかな幸せを感じました。


「ジュリエット、ここって素敵だわ。本当にいい場所を選んでくれたわね。」


ジュリエットは満足げに微笑み、アリアナの手を取りながら、広場に向かいました。

村の人々と触れ合いながら、アリアナとジュリエットの関係はさらに深まっていきました。


彼女たちが王国の外で過ごすひとときは、政治的な葛藤や王位継承に煩わされることなく、純粋にお互いを理解し合い、愛し合う時間となっていました。


リディアとフィオナも加わり、楽しいひとときを共有していました。フィオナが魔法のショーを披露すると、村人たちは喜びの声を上げました。




夕日が西の空に沈む頃、アリアナは静かに息を吐きました。


「本当に楽しい一日だったわ。」ジュリエットも同じく満足げに微笑みました。


「はい、お嬢様。私も幸せなひとときでした。」


二人は再び手を取り合い、夜空に輝く星々を見上げました。



互いに支え合い、成長し、愛し合うことで、彼女たちはこれからも困難を乗り越えていく強い絆を築いていくのでしょう。


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