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1話 大切なことは誰にも気付かれないように

「お嬢様、私から申し上げるのは無礼であると承知のうえで失礼いたします。もうこのような事はお辞め下さい」

背後から執事にそう言われた私は、彼の衣類が入った引き出しから静かに離れた。またしても彼には叶わなかった。シャワーを浴びているタイミングが何時なのかを探り、念には念を入れて挑んだ今日ですら目的を果たせなかった。悔しい。


「私はね、イーサンに悪い虫がつかないようにしたいだけなの。あなたがこの歳まで結婚できなかったのは何故だと思う?私がぜーんぶ先手を打って白紙にしてたから!これもその一環よ!」


「だからと言って、淑女が男の部屋にまで入ってはいけません。しかも、よりにもよって何故これから着る衣服を探し回っていたんですか」


探し回っていたことまでお見通しとはさすが私のイーサン。呆れている姿も、今さっきシャワーから出てきたばかりの髪から水が滴っている姿も全部好き。その滴る水を飲ませてもらえないだろうか。


「なんでだと思う〜?イーサンなら私のことなーんでもお見通しなんじゃないの?……あ!それと、またお嬢様って呼んでる。昔はソフィーお嬢様ってちゃんと愛称で呼んでくれていたじゃない」


イーサンは私の話を聞きながらも、手早く身支度を整えている。それを横目でちらりと見ると、鍛え抜かれた筋肉は眩しく思わずこちらが心配になるくらいシャツが筋肉で張っている。もしボタンが飛んだらそのボタンをもらいたい。いや私がボタンになる。そんなことを考えてるとは思ってもいないであろうイーサンが私へ話しかける。


「もうお嬢様は立派な淑女です。一介の使用人である私ごときがお名前で呼ぶことは控えたいのです。そして、お嬢様は大方その手に持ってらっしゃる香り袋を私の服に忍ばせるつもりだったのでは?」


「やっぱりイーサンはなんでも分かるのね!さすが私の執事様ね。いつもと違う私が使っている香りがあなたからすれば良い牽制になると思ったの。そこまで私のこと分かっているのなら、名前くらい呼んでくれてもいいじゃない!」


「それとこれとはお話が異なります。こちらの香り袋は罰として没収いたします。もう男の部屋へお一人で入らないでくださいね?」


そういうと、イーサンの手が香り袋を持つ私の手にそっと触れた。思わず素直に渡してしまうほど、重なった手が優しかった。子ども扱いされる悲しさと、触れられた嬉しさの両方に襲われて、寂しさが少し勝った。


「わ、分かったわ!約束、する。でも、絶対にぜーったいにイーサンのこと振り向かせるから!呪いでも、魔法でもなんでも。手段なんか選ばないから!私に好きになられたこと、覚悟しなさいよね!」


「その時が来るといいですね。そろそろダンスのお稽古の時間ですよ。お嬢様も支度をいたしましょう。いつまで経ってもお嬢様は髪を結うのが苦手ですからね」


微笑みながらドアを開けて、エスコートしてくれる。

本当は1人でも綺麗に髪をまとめられることは、イーサンにはまだ内緒にしておこう。


バタン、と音を立てて閉められた男の部屋の中には秘密がある。彼女の髪をブラッシングした際に抜けた髪で作られた栞が男のお守り代わりにされていることを彼女は知らない。

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