第6話 見張っていてって言ったのに
アリアがマークと出会っていた頃、副長とジネットもまた、暗い城を彷徨っていた。
2人はもう、捜査対象の子供達も、皇女であるアリアも探していない。
下腹から込み上げる強烈な欲求が、2人からトイレ以外の思考を奪っていくのだ。
特に――
(も、漏れるっ! 漏らしてしまうっ! あぁぁっ、トイレっ……急がないと……!)
副長はもう、一歩踏み出すたびに膀胱の中身を全てぶちまけてしまいそうになっていた。
下着はもう役目を果たしておらず、ショートパンツの染みも、隣のジネットが少し視線を動かせば見える程に大きくなっている。
彼女はとっくに我慢の限界を超えていて、だが、トイレは一向に見つかる気配はなかった。
ジョビビビッ!
(あぁっ! も、もうダメっ! 出るっっ!!)
「ご、ごめんなさい! もう、我慢できないわっ! そこの部屋でするからっ……お願いっ、見張ってて!」
「あ、ちょっ!」
本当に秒読みが始まってしまった副長は、ジネットの返事を待たず、すぐ隣にあった部屋にベルトを外しながら飛び込んだ。
「は、早くっ、変わって下さいよっ!」
震え混じりのジネットの声を背に、部屋の中を見回す副長。
どうやら客間のようで、暗い中でも清潔そうに見える家具や絨毯が、ショートパンツのボタンにかけた手を止めさせる。
(あっ、あぁっ! よりによって、こんな部屋で……!)
こんな不気味な城だ。
石畳の仕置き部屋のようなところなら、気が楽だったろうに。
せめて、ゴミ箱のようなものはないかと周囲を見回したが、部屋には副長の尿意を受け止めてくれるような入れ物は、何も見当たらなかった。
やがて、もう何度目かの暴発が、副長の下着の中で迸る。
(も、も、もうっ、ダメぇっ! ごめんなさいっっ!!)
時間切れだ。
渾身の力で括約筋を締め上げるが、今度の暴発は完全には止まらなかった。
下着とショートパンツが濡れていく感覚に、急ぎボタンを外し、ジッパーに手をかける。
だが――
(あぁぁっ!? は、外れないっ!)
金具が噛んでしまったようで、ジッパーは1/4ほど下げたところで止まってしまった。
副隊長が上げ下げを繰り返す間にも、小水はジョロッ、ジョロッと溢れていく。
「外れてっ……外れて……! あ゛ぁっ、嫌ぁっ! お願いっっ!!」
そうして、ショートパンツの染みが、もう失禁と変わらないレベルまで広がったところで、ようやく頑なに動こうとしなかった金具が、最後まで下り切った。
泣き顔を安堵の色に染め上げ、ショートパンツと下着に手をかける副長。
(あぁっ、やっと……っ)
だが、その油断が命取りになった。
ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!
下腹の激流に一瞬の隙を突かれた副長は、まだ下着もショートパンツも穿いたまま、淑女の堤防を決壊させてしまった。
「あああぁぁぁぁぁっっっ!!? 待ってっ! 待ってええぇぇぇっっっ!!!」
悲鳴を上げながら、大慌てでショートパンツと下着を下ろそうと力を込める副長。
だが、元々ぴっちりめなショートパンツは、濡れてさらに肌に張り付き、少しずつしか下がっていかない。
その間も、水流はショートパンツを突き抜け、彼女の腰から下にバシャバシャと落ちていく。
そして、中身を1/3ほど下着に叩きつけてしまった頃、ようやく、副長の下半身は衣服の戒めから解放された。
ビシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ!!!!
「あ゛はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っっ!!」
(まっ……まにっ……あった……! あぁぁっ! きもちっ、いいっっ!!)
脳が焼ける様な解放感に、副長は、自分が腰から下をびしょ濡れにしてしまったことも忘れて、その感覚に浸り続けた。
そんな彼女の背後の扉から、慌ただしい足音が部屋に駆け込んできた。
「出る出る出る出る出る出る出る出るっっっ!!!」
見張りを頼んだジネットが、待ちきれずに慌てて駆け込んできたのだ。
彼女も副長ほどではないが、限界ギリギリの状態だった。
副長の立てる水音と、気持ちの良さそうな声に刺激されて、我慢に綻びができしまったのだろう。
「ふふふ副長!? この部屋っ、ゴミ箱とかっ、な、ないんですかっ!?」
「ないわよ……! あったら、私だって……っ」
「あああぁぁぁぁっっ!!? も、もうダメええぇぇぇっっっ!!!」
ジョバババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババッッッッ!!!!
そしてジネットは、副長の背後……ほぼ、部屋のど真ん中で放尿を始めてしまった。
どうやら本当に余裕がなく、副長の方を向いたまま始めてしまったらしい。
ほぼ真後ろからの水音に、副長が慌てて振り返る。
「ちょっと!? 私にかけないで――」
そこにいたのは予想通り、自分の方を向いて放尿を続けるジネット。
そして、青白い肌をした何か。
人のフリをした異形が、目の位置に空いた穴で、幸せそうな顔で放尿を続けるジネットを見下ろしていた。
ソレは口を大きく広げて、ジネットの上半身に齧り付く。
ジネットはバタバタともがいていたが、何か固いものが砕ける音がすると、その手足から力が抜けていった。
ソレはジネットだったものを吐き出すと、空洞の目を副長に向け、一歩一歩近づいてくる。
今すぐ逃げないといけないのはわかっているのに、体は石化したように動かない。
ただ小水だけが、股の間から噴き出し続ける。
ソレが、副長の頭上で大きく口を開けた。
ビジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!
――だから、見張っててって言ったのに。
それが、彼女のこの世での最後の思考になった。
◆アリア
膀胱:大、括約筋:強、101%
ちびり中
◆ジネット
※放尿時
膀胱:中、括約筋:強、103%
◆副長
※失禁時
膀胱:小、括約筋:普、114%