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第3話 毎回ブルマやレオタードが出てくる話で、果たして水着回がテコ入れになるのか

 以前にも少し触れたが、ノイングラート帝国は内陸だ。海水浴をするなら、国外に出る必要がある。


 第1候補は、帝国とはズブズブの同盟国。人気の海洋リゾートも抱えるアリアの実家、ランドハウゼン皇国だ。

 移動も、帝国から南西のウィスタリカ協商国まで、皇国内をぶち抜くランドハウゼン縦断列車が使える。


 が、これはアリアが嫌がった。

 理由は簡単、目立つのだ。


 ランドハウゼン皇族は、国内では顔の露出が多い人気者。

 特にアリアは、フェアリアの大会なんぞにも出ていたりするため、国内を歩くとエライ騒ぎになる。

 海水浴など楽しめるはずもない。


 尚、プライベートビーチはリーザ以外が『なんか違う』と主張し、却下になっている。

 喧騒とか、海の家とかも大事なのだ。ナンパ男は実力をもって排除すればいい。


 と、言うわけでターゲットになったのが、帝国の南に位置する小国。テルディオ王国だ。


 海洋リゾート持ちで、帝国、皇国とも、要人がフラっと旅行に行けるくらいには友好的。

 去年も、5人娘はここで夏を謳歌している。



 更衣室で、各々水着に着替える少女達。

 その中で、アリアは真剣な表情で友人達を観察していた。



(やっぱり……油断ならないわね……!)



 『君の視線を釘付けにする!』と言わんばかりの決意で挑んだこの海水浴だが、結局のところ最も目移りされかねないのは、この友人達なのだ。


 それぞれ、タイプの違う美少女揃い。



 先ずリーザ。とにかくリーザ。

 アリア以上にダイナマイツな彼女は、最も警戒すべき存在だ。

 先日の剣術・格闘術合同訓練の際も、若干目移りしていたのをアリアは見逃していない。



 エルナとアネットも強敵だ。

 膨らみはそれほどではないのだが、2人ともスラリと長い脚が魅力的なモデル体型。


 が、毎回体育で一緒になるエルナに対し、グレンがそういった視線を向けることは殆どない。

 この2人は、若干警戒を落としても構わないだろう。



 むしろ、意外な恐ろしさを秘めているのがロッタだ。

 低身長で幼児体型の彼女だが、腰回りから脚にかけてのムッチリとした肉付きはグレンの大好物。

 体育でも結構見ている。どうやらグレンにとって、胸は飾りに過ぎないらしい。


 飾り気のない、純粋な魅力を纏うロッタは、決して侮ってはならないダークホースなのだ。



「何か、とても失礼なことを考えていないかい……?」


「貴女の女としての魅力に、改めて戦慄を覚えているだけよ……!」


「殴りたい」



 そんなこんなで着替えは進み、ついに少女達の水着お披露目タイムが訪れる。



「お待たせー!」


 先陣を切って浜辺に駆け込んできたのは、エルナだ。

 太陽のように笑う彼女に、浜辺の男どもが一斉に視線を送る。


 特に飾り気のない、黄色と白のボーダーのオーソドックスなビキニ。

 だがそれが、活発な彼女の印象とマッチしており、強い躍動感を感じさせる。

 彼女の最大の武器でもある、スラリと伸びた脚も美しい。


 グレンは、心の中で85点を付けた。



「自分の武器がわかってるみたいだな」


「ええ、エルナはその辺り外しません」



 次に現れたのは、ロッタ。


 青いワンピースの水着で、胸元と腰回りに白いフリルがあしらわれている。

 少々幼い雰囲気のデザインだが、小柄で可愛らしい彼女によく似合っていた。

 また、短いフリルの裾からはチラリとデルタゾーンが垣間見え、その際のムッチリとした脚と併せて、どこか怪しい魅力を感じさせる。


 グレンは、心の中で93点を付けた。



「それ以上脚だけ見てると、目を潰すよ」


「すいませんでした」



 続いて、アネットの登場だ。

 エルナの時はデレデレ、ロッタの時はニコニコだった浜の男達の表情が、惚けたものに変わる。


 彼女の水着もビキニタイプで、ブラの下とウエスト周りで布地が交差する、クリスクロスと言われるものだ。

 ワインレッドの布地が、彼女の切長の美貌と、アップに纏めた髪に合っている。


「77点」


 が、グレンとしてはそうじゃない。美しくはあるが、そうではないのだ。



「お前、ロリコンだったのか?」

「ちゃいますよ」

「殴りますよ?」




 ――おおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーっっっ!!!



 突如、海岸を埋め尽くす歓声。

 その声の向かう先に現れたのは、リーザ。エリザベート・フラウディーナ公爵令嬢だ。


 纏う水着は、先日のアリアにも勧めていた、惜しげもなく肌を晒すアレの黒バージョン。

 彼女の白い肌と金髪にマッチし、なにより歩く度にその豊満な肢体が零れそうになっており、主に男達は目が離せない。

 その熱い視線にリーザは、『当然ですわね』とばかりに、余裕の笑みで髪をかき上げて応えた。



「何点だ?」


「余計な軋轢を防ぐため、控えさせていただきます」


 因みに81点だ。理由はアリアが指摘したとおり、レッグの切れ込みが深すぎるための大幅減点。

 グレンの好みは、細かいのだ。



 そして――



「こ、今年も、こうなるのね……っ」



 集まる視線に、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、アリアが現れた。



 ――さすがね、エルナ。



 あの水着選びの日。

 やはり今日のように、赤面しながら更衣室から出てきたアリアは、第一声でそう零した。


 エルナがアリアに勧めた水着は、系統としてはシンプルなビキニタイプの物だった。


 上は白で、胸元に結び目ができるタイプ。目立つ結び目から、谷間への視線誘導が期待できる。

 下は黒のウォーターデニムのホットパンツなのだが、これが今回の対グレン用必殺武器になる。


 レッグは普通のビキニボトムスと同程度の切れ込みで、腰回りはローライズで布面積が若干少ない。


「グレン君は、この『若干』が好きなの……出しすぎず、でも周りよりちょっとだけ見えちゃってる特別感。そうゆうのがいいらしいの」


 エルナがうんうんと頷き、残りの3人は『なんでそこまで詳しいの?』と表情で言っている。


「それに……ねぇ、エルナ。確かに、絶対好きだと思うんだけど……その、サイズ……」


「だめよ、これで勝負しなさい」


「うぅ……っ」


 水着のサイズは、アリアの適性より半サイズ小さいのだ。

 普通のデニムより伸縮性があるとはいえ、水着としては硬めな生地は、アリアの豊かな下半身にムッチリと食い込む。

 この食い込みが、グレンに目移りを許さない最大最強の武器になる。


 ついでに右足に革のガーターリングも巻けば、太股も強調できる、一切の死角がない水着アリアの完成だ。

 少女達の水着審査は、満場一致でこれに決まり、そして今、最終審査員の判断が下る。




「5,000点だ……!!」



 点数大爆発だった。

 グレン審査委員長は、『ありがとう……! ありがとう……!』と零しながら、涙と鼻血をダバダバと溢れさせた。


 尚、他のオーディエンスもアリアに釘付けになっている。

 ただ、リーザの時にあった『女神への畏怖』的なものはなく、100%混じりっ気無しの『The.性欲』の視線だ。



 さて、アリアとしては、グレンの評価は十分にわかった。狙い通り、かなり気に入ったらしい。

 が、その口から直接聞きたいと思うのが、恋する乙女の心理というものだろう。


 頬を染める赤に、期待と喜びの色も混ぜ、小走りで何かをバルンバルンさせながらグレンに駆け寄るアリア。

 少し前で立ち止まり、下から渾身の上目遣いを決め――



「これ……どうかな……?」

「えくセれンっっっ!!!」



 グレンは生命の光を纏い、全速力でトイレに駆け出した。




 ◆◆




「凄くいい、よく似合ってる」

「~~~~~~~~っっっ!!!」



 審査委員長改め、大賢者グレンの講評に、アリアは顔面を真っ赤に染めて撃沈した。


 仕方あるまい。

 何せこの男は、自分の姿をオカズに、すぐそこに見えるトイレの中でアレをアレしてきたばかりなのだ。


 アリアが、グレンにどデカい恋愛感情を抱いていなければ、本日は1人でお帰りいただくレベルの暴挙である。


 が、手応えはありすぎるくらいにあった。『釘付け作戦』は、一先ず成功と言っていいだろう。

 アリアは俯きながらも、心の中でガッツポーズを決めた。


「お前、まだその神速早漏治ってなかったのか」


「神速早漏言わんで下さい」


 さて、そろそろこの、当たり前のようにこの場にいて、グレンと一緒に女子達の水着姿を堪能していた男のことを紹介せねばなるまい。



「レオン様、グランツマン様とは知り合いでしたの?」


「あ、あ~、まぁ、コイツの親父殿の関係でな」



 荒々しい金髪ロングヘアの、野生味と気品を併せ持つ男。



 彼の名はレオン――レオンハルト・デア・エルグラート。



 グレン達の1つ上の3年生。

 そして、ノイングラート帝国第三皇子にして、リーザの婚約者である。

 勿論政略結婚だが、お互い内面含めて好きなタイプだったようで、関係は非常に良好だ。


 さて、なんでこんな所に帝国の第三皇子がいるのかと言うと、ここがレオンの母親である、第二正妃の実家だからだ。

 この国と帝国が繋がりが深いのもそのせい。


 レオンは夏休みが早まったので、早々にジジババに挨拶に。そのままリーザと海水浴を楽しもう、という魂胆だ。



「悪かったな、グレン。ハーレムの邪魔をしちまって」


「いーえ、寧ろ来てくれて良かったですよ。今はわちゃわちゃしてますけど、風呂と寝床はぼっちだったんで」



 グレンは一見ハーレムに見えて、矢印は一箇所からしか伸びていない。

 混浴、同衾など不可能だ。



 ……アリアだけなら押せばいけるのだが、グレンはヘタレなので………不可能だ!


 よってグレンは今夜、夕食を摂った後は、昼間の思い出を糧に一人寂しく布団に潜る覚悟でいた。

 割と気安い関係であるレオンハルトの合流は、素直に歓迎していた。


「ほら、グレン君! 男同士でいちゃついてないで、行くわよ!」


「なんだ? 俺と殿下の仲に妬いてんのか?」


「ばばばばばばばばかなこと言わないのっ!」


 かなり『ば』が多いアリアに一同絆されながら、一行は夏の海に突撃していった。


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