第6話 ありえたかも知れない悲劇の話
どうしても書きたい衝動が抑えられなかった、前々話『黒鎖の爪痕と桃色の暴威』から続く『もしも』の話です。
グレンが現れず、シェリアがトドメの一撃を撃てていたら……。
「じゃあ、これで最後にしてあげる!」
「あ゛ぁぁっ! 待って! お願いやめてっ! やめてええぇぇぇぇっっっ!!!」
「よいしょおっっ!!」
――グイイィィッ!
「ん゛あ゛ぁあ゛はあ゛ぁっっ!!」
ジョォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャッッ!!
渾身の力でアリアの膀胱を押し込むシェリア。
パンパンに膨らんだ膀胱には、もう一滴分の隙間もない。
行き場を無くした小水が、アリアの開きかけの水門をこじ開け、下着の中へと迸る。
水流は、既にびしょ濡れの下着とブルマを突き抜けて、アリアの足元でバシャバシャと跳ね回った。
水音に勝利を確信したシェリアは、満足げにアリアの膀胱から手を離す。
「ふふっ、いってらっしゃい♪」
「んぐぅぅっ!」
解放されたアリアは、両手で出口を押さえたまま、生まれたての子鹿のような姿で、必死に足を動かす。
「あ゛ぁっ!? い、嫌っ、もれっ、漏れちゃ、あ゛あ゛ぁっ!」
だが、もう完全には閉じることができなくなった水門は、押し寄せる水の圧力に対してあまりにも無力だった。
一歩足を進めるたびに、出口を押さえる指の隙間から、バシャバシャと床に水流が落ちる。
「トイレっ……トイレにぃ……! あ゛ぁぁっっ!? い、い゛やぁっ……でるぅ……! トイっ……レぇ……!」
アリアだって、頭ではわかっている。
自分はもう、間に合わないと。
こんなことをしても、余計に無様を晒すだけだと。
だが、失態を重ねる度に、逆に強まっていくお漏らしへの忌避感が、アリアに足を止めることを許さない。
尻を振り回して排尿衝動に抗い、それでもジャバジャバと小水を漏らしながら、トイレを目指すアリア。
だが――
「ああぁっ!?」
「あはっ♪」
自らが零した小水に足を滑らせ、アリアの体が床に投げ出される。
咄嗟に両手を前に出し、顔面から落ちることは避けられたが、まともな受け身が取れず、胸から下を強く床に打ち付けてしまった。
「あ゛あ゛ぁああぁぁっっ!!?」
衝撃で膀胱が激しく揺さぶられる。
揺れは水圧を生み、それは半開きになった出口に押し寄せ、濁流となる。
尿道に流れ込む強烈な水の流れに、最後の一線だけは堪えていたアリアの水門が、とうとう完全に開き切ってしまった。
四つん這いで、尻を突き上げた姿勢のまま、ブルルっと震えるアリア。
「あっ……あああぁぁぁぁっ……!」
その震えは、哀しげな悲鳴は、乙女の儚い、最後の抵抗だった。
「い゛や゛あ゛ぁあ゛ぁぁあぁあ゛ぁぁぁぁああ゛あぁぁぁあああぁぁあああぁあぁぁあぁぁあああぁぁああっっっっっっ!!!!!!」
ジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!
ジュイイイイイイイイイイイイイィィィィィイイイイイイイイイイイイイィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィッッッッ!!!!
ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!
開け放たれた水門から黄金色の激流が迸り、アリアの股の下に大きな湖を広げていく。
小水と一緒に四肢の力も抜けていくのか、アリアは身動きひとつ取れず、プルプルと震えながら小水を漏らし続けた。
「あっ、ああぁっ、うぅっ、ああぁあぁっ、うっ、うぅっ、あああぁっ」
それはどんな感情によるものか。アリアの口から溢れるのは、鳴き声にも聞こえる、意味のない呻き。
まるで、人の尊源と共に、言葉まで失ってしまったかのようだ。
そんなアリアに、どんな追い討ちをかけてやろうかと思考を巡らせるシェリア。
だが少し考えて、彼女はもう、自分が手を下す必要がない、ということに思い至った。
「何か凄い声したけど、大じょ……えっ!?」
「ねぇ、どうしたの? って、ア、アリアさん!?」
「うっそ!? え、これ、漏らしてるの!?」
「うわっ……可哀想……」
「あり得ないでしょ……この歳になって、お漏らしとか……っ」
失禁の瞬間の悲鳴を聞きつけ、更衣室にいた生徒達が出てきたのだ。
驚愕、憐み、侮蔑……様々な感情のこもった視線が、アリアと、彼女から溢れた水溜りに突き刺さる。
「あ、あぁっ、嫌ぁっ……! 見ないでっ、見ないでぇぇぇっっ!!」
アリアの願いを聞き入れる者は、周囲を取り囲む少女達の中にはいなかった。
さらに、騒ぎは男子更衣室にまで届き、シャワーも着替えも早い男子達が、ゾロゾロと廊下に現れる。
「うおっ、マジか……」
「え、お漏らし? ランドハウゼンさんが?」
「すっげぇ、まだ出てる」
「どんだけ我慢してたんだよ……!」
「やべ、興奮してきた」
「変態めw ま、俺もだけど」
彼らの視線は、その多くが好奇と、劣情。
高嶺の花のあられもない姿に、大半の男子が股間を硬くし、熱水が溢れ出る出口に視線を奪われていく。
「お願いっ、見ないでええぇぇっ! 嫌ああああああああああああああぁぁぁっっっ!!!」
ジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!
ジャバジャバと廊下を濡らしながら、まだ終わる気配を見せないアリアの恥辱のショー。
様々な感情が飛び交う中、シェリアは1人、感無量といった笑みで、その様子を見下ろしていた。