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第5話 その手に残る掴みかけた勝利の証

『よいしょおっっ!!』

『ん゛あ゛ぁあ゛はあ゛ぁっっ!!』



 ――ジョォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!

 ――バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャッッ!!



















「シェリア、シェリア」


「あはは……いいきみぃ……ふへ……」


「シェリア、起きて」


「ひひひ……うへへ……みっひょもない……」


「シェリア!!」

「ひゃいっ!? あ、へ……あれ?」



 自身の名を呼ぶ強い声に、慌てて飛び起きるシェリア。

 キョロキョロと辺りを見回すと、周囲には自分を囲むように人だかりができていた。


「あれ……? アリアちゃんは……?」


「アリアさん? アリアさんなら、更衣室出てったっきり、帰ってきてないわよ」



 改めて、ぼやけた頭で周囲の状況を確認するシェリア。


 あの最後の一押しを膀胱に受け、アリアは床に小水を撒き散らす無様を晒したはずだ。

 だが、そのアリアの姿は、どれだけ辺りを見回しても見つからなかった。

 床にも水溜りどころか、水滴一つ落ちていない。


「何? 夢でも見た?」


「夢……あれが……?」



 アリアを責め立てていた時のことを、シェリアははっきりと覚えていた。

 それこそ、とても夢とは思えないほど、鮮明に。

 あそこまで現実感を備えた夢など、あり得るのだろうか。


 だが事実として、ここにはアリアも、アリアが漏らした形跡も残っていない。

 あれが夢であれ、別の不可思議な何かであれ、シェリアはアリアを辱めることができなかったのだ。


 押し込んだ下腹の抵抗も、小気味のいい悲鳴も、ブルマから感じた湿り気も――



「あっ」



 弾かれたように、右手の指の臭いを嗅ぐシェリア。

 夢か幻想かの中で、アリアが軽く失禁したことを確かめた右手。


 指の先から、ほのかに、ツンとしたアンモニア臭が香った。



「夢じゃ……ない……!」



 少なくとも、シェリアはアリアを捕まえ、ある程度の責め苦を与えていたのだ。

 手応えの残る右手を、シェリアはグッと握り込んだ。



「次は……逃がさないから……!」



 それはそれとして。



(なんか、首の後ろ痛いわね……?)




 ◆◆




 ――時間を少し戻して、視点を現実のアリアへ。



「げ、げんかいっ……もうっ……げんっ……かいっ……!」


「頑張れアリア! もうちょっと、もうちょっとだから!」



 アリアは、自分を抱え廊下を走るグレンに、必死でしがみついていた。



 実のところシェリアは、アリアの膀胱を崩壊寸前まで追い詰めていた。


 具体的には――



『じゃあ、これで最後にしてあげる!』


『あ゛ぁぁっ! 待って! お願いやめてっ! やめてええぇぇぇぇっっっ!!!』



 までは現実だ。


 この直後、音もなくシェリアの背後に立ったグレンが、その首筋に手刀を叩き込みシェリア昏倒させた。

 そして、ブルマと太股をびしょ濡れにして震えるアリアを見ると、即座に状況を察し、アリアを抱えてトイレへと駆け出したのだ。



 間一髪、更衣室前での大放水を回避したアリアだが、状況は非常に悪いと言わざるを得ない。


 シェリアの責めで、括約筋は最後の力を使い果たし、意地だけで締めた尿道は、小刻みに浸水を許している。

 次の大波は、おそらく耐えられない。


 そして、グレンの進みも、残念ながらかなり遅い。


 何せアリアの堤防は、ほんの僅かな振動でも決壊してしまう状態なのだ。

 武術の世界には『動いていることすら気付けないほどの、静かな足運び』、というものも存在するが、今のアリアにはその程度の振動でも致命傷だ。


 本当に、一切の揺れを与えない、慎重を重ねた足運びが必要なのだ。

 例えグレンの技能を持ってしても、精々が早歩き程度の速さが限度である。



「あ゛あ゛っ!? だ、だめっ、だめっ! でちゃうっ……グレンくん、でちゃうっ!」


「待ってろっ……着いたっ!」



 それでも何とか目的の場所にたどり着き、グレンは足で器用にその扉を開けた。


 アリアは、表情に僅かな希望の色を滲ませ――



「は、早く、出ちゃうっ、ト、トイレっ、トイ――えっ」



 そのまま、顔面全体を凍り付かせた。

 目の前に広がる光景は、待ち望んでいたトイレではなかった。





「ノーラ先生っ! バケツ貸してくれっ!」


「っ!? 今行くわっ!」



 グレンがアリアを連れ込んだのは、養護教諭ノーラ先生の城、保健室だった。



「ま、まって、グレンくんっ……ダメよっ、わたしっ、トイレっ、おしっこ、トイレで……!」


「あぁ、わかってる。ここには俺が勝手に連れてきたんだ。ごめんな、意地悪して」



 まるで、水道トラブルの時のアネットのようなことを言うグレン。

 2人の付き合いは長くはないが、濃密ではある。

 アリアの、例え我慢の限界でもトイレ以外は選べない危うい性格も、もうグレンは把握していた。


 ノーラのことは、『万が一』の時の避難場所だと、エルナから聞かされている。

 彼女とは初等部の頃からの付き合いで、アリアのトイレを言い出せない悪癖も、よく理解してくれていると。



「い゛やぁっ、といれ、とい゛れぇ……あ゛っ!? も、も゛れちゃうっ! ぐれん、くんっ! もれ゛ちゃっ、み゛っ、ないで……!」


「あ、あぁ! 俺は、外に――」

「降ろしちゃダメよっ!」



 ビクビクと震えるアリアをベッドに置こうとするグレン。

 それを、ノーラは、有無を言わさぬ緊迫した声で止めさせた。


 その手に、バケツを持って、大急ぎで2人のところに駆けながら。



「足を広げてっ! 下着も横にずらしてっ!」


「……へ?」



 グレンはしばし、ノーラがそれを自分に言っているのだと気付かなかった。


 そして、その数秒で――





「ん゛あ゛ぁあ゛っ!? も゛ぅっ、だ゛め゛ぇええぇえぇっっ!!」


 ジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!



 アリアの失禁は、始まってしまった。

 厚いはずのブルマの生地を突き抜け、大量の小水が溢れ出し、間一髪ノーラが差し出したバケツに落ちていく。

 ノーラはアリアの様子から、失禁まで秒読み段階に入っていたことを察したのだ。


「おぅわっ!?」


 慌てて動き出すグレン。

 ノーラに言われた通り、アリアを両脚を広げた、幼児に用を足させるような体勢に抱え上げ、さらにブルマごと下着を横にずらす。



 ブジィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッ!!!

 ガラガラガラガラバリバリバララバララガガガラガラガリリガリガリバリバリガラバリッッッッッ!!!!!



 遮るものの無くなった水流が、鉄板に穴を空けんばかり勢いで迸る。

 金属のバケツに打ち付けられる音は、甲高く、大きい。



「あぁっ、い、いやぁぁっ……こんな、格好っ……それに、音も……み、みないでっ……きか、ないでぇ……うぅっ……うぁぁっ……!」



 あまりの羞恥に、脳が焼き切れる寸前のアリア。

 だが、ここまで耐えに耐えた小水は、まだ大半がアリアの体内に残っている。

 勢いは、まったく衰える気配がない。



 ジョビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!!



「いやあぁぁぁっ……止まらないっ……おしっこっ……止まらない……あぁぁ……っ」


(私……グレン君に、こんな姿っ……嫌っ……こんなのっ、嫌ぁっ!)



 シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!



(あぁっ、でも、だめぇっ! 気持ちっ、いいっ……!!)



 脳の理性を司る部分以外、アリアの全器官が放尿の快感を知ってしまったのだ。

 どれだけ願っても、アリアの出口は、魔獣のブレスのような放水を止めることはなかった。


 アリアの放尿は、凡そ1分間に渡り続いた。



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