第7話 先史文明の天才達は美少女戦士がお好き?
時間は少し遡り、アリア達がオニキスウルフと遭遇した頃。
リーザが所属する班も、4m台の少し大きめの魔獣を討伐していた。
残念ながら、こちらは前衛の2名が軽傷を負ったため、現在回復担当の生徒が魔術での治療を施している。
その間、リーザと無傷だったもう1人は、彼らから少し離れたところで、周囲の警戒を行なっていた。
部屋の真ん中、大量の術式が書かれた円形の舞台の上から、周囲を見渡すリーザ。
(ここは……何かの儀式場ですの……?)
バニフリックの宝物庫に遺された術式は、殆どが死んだ術式だ。
動かないか、動いても文字が光るだけで何も起きない。
何人もの魔導技師が修繕を試みたが、ついぞ効果を見せることはなかった。
あまりの手応えのなさに、先史文明滅亡時の被害で、遺跡そのものに不具合が出たのではないか、と言われている。
失われた技術に、リーザは一時思いを馳せる。
そしてもう1人無傷だった生徒は、その技術を前に目を血走らせていた。
彼は勤勉な生徒なのだが、どうにも実技が得意ではない。
今も、無傷で済んだのは全員の後ろでもたついていたからで、軽傷者2名はそんな彼が移動の邪魔になった結果だった。
大幅に落ちたであろう評価に、彼は大いに焦った。故に最も得意とする魔導学で、挽回を試みたのだ。
持てる知識の全てを使い、この部屋の大術式を起動させる。
……普通に考えれば、もちろん無理だ。
何人もの専門家が匙を投げた術式を、たかが授業の成績がいいだけの学生が、動かせるわけがない。
が――
「な、何ですの!?」
突然光り出した術式に、中心にいたリーザが大いに動揺する。
実のところ、術式が動いたのは、特筆すべきことではない。
ここは、『動くけど光るだけ』の術式だ。知識どころか、魔力を通せば誰でも光らせられる。
なので、これでこの騒ぎはお終い。
後は無意味とは言え、何の相談もなしに術式を起動させた彼が、引率の騎士から叱責を受け、更に評価を落とすだけ。
――陣の中心にいるのが、リーザでなかったら。
『適合者の存在を確認。3番保管庫に誘導します』
無機質な音声が室内に響き、リーザを包む光が、目を開けていられない程に強くなる。
「こ、これは……まさか!」
急いで舞台から降りようとしたリーザだったが、一歩遅かった。
彼女が駆け出すよりも早く、室内全てが真っ白に染まる。
やがて光が止んだ時、そこにリーザの姿はなかった。
◆◆
「ん……ここは……?」
目を覚ましたアリアが最初にしたことは、周囲の確認だった。
特に考えてのことではない。
朦朧とした意識の中、何となく辺りを見渡しただけだ。
寝ぼけ眼に映るのは、先ほどまでと同じ遺跡の壁。
強いて言えば、ここまでアリアが通った部屋の中でも狭い方だ。
(私……どうして……んんっ……あれ? 体……動かな……)
「はっ!?」
四肢にかかる抵抗に、急速にアリアの意識が覚醒する。
体が動かないのは当たり前。アリアの手脚は、真っ黒い鎖に絡め取られていた。
両手は揃えて頭上に持ち上げられ、脚は大きく左右に開かされた『人』の字の様な体勢。
ここにきてようやく、アリアは自分が、何かに遺跡の奥に引き摺り込まれたことを思い出した。
「ふふっ……起きたみたいね」
「っ!? あ、貴女は……っ!」
右後方からの声に、アリアは自由にならない体をギリギリまで捩る。
視界に捉えた声の主のことを、アリアはハッキリと覚えていた。
――『黒鎖』のアシュレイ。
先日の、高等部校舎が迷宮と化した紅扉宮事件の際、尿意の限界に達していたアリアに嗜虐の限りを尽くした、アールヴァイスの女幹部だ。
「覚えていてくれたみたいね? とっても嬉しいわ」
2人の視線が交わると、アシュレイは言葉通り、本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。
「くぅ……っ」
対するアリアは、蘇る記憶に顔を青くしていた。
弱みを見せまいと気丈にアシュレイを睨みつけるが、不安と恐怖でどうしても瞳が潤んでしまう。
そんなアリアの目が、アシュレイの周囲に点々と捨て置かれた何かを捉えた。
傷薬や強壮薬等を入れたポーチ……アリアの物だ。
他には、チョーカー型のシャイニーティアのデバイス。
ロングブーツにブレザー、そして――
シャツとショートパンツ。
「あっ、えっ、嘘っ!? い、嫌あぁぁっ!?」
アリアは、着ていた衣服の殆どを脱がされていた。
今体を覆うのは、膝上までの白いニーソックスと、インナーの黒のレオタードだけだ。
「あぁっ、やっぱりいい反応! 女同士でも、私みたいな女に見られるのは、恥ずかしいでしょう?
ギリギリ大事な所は隠せてるのがいいのよね。人間は服を着る生き物だから、全部脱がすと、少し獣に戻っちゃうのよ。
私はね、貴女が人のまま、獣の様に悶える姿が見たいの。この気持ち、わかってもらえるかしら?」
少しずつテンションを上げていくアシュレイ。
『そんな物、分かりたくもない』とばかりに、アリアは精一杯アシュレイを睨みつける。
――いいわ! いいわよその目! もっと、もっと強がって!
だが、その目はむしろ、アシュレイの興奮をさらに加速させた。
ゆっくりとアリアの正面に出たアシュレイは、熱っぽい瞳でその全身を舐め回す。
「くっ……こ、来ないでっ!」
全身を這う不快な視線に、無駄だと分かっていても、鎖を振り解こうと全身を揺らすアリア。
ガチャガチャと鎖を鳴らす憐れな獲物に、アシュレイの目は更に熱を帯びていく。
「ふふふっ、大丈夫よ。痛いことなんてしないから。2人で、ゆっくりと楽しみましょう?」
――ここには、誰も来ないんだから。
※お知らせ
これからアシュレイのお楽しみタイムが始まるのですが、完全に18禁展開になってしまうため、
ノクターンの方に投稿させていただきました。
次話の後書きに検索用のNコードを記載しています。
尚、そちらはお読み頂かなくてもストーリーの把握には全く影響はありません。