第5話 ゼフ先生のお悩み相談室・相談者馬獣人Eさんの場合
「私には、ライバルと呼べる方がいらっしゃるのですが……」
アリアさんだね。
互いに競い、高め合う友達がいる。それはとても素晴らしいこと……なんだけど。
「何か悩みがあるのかな?」
「はい……最近、私の扱いが軽い様な気が致しますの」
男ができると、女の友情は終わるって言うよね。
今は絶対に口にできないけど。
「勝負を挑めば、受けては下さいますの。ですが向こうは、あまり私に興味がないのかもしれません。先日も、勝負の途中で何度も上の空になってしまわれて」
「グレン君かな?」
「ええ、その通りです。あと先生、匿名性をお忘れですよ」
なんちゃってだから。
「やっぱり男ができると、女の子の友情は――」
「先生」
「ごめんなさい」
睨まれちゃった。暗幕越しでも、視線って伝わるんだね。
でも、これは難しいね。
手っ取り早く解決させる方法はあるんだ。
1.アリアさんが振られて、恋の魔法から解ける。
2.Eさんが、ポワポワなアリアさんをぶちのめして目を覚まさせる。
1番は、ちょっと可哀想だよね。そもそも、あの2人は放っておけばくっ付くと思うし。
アリアさんが、思い出のヒーロー君に向けた気持ちに整理をつけたら、多分あっという間だ。
となると2番だけど、これも難しい。
Eさんが、劣っていると言うつもりはないよ?
ただEさんは、アリアさんが得意な分野で、彼女に挑もうとしているんだよね。
でも、別に全ての分野で完全勝利を収めたい、ってわけでもなさそうだ。
「エリザベートさんは、『勝利』を求めているのかな?」
「……? それは、当然のことではありませんの?」
「言い方が悪かったね。君にとって、アリアさんに勝つことは、手段に過ぎないんじゃないかな?」
エリザベートさんがアリアさんに向ける対抗心は、何というか、不思議なほどに後を引かない。
神学の授業では――一方的にだけど――バチバチしてたのに、放課後には仲良く談笑していた。
認め合うライバル、ってことはあると思うけど、それにしてもあの空気は和やかだ。
本当に、勝てないことに忸怩たる思いを抱いている相手に、あんな裏表の無い笑顔は向けられないと思うんだ。
「勝つことが……手段……」
自覚はなかったのかな? 考え込んでしまったね。
「アリアさんと競う時、エリザベートさんが勝利の先に求めているもの……今度何かで競争する時は、それを考えてみるといいかもね」
「……なる程……少し、気をつけてみますわ」
いやいや、あんまり考えすぎると、見えなくなっちゃうよ?
無心、無心でね。
「……で、次の方もいない様ですし、もう一つ相談させていただいてもよろしいでしょうか?」
「うん、構わないよ」
僕も、このまま来客なしだと寂しいし。
「で、次のお悩みはどんな感じかな?」
友情話もいいけど、今度は甘酸っぱい話が聞きたいなぁ。
「アネットが、最近呪印関連の資料をよく見ているのですが……」
おや、解除方法か、穏やかな付き合い方でも調べているのかな?
「催淫のページを、熱っぽく見ておりますの……」
「それは大変だ」