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第2話 若者達に平和な日々を

「またまた集まってもらって、すまないね」


 秘密結社アールヴァイス本部の礼拝堂。今日も、首領からの招集を受けた幹部が集まっていた。


「別にいいんだけどさ、なんで礼拝堂なの? 会議室とかでもよくない?」


「ポイからだよ。『悪の秘密結社』って感じしない?」


「はぁ……神父様が楽しいならいいよ」


 呆れつつも、あっさりと引き下がるアールヴァイス最強、『正義』のジャンパール。

 この中世的な少年は基本的には傍若無人だが、首領――『神父様』の言うことだけは比較的素直に聞く。



「先ずは、例の女の子のことだね」



『例の女の子』


 勿論、シャイニーアリアのことだ。

 対戦経験のあるヴァルハイトとイングリッドが、ピクリと眉を動かす。



「先日の、イングリッド達の働きで、ほぼ学園関係者で間違いないことはわかった」


 イングリッドの襲撃から、彼女はほぼ時間を置かずに現れた。

 そして学園周辺に配置した観測班も、その前後で外部から学園に侵入した者はいないと言っている。


 学生か、教師か……どちらにせよ、内部の者であることは間違いない。



「ネコ科の獣人の若い女。生徒なら中等部2年以上、教師なら新人でしょうか」


「いや、頭部の認識阻害はかなり強力だ。耳の形は当てにならん」


「一応、獣霊じゅうれい族の可能性も捨てるで無いぞ? 奴らは老けんからの」


「はいはい。みんな、ちょっと帰ってきて」



 見えかけた少女の正体に、議論を広げる幹部達。

 そんな彼らを、首領は手を叩いて引き戻す。



「彼女の正体に関しては、学園組に手隙で探ってもらうくらいでいいから。正体がわかっても、若者を即排除って言うのも気が引けるからね。

 グランツマン少年共々、学園のスケジュールで行動予測ができるとわかっただけで、今は十分」


 ――ある程度、予想はついているしね。



 最後の一言は、胸の内に隠した。

 話してしまうと、アシュレイ辺りは暴走するかも知れない。


「学園もしばらく放置で頼むよ。下手に手を出して休校にでもなられたら、彼らの日中の行動が、把握できなくなるからね」


 ジャンパールが『はーい』と手を挙げ、他全員が頷いた。

 幹部達の反応を確認し、首領は次の話題に移る。



「次にヴァルハイトに頼んでいた、怪人の性能試験だけど……一旦縮小するよ」


「っ! 首領閣下、それは、どうして……?」



 名前を出されたヴァルハイトが、大きく狼狽える。

 彼は性能評価という点でしっかりと成果は上げているのだが、毎回のようにグレンに抑え込まれているため、イマイチ自分の実績に自信が持てないのだ。


「まぁ、聞いてヴァルハイト。あとイングリッドもだけど、2人には今後、『城』の捜索を優先して欲しいんだ」


「そろそろ、今の資料だけで進めるのも限界でな。新しい何かが欲しいんじゃ」


 ドクター・ヘイゼルの研究は、そのままアールヴァイスの最終目的に直結する。

 怪人の性能向上、そこから量産化のための調整は概ね完了した。


 が、如何に怪人を揃えても、さすがに大国ノイングラート帝国を相手にするのは不可能だ。

 例え、ドミネートフィールドを最大活用したとしても。


 研究の完成を抜きに一斉蜂起はあり得ない。

 有用な資料が眠っている可能性の高い『城』の発見は、今や最優先事項になった。


「申し訳ありません。私の成果が至らぬばかりに」


「顔を上げて、アシュレイ。城の調査が難航することは、最初からわかっていたことだからね。

 物理的な存在では無い……なんて噂まである。みんな、小さな違和感も、見逃さないように頼むよ」


「「はっ!」」

「……はっ」


 女性幹部2人に遅れて、渋々と言った感じのヴァルハイト。

 若さが溢れた反応は嫌いでは無いが、それはそれとして、首領は少しばかり、彼にカウンセリングの必要性を感じた。



「じゃあ、今日はここまで。私も表の仕事に戻らないといけないしね。今日も頼むよ、イングリッド」


「かしこまりました」



 イングリッドを連れ立って、首領が礼拝堂を出る。今日は外に出るので、幹部達と同じ大扉からだ。

 その表情は、何か悪戯を考えてでもいるのか、どこか楽しげだった。



「さて、学生諸君。しばらくは、平和な時を過ごしておくれ」


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