第6話 △゛$゛#☆〆゛%゛$□゛○☆゛〒゛*゛@&♪゛*゛
――ザアァーーーーーーーーッ。
舞踏の授業が終わり、汗を流そうと、更衣室に隣接したシャワー室に殺到する生徒達。
シャワーの台数はそれなりに多いのだが、1クラス全員ともなると、流石に順番待ちが発生する。
女子などは、仲のいい者同士が一緒に浴びてしまうのもよくあること。
アリアもまた、そうゆう生徒の1人だ。
エルナ、ロッタと共に個室に入り込んだアリアは、適温に温められたシャワーで、ベタつく汗を流していく。
「~♪」
「ご機嫌だね」
「グレンと何かあった?」
「んなっ!?」
上機嫌で鼻歌まで歌うアリアに、エルナとロッタがずぃーっと顔を寄せる。
「べべべ別に、何もないわよっ! そもそもっ、私の機嫌とグレン君に、な、何の関係が……っ」
認めたくない図星を突かれ、真っ赤になって目を泳がせるアリア。
『私はそんなチョロい女じゃない』と自分に言い聞かせるが、実際のところ、授業後半から気持ちはフワッフワだ。
「まだこんなこと言ってますよ、この子?」
「もう吐いてしまいなよ。楽になるから」
「ちょっと、待って、や、やめて……!」
顔はニヤニヤ、手はワキワキ。親友2人が恐ろしい尋問官と化した。
何とか逃れようと後ずさるアリアだったが、ここは狭いシャワーの個室。
逃げ場などありはしない。
「「いざ」」
「やめてえええええぇぇぇっっ!!? あはははははははははっ! あはっ! ひひひひっ! くひひひひっ! やめっ、やめてっ! 死んじゃっ、ひははははははははっっ!!」
左右から挟み込んでの、全力のくすぐり責め。
しかも闇雲な攻撃ではなく、身体能力に優れるエルナがアリアの行動を巧みに妨害し、ロッタが魔術の水流で全方位から弱点を狙うと言う、無駄に高度な技術が使われている。
息もつかせぬ連携に、アリアが抵抗する力を無くしていく。
「ほらほら、言ってごらん? 本当のとこ、どうなんよ?」
「あんまり強情だと、別の口から吐いてもらう事になるよ?」
「くひひひひっ! あっ!? ちょっ、ロッタどこ触ってっ、んんっ! 耳はダメっ、んあぁっ!? 尻尾もよエルナっ!」
頑なに喋ろうとしないアリアに、2人が責め方を変えていく。
ターゲットは脇腹から、頭の猫耳と尻尾へ。
獣人の耳と尻尾の感度は個人差が激しいが、アリアは相当に敏感な方だ。
声色も、どんどんピンク色になっていく。
周りに聞こえないように、ロッタはシャワーの勢いを強めた。
「えるなっ、ろったぁっ、くひぃっ!? もぅっ、ゆるしてぇぇっ! これ、いじょうはぁ、むりぃ……!」
とても良い子には見せられない顔をしながら、アリアが叫ぶ。
白状させるなら今しかないと、エルナはアリアの耳に、口を近付けた。
吐息を送りつつ、尋問を再開しようとして――
全てのシャワーから、水の流れが一斉に止まった。
故障か、それとも水道管の異常か。突然のことに、静寂に包まれるシャワー室。
「あっ」
そんな中、親友達の責めに、ガクガクと笑い続けたアリアの膝が限界を超えた。
「あっ」
ロッタの方に倒れ込むアリアを支えようとした、無意識の行動だろう。
エルナは、ちょうど手の中にあったアリアの尻尾を、ギュッと、掴んでしまった。
――最期の瞬間、アリアが両手で口を抑えたのは、乙女としての精一杯の抵抗だった。
「△゛$゛#☆〆゛%゛$□゛○☆゛〒゛*゛@&♪゛*゛っっっっっっ!!?!?!」
◆◆
しばらくの間、ビクンビクン体を震わせていたアリアが、ようやく落ち着きを取り戻した。
無言のままユラァっと立ち上がるアリア。
「ア、アリア……その……」
「何というか……つい……白熱してしまって……」
放たれる、得体の知れないプレッシャー。
エルナとロッタは竦み上がり、言い訳すら満足に言葉にできない。
「エルナ、ロッタ……」
「「ひぃっ!?」」
アリアの目は、『全開』のグレン以上に、強烈な眼光を宿していた。
――分かち合いましょう。
5分後、見事なアヘ顔を晒す2つの屍が、シャワー室の床に転がった。