第3話 アリア姫が何故太もも丸出しで怪人と戦うことになったのかを3行で説明しよう
なんか変身セット拾って。
怪人にメッチャ効いたから。
仕方なく戦ってる。
すまない、無理だった。
そもそも、アリアの変身と怪人の間には、これと言った関係性はない。
ノイングラート帝国内で、怪人の存在が確認されたのが半年前。
アリア達の住む、学園都市ベルンカイトにも現れるようになったのは、2ヶ月前だ。
対して、アリアが変身能力を身に付けたのは、もう4年近く前。
中等部の遺跡調査実習中、転移トラップにより跳ばされた区域で、とある魔導具を見つけたのだ。
『聖涙布シャイニーティア』
先史文明の遺産でも最高クラスの性能を誇る魔導戦闘服で、強力な身体強化と魔術補助機能があり、ミスリルの全身鎧にも匹敵する防護膜を発生させる、攻防一体の超兵器だ。
それはアリアを所有者と認め、体内に宿り、今日まで幾多の苦難を、アリアと共に切り抜けてきた。
見た目だけは可愛い怪しげな生物に、『ボクと契約して如何わしいコスチュームを着てよ!』とか言われて手に入れたわけではないのだ。
怪人を人間に戻してたって?
確かに、如何にも怪人に対抗するために用意された力っぽいが、アレはそうであって、そうではない。
シャイニーティアには、その時々でアリアにとって都合のいい特殊機能が発動することがあるのだ。
"ヒロイン補正機能を現在のシチュエーションに調整します"
とか、言い出すらしい。
初めての怪人との戦いの後、トドメを刺すのを躊躇していた時にも、アリアの脳内で先程のワードが響いた。
尚、調整が入ると、以前の能力は使えなくなる。
今のアリアは、対怪人特化型の魔法少女なのだ。
「でもま、無理はしないでよね? 今んとこ、そんなに強い怪人は出てきてないみたいだけど」
「少しずつ強くなってきてる……って言ってたね。そのオオカミ男はどうだった?」
注文の列に並びながら、親友2人が心配そうにアリアを伺う。
いくらアリアが優秀とはいえ、まだ16歳の学生だ。
それでも街の警備兵程度なら相手にもならないが、恐ろしい怪人まで圧倒できるのは、やはりシャイニーティアの力によるところが大きい。
もしそれすら上回る怪人が現れれば、今度はアリア自身が危険な目に遭うことになる。
「そうね、また強くなっていたと思う。今までの怪人より頑丈だったし、多少は知能もついてきたみたい」
まだ苦戦する程ではない。だが、現れるたび、少しずつ強くはなってきている。
そしてベルンカイトの怪人の出現頻度は、何故か他の街に比べて多いのだ。
不安にならないと言えば嘘になる。
が、それでもアリアは2人に笑いかける。
「大丈夫。ここは三大国一の魔導先進国、ノイングラート帝国よ? いずれ、何か有効な手を打ってくれるわ。私はそれまでの間、目に映る被害をほんの少し減らすだけ」
そう、何もアリアは、自分一人で全てを解決しようなどとは思っていない。
怪人は、この国が抱える問題。
ならば解決するのもまた、この国が責任を持って当たるべきだ。
そして、自分の手に負えない程の怪人が現れる前に、なんとかしてくれると信頼もしている。
だから、アリアにとって、怪人が強くなっていくのは、今のところ深刻な問題ではなかった。
「そんなことより、あのコスチュームよ……」
「そろそろ受け入れてあげたら? 4年も付き合った相棒なんだし」
「じゃあ、エルナが着る?」
「今日はハンバーグランチセットにでもしよっかなー」
「エルナぁ?」
なんとも友達甲斐のないエルナに、アリアは全力でジト目を向ける。
文句の一つでも言ってやろうと、口を開いたが――
「おい、どうゆうことだっ!」
食堂全体に響く怒声が、それを遮った。