第10話 目の前でお漏らしブルマを搾られるという業の深いプレイ
――ギュッ……パシャパシャパシャ……。
「ぁぁぁぁぁ……っ!」
軽快な水音に、顔を覆って蹲るアリア。
顔面は耳まで真っ赤で、目の端に涙が浮かんでいる。
――ギュッ……パシャパシャパシャ……。
「もう……許して……っ!」
「許してとっ、言われっ、ましてもっ」
グレンは今、アリアのブルマを絞っている。
もちろん、蹴りのお返しに羞恥プレイを仕掛けているわけでは無い。
グレンはMではないが、アリアの生足キック(全見えオプション付き)ならば、十分にご褒美の範疇だ。
さすがに、お漏らしブルマのまま校舎を歩かせるわけにもいかないということで、錬金術の水で可能な限り洗い流しているのだ。
因みにこの作業は、リプルの股間の上でやっている。
カレウスにはアリアの大放出を押しつけたので、これ以上やると人間が出せる量では無くなってしまうからだ。
――ギュッ……パシャパシャパシャ……。
落ちていく水は最初金色だったが、グレンが一絞りする度に、徐々に色を薄め、ついに、無色の水が滴り落ちた。
「ぜぇっ……ぜぇっ……お、終わったぞ」
「…………………………うん」
アリアは、消え入りそうな返事と共にブルマを受け取り、それを肌の上に直接穿いた。
濡れた感触に一瞬表情を顰めるが、先ほどのお漏らしブルマに比べれば、清潔にはなっただけマシだ。
下半身が落ち着いて、アリアも若干の落ち着きを取り戻す。
残りは下着、靴下、靴なのだが……。
「もう無理よ……貴方も、私も……」
グレンはブルマの洗浄で、集中力を使いすぎてぐったりしている。
そしてアリアも、ここから更に素手で下着を絞られる羞恥には、到底耐えられない。
靴下と靴なら……と思うが、グレンにだけ負担をかけるのは、アリアの望むところではない。
結局残りは、黄色くなったグレンのシャツと一緒に、アリアが燃やすことになった。
火と風の魔術を交互に使い、煙を換気口に送りながら焼却。
「ここ、通れればよかったんだけどね」
「開かねえんだよな。壊せもしないし」
換気口に限らず、窓や壁も、紅扉宮内において『部屋』を形成するのに必要な囲いは、破壊することができないのだ。
「よし、終わったわ。これからどうするの? グランツマン君」
「ふっふっふっ……いいものがあるんだ。じゃーん」
「これは……?」
グレンが見せたのは、一本の鍵の様なもの。
アリアがハテナ顔を浮かべていると、グレンは鍵に魔力を通し、空中に地図を出現させた。
「これって……校舎の地図……っ!?」
「今の状態の、な」
大量の四角と、それを繋ぐ無数の緑の線。これが、紅扉宮と化した今の高等部校舎の全容だ。
「片側に扉2つは教室、この大きいのは食堂ね。大きさと扉の位置だけで、意外とわかるものね。こんなもの、どこで手に入れたの?」
「外で不審者が何人か彷徨いててな。一応捕まえてみたら、そのウチの1人が持ってた」
「それ多分、唯の不審者じゃなくて、テロリストよ……」
十中八九、アールヴァイスの構成員だろう。
『一応』で捕まえようとするグレンに、アリアも苦笑いだ。
「そんなことより、この線見てくれよ。どう思う?」
「この青い線?」
グレンが指差すのは、緑の線の中に混じる青い線。
途切れず辿っていけはするが、線の両端にある部屋は、どちらも緑の線からでも入ることができるので、『ゴール』という感じでも無い。
「そうね……例えば、ここを見て」
「青い部屋?」
そこで、アリアは地図の端にある、一本の線も繋がっていない、孤立した青い四角を指差す。
「青い線のルートを辿ると、この部屋への線が出てくる、っていう考えはどうかしら?」
「なる程、それいただき」
アリアの予想に、グレンがニヤリと笑った。
それから地図を眺めて、『よしっ』と呟きアリアに視線を向ける。
「先ずはここ、出口に向かう。そんで、アリアはこの校舎から出るんだ。あのヤバいお姉さんが言うには、何か体に異常が出てるんだろ?」
「え、ええ。力が上手く入らないし、魔力の流れも悪くなっているわ。でも、グランツマン君はどうするの?」
『どうするの?』と聞きつつ、アリアも答えはわかっている。
だからこそ、グレンに向ける視線は、多分に不安混じりだ。
「俺は青い部屋に行ってみるさ。警備とか街の兵隊が入ってきても、弱体化するんじゃ、どうしようもねえからな」
「グランツマン君……」
じっとグレンを見つめるアリア。
――グレン・グランツマン。
編入試験で、武術全科目で1位を塗り替えた脅威の新入生。
先ほどのアシュレイとの戦いは尿意でそれどころではなく、殆ど見れていなかったが、最終的にアールヴァイスの幹部を撃退に追い込んでいる。
グレンが相当に強いことは、アリアも感じていた。
シャイニーティアを使っても、勝てるとは言い切れない程に。
「わかったわ。でも、ここを出る前に更衣室に寄りたいんだけど、いいかしら?」
「確かに、その格好で外に放り出すわけにもいかないもんな。俺はずっと見てたいけど」
「~~~~っっ!! あ、あんまりジッと見ないでっ! この格好、結構恥ずかしいんだからっ!」
グレンが体育着姿に興味津々なことは、アリアも痛いほどわかっていた。
が、実際言葉にされると、改めて強く意識してしまう。
(もうっ! この人はぁ……!)
しきりに下半身を隠そうとするが、2本の腕では、まるで足りなかった。
(……それにしても……!)
改めて、アリアは地図を眺める。
『大きさと扉の位置だけで、意外とわかるものね』
眺めていたら、わかってしまった。
部屋の大きさ、形、扉の数。
(トイレ……無いじゃないっっ!!)
無いなら無いと最初から言ってくれと、アリアは心で、また涙を流した。
◆◆
いくつかの部屋を抜け、アリアとグレンは、あっさりと更衣室に辿り着いた。
(よかったわ……よかったんだけど……むむぅ……っ)
1時間彷徨った迷宮で、これほど簡単に目的の場所についてしまうことに、アリアはどこか釈然としない様子だ。
まぁ、地図があったところで、存在しないトイレには辿り着けなかったわけだが。
「俺も、着替えでも置いてりゃよかったんだがな……」
そう言うグレンの下半身は、全体的に湿っている。
途中で、アリアがイライザ達に見つかったシャワー室を通ることになったので、カッピカピの下半身を洗い流したのだ。
「着替えたら乾かしてあげるから、もうちょっと我慢してなさい。ほら、向こう行ってて!」
『しっしっ』と、野良犬の様にグレンを追い払うと、アリアはロッカーの着替えに手をかける。
汗をかくつもりだったため、変えの下着を用意していたのは幸いだった。
お漏らしを思い出させるブルマなど、いつまでも穿いていたいものでは無い。
清潔な下着に着替え、アリアの気分も上向きになっていく。
そのままシャツ、スカート、ブレザーと身につけ、白のニーハイソックスとローファーも履いて、アリアはいつもの制服姿に戻った。
そして――
「ふぅ……何とか回収できたわね」
羽のついた雫の装飾のチョーカー。シャイニーティアの起動デバイスだ。
アリアとしては、覚悟を決めようが、初心を思い出そうが、未だにあのコスチュームは受け入れ難い。
だが少なくとも、必要な時に変身できるということは、思った以上の安心感が得られるらしい。
アリアの指が、雫の宝石に伸びる。
グレンが向かおうとしている場所は、恐らくは敵にとっての重要拠点だ。
怪人や、あのアシュレイという女が待っているかもしれない。
グレンはそれもわかった上で、当たり前のように一人で乗り込もうとしているのだ。
そんなグレンと、アリアが思い描く『ヒーロー』の姿が重なっていく。
(負けないわよ、私だって……!)
「グランツマン君! 私が『いい』って言うまで、何があってもこっちに来てはダメよ!」
「ん? よくわかんねえけど、わかった!」
こうゆう時、妙に物分かりのいいグレンにクスリと笑い、アリアは、目と心に力を込めた。
「ホーリーライズ!」
尚、アリアがグレンを向こうに行かせたのは、正体を隠すためではなく、変身中一瞬だけ全裸になるからです。