エピローグ 今日も輝けシャイニーアリア
「んっ……んんっ……」
体育の授業中、ランニングの最中に、アリアがむず痒そうな声を漏らす。
別に、疲れたわけでも、聖水皇女的なアレが来たわけでもない。
「……グレン君」
「なんだ、アリア」
「そろそろ……並んでもらっていいかしら?」
お馴染み脚と、ブルマに包まれた尻に突き刺さる、グレンの邪熱視線である。
想いを確かめ合ったからと言って、この男のこれが治ることはなかった。
(治っちゃったら、それはそれで納得いかないんだけど……)
名残惜しそうに距離を詰めるグレンを、膨れっ面で迎えるアリア。
元々の標的だったジャンパールを倒し、アールヴァイスが壊滅しても、グレンが学園を去ることはなかった。
元々グレンの入学自体が、帝国皇立学園の卒業資格を取れば将来の役に立つだろうという、養父ギリアム・ケール・グランツマンの親心。
任務が終われば、本格的に学生として生活をすることになっていたのだ。
グレンがすぐにでも学園都市を離れるのではないか……と不安になっていたアリアは、この話を聞いて、安堵と嬉しさのあまりボロボロと涙を流した。
横に並んだグレンの視線が、顔、胸、デルタゾーンと、結局脚に振り分けられる。
アリアはジト目を強くするが、グレンは全くこたえた様子はない。
やがて、アリアの方が根負けして、大きく息を吐き出す。
そして、頬を赤く染めて、本当に小さな声で囁いた。
「そんなに好きなら……今度、その……着てあげるわよ……っ」
「ごぶろっふぁ!?」
「グレン君っ!?」
アールヴァイスの幹部達の今後も決まった。
『黒鎖』のアシュレイ、『正義』のジャンパールは戦闘で、ドクター・ヘイゼルも怪人化の反動で死亡。
『斬裂』のヴァルハイトは、街の警備兵殺害の上、情状酌量になるような要素、反省の色もないため、極刑が決まった。
『獅哮』のガウリーオは帝国内での犯罪歴はないのだが、彼がテロリストとして活動していたガルデニア聖教国から引き渡しの要求が来ている。
現在は、特級戦力としてのガウリーオの有用性から、引き渡しか、戸籍を書き換えて戦闘奴隷とするか、処遇を決めかねている状態だ。
『首領』ゼフ・ディーマンは教会における全ての地位、権限を剥奪され、ただの虜囚となった。
首領としてアールヴァイス全体の犯罪行為の責任を負う以上、本来極刑は避けられないが、彼だけが知る遺跡や他の犯罪組織との繋がり等、ゼフから引き出したい情報は山ほどある。
帝国は、司法取引の準備を進めているらしい。
そして――『氷華』のイングリッド。
アールヴァイスを裏切り、ゼフ・ディーマンの捕縛、福音の鐘の破壊といった功績を収めた彼女は、致命的な犯罪への関与がなかったこと、十分な反省を見せていることから、幹部としては相当に軽い判決が予想されている。
恐らくは、強制労働2~3年程度に落ち着くだろう。
また、イングリッドから没収した『氷姫装フリージア』は、本件に関するアリア皇女の多大な協力への感謝として、ランドハウゼン皇国に贈与されることとなった。
既に、実際の使用者となるアリア皇女の護衛騎士が、学園都市に来訪し、受理を済ませている。
尚、騎士の名は『マルグリッド』というらしい。
『本当にこの名前なのか……!』
「もう……グレン君たら……」
顔面を真っ赤にして、エルナと2人、ランニングを続けるアリア。
問題のグレン君は、ブルマ姿のアリアとのあれそれを想像し、刺激に耐えられず昏倒した。
今は鼻血をダクダクと流しながら、幸せそうな顔で校庭に横たわっている。
「これは外泊が増えそうだねぇ」
「代わりにっ、ふぅっ、ひぃっ! 泊まり、に、行こ、か、ひぃっ、はぁっ!」
「エルナっ! ロッタは無理しないで!」
エルナと、周回遅れで死にかけのロッタが、ニンマリとした笑みをアリアに向ける。
星華祭での告白から凡そ1週間。つい一昨日、とうとう初めての『お泊まり』をしてきたアリアだが、帰ってきた彼女はポワポワのポンコツ。
具体的にナニをしてきたのかは聞いていないが、少なくとも幸せな夜は過ごしてきたようだ。
そんな中での、先ほどのコスプレOK発言である。
1人寂しく夜を過ごすエルナのため。ロッタがアリアのベッドを占拠する日は、今後増えるものと思われている。
聖涙天使の戦いは終わり、アリアの新しい生活が幕を開けた。
もう、あのレオタードを着て戦うことも当分ないだろう。
が、4人の友人、そして愛する人と過ごす毎日は、きっと戦いの日々よりも騒がし――
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!」
「っっ!!?」
校庭の一角から、突如絹を裂くような悲鳴が響き渡った。
アリアが悲鳴の方向に目を向ければ、そこにはへたり込む多数の生徒達。
そしてその中心には、紫色の肌に2本の角を持った、女性とも男性ともつかない、非常に顔の造形が整った何者かの姿。
体の中央だけがバックリと開いと、ド派手な色合いの全身タイツが、ある意味只者じゃない感を溢れさせている。
「私は妖魔帝国大幹部の1人、セルギュオーネ。貴方達の若いスピリア、我らが妖魔帝様に捧げてもらうわ!」
「妖魔!?」
「帝国!」
「オネェかぁ……」
「なんか、凄えの出てきたな」
如何にも初登場の悪役っぽい名乗りに、思い思いの反応を示すアリア、エルナ、ロッタ。
悲鳴を聞いて飛び起きたグレンも、独特すぎるビジュアルにげんなりしている。
セルギュオーネは、そんな4人の痛々しいものを見るような目に気づくと、何も気にした様子もなくアリアに視線を向ける。
もう、嫌な予感しかしない。
「貴女……いいスピリアを持ってるわね? いいわ、貴女のスピリアは、この私が直々に吸い尽くしてあげる!」
「ふざけるな。スピリアだかなんだか知らねえが、アリアから吸えるものは全部俺のものだ」
「へへへへ変なところで対抗しないでっ!」
「その話!」「聞き捨てならんな!」
グレン達が戯れ合っていると、屋上から2つの人影が飛び降りてきた。
それっぽく登場するため、わざわざ変身して屋上まで駆け上がった、リーザと、イングリッド改め『護衛騎士マルグリッド』である。
尚、アネットは校舎の方から普通に歩いてきている。
「うら若き乙女から強引に何かを吸い出そうなどと……そんな破廉恥なこと、許すわけにはいきませんわね」
「私はアリアから絞れるものを独占しようとする、グレンの方に物申したいのだが」
「イ……マルグリッド、後で話があるわ」
「貴女も苦労しますわね。ようこそ『こちら側』へ」
リーザのアネット、グレンのアルテラ、そしてアリアのイングリッド。
従者というものは、とかくヤバい属性を与えられがちらしい。
「おかしなのがゾロゾロと……何人出てきても無駄なことよ! イービル・ディメンジョン!」
セルギュオーネが手を掲げると、その真上から球形に謎の膜が広がった。
膜はアリア達を包み込み、別の空間へと誘う。
連れてこられた場所は、なんか白い床で、辺り一面銀河やら星雲の、『The☆異空間』といった様相だ。
「ようこそ、私たちの世界『イービル・ディメンジョン』へ。ここでは、貴女達はその魔力を、本来の1割も使うことができないの。つまり、もう貴女達に勝ち目はないわ!」
「またなの!? またこうゆうタイプ!?」
「うわっ、ホントだ。まぁ、筋力は落ちてねえから、ドミネートフィールドよりはマシかな」
「ちなみに、私はいけますわよ?」
「私もだな。今、調整が終わった。アリアも早くこれを」
あっさりと、初見の謎空間に適応するグレン&遺産組。
そしてアリアも、イングリッドから投げ渡されたシャイニーティアを首に巻く。
「ねぇ、これ更衣室に置いてきたんだけど……?」
「護衛騎士は、有事の際には姫の荷物を回収することもあるそうだ」
首に巻いたシャイニーティアが、光を放つ。
"ヒロイン補正、調整完了しました"
脳内に響くメッセージは、アリアがこの空間から、なんの誓約も受けることがなくなった合図。
力を持ち、再び人々を守る側になったという宣言だ。
「もぉぉっ……! 当分着ないでいいと思ったのに……!」
「え、俺いつか着てもらおうと思ってたんだけど……」
「…………着てあげるわよっっっ!!!!」
負けるな、シャイニーアリア。
学園都市の平和は、もう少しの間だけ――
やっぱり、君の双肩にかかっている。
――ホーリーライズ!!
『聖涙天使シャイニーアリア』
これにて完結となります。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
そこそこ長い話となりましたが、お楽しみいただけたでしょうか?
もし楽しんでもらえていたなら、感想や、下の★の評価でお伝えいただければ幸いです。
最後に、聖水変身ヒロイン・アリア姫の、本編僅か4ヶ月間の黄金の戦績!
4月 怪人との戦闘後、1/4ほど漏らしながらトイレに駆け込む
4月 迷宮化した高等部校舎にて失禁(隠蔽に成功)
5月 水道管トラブルでトイレが大混雑となり、待ちきれず排水溝に放尿
6月 変調による急激な尿意のためトイレに間に合わず、保健室でバケツに放尿
6月 尿意を我慢したまま戦闘を続け、敵の攻撃に萎縮し失禁
7月 海水浴にてトイレの混雑に巻き込まれ、1/3ほど漏らしながら穴場のトイレでグレンに見られながら放尿
7月 呪いの城にてトイレが見つからず、クローゼットに隠れている間に失禁(隠蔽に成功)
同日 限界で駆け込んだトイレに先客がおり、1/3ほど漏らしながら放尿
同日 捜索本部に帰還後、トイレまでは辿り着いたが、レオタードを脱げず着衣放尿
8月 最終決戦にて、レイジングティア・フルバーストの反動で失禁
※これからもきっとある。