消滅・雲龍怪人
「……何だって? 雲龍怪人が……やられた、と」
冷酷な声が、珍しく動揺を孕んだ声に変わっていた。
『そんなの、あたくしが聞きたい……っ!? あ、そういうこ、と! あたくしでも思い浮かば、なかった……』
それが、あいつ──彼女の、最期の言葉。
絶叫と共に、彼女は空気に融けた。
偵察怪人が伝達してくれた情報。それを見て、「?」は歯ぎしりをした。
「あの五人まとめても翻弄させるだけの力があるあいつが、たった二人でやられた、と?」
怒りを含ませた声が殺風景な密室に響く。
黒いマントで全身を覆い、顔も黒いマスクで隠し、のっぺりな顔となっている怪人「?」は、いつもの「冷酷・冷静・不動」な雰囲気が崩れていた。
黒い闇のような瞳は怒りに燃え、心なしか赤く輝いている。
送られたデータに描かれた、雲龍怪人を倒した者の名を強くなぞる。
ブルーとピンク。
ビューティーフラワーズの中でも下位のランクに位置する二人がなぜ──。
という疑問は次に書かれていた文で打ち砕かれた。
そう、雲龍怪人は発想力が足りなかったのだ。
力は明らかに上回っていた。それなのに、それなのに、それだけで。
「……──」
「?」は静かに怒りを身の内に秘めるといつもの光のない瞳に戻っていた。
暗黒の怪人である「?」は邪悪な笑みを口元に浮かべる。
全ては、闇に隠す。感情も、作戦も、陰謀も、思惑も全て。
それが、暗黒の怪人「?」だった。





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