湧き上がる歓声
「……ふう、何事かと思ったけど雑魚だったわね」
肩の力を抜いて赤い髪の子、レッドが余裕に笑った。
「それより、墨まみれになった方を起こさなければ。大丈夫かしら?」
全身黒墨まみれになった哀れな人に手を差し出すレッド。
「ビューティーフラワーズさんですか!?」
その人は自身の酷さも忘れるほどレッドを見て目を見開いている。
「ほ、本物なんですね!初めてです……近くで見れて光栄です!眼福!」
「……わ、分かったから立ち上がりなさい。その墨を洗い流さないとね。帰ったらシャワーを浴びるのよ?」
「もちろんです!わたしが墨だらけという醜い姿ですが、レッドさんを見ることができて幸せです!」
「……ありがとう」
少し照れたようにレッドは目をそらした。
だが、その人の目のキラキラは止まらない。
レッドは赤く長い髪を垂らしており、吸い込まれるような紅色の瞳。
美人、というのがズバリ当てはまるほどで、ビューティーフラワーズで一番の人気を誇っている。
「それ以外に被害者はいなそうですわ。ではわたくし達は去るとしましょう」
ふふふっと妖しい笑みを浮かべて緑色の髪の子、グリーンが勝ち気に微笑んだ。
美しい緑色の髪を縦ロールに結んでおり、エメラルドの瞳が綺麗に光る。
彼女は悪役令嬢のような口調で、容姿も美しいお嬢様。
集合場所に戻るため歩き出す5人。
「にしても今日の罪悪スミ怪人はマジで弱っちいかったですね〜。ワタシが提案しましたけども、合わせ技なしでも行けたかもですぅ」
「でもやっぱりトドメはあれがいいじゃない」
「ですぅ」
水色の髪の子、ブルーがニタリと口角を上げる。
可愛らしい顔に碧い瞳、そして光沢を放つ水色の髪を下の方で二つ結びにしている可愛い容姿。
に関わらず、ブルーはこの口調と少しひねくれた性格だ。
中には小悪魔とも言われるほど。
「じゃあこれで、帰りはミスドに寄るですよ。その前に飯川さんと長谷川さんに報告ですぅ」
「そうですわね、あースタジオまで遠いですわ。いちいち報告するのもキツイですの」
「愚痴は抑えなさい。私達の拠点はスタジオなんだから仕方がないじゃないの」
たしなめるレッドは、先頭を切って歩いている。
スタジオまで少し遠いが、仲間で話していれば気が紛れてすぐ着くだろう。
そう思われたその時。
「……あ」
先にレッドが声を上げた。そして、立ち止まってしまう。
「なんですの?」
と後ろにいたグリーンも状況を察したようだ。
「くたびれ、ですぅ」
状況が分かったブルーが悪態をつく。
「またか。いつもスタジオに帰る時はこうなるな」
黄色の髪の子、イエローが真面目な顔で呟いた。
整っている顔に光を反射する黄色の髪をボブにしており、瞳は黄色。
顔立ちが整っているため、美人と言えばそうなるのだが、どちらかというと、かっこ可愛い……否、かっこいいの方だ。
ボーイッシュとも言われる容姿と言葉遣い。いつも冷静。
「蹴散らす、ですかぁ?」
「まさか」
投げやりに言ったブルーの言葉にレッドが反応する。
「彼らは私達を応援してくれる存在。無下にはできないわ。ええ……でもだからといって」
「これは困りましたわ」
5人の目線の先には大勢の人だかり。
ビューティーフラワーズのファンが押し寄せてきたのだ。
「仕方ないなーじゃあいつも通りわたしがあの人達の受け答えをして後から追いかける、でいい?」
みんなが困っている中、桃色の髪の子、ピンクが自信満々に言う。
桃色の愛らしい髪を後ろで一つに結んでおり、穏やかなピンクの瞳。
顔も愛らしい。まるで、天使のような顔立ちで、レッドに続き二番目に人気を集めている。
「任せたいけれど、いいのかしら?いつも貴女はここであの人達の対応をしているでしょ?」
「別にいいよ。ファンの対応するのは好きだから」
「ワタシは大嫌い、ですぅ」
そう、ピンクは5人の中で一番ファンと繋がりがある。
その点も人気となる理由だ。
ファンや野次馬などを面倒がるみんなとは違っていつもピンクは誰とでも笑顔で対応している。
「じゃあいつも通りピンクちゃんに任せますわ。これでわたくし達は去りましょう」
「ええ、そうするわ」
「いつもありがとうですぅ」
「感謝だな」
ピンクに微笑みかけるみんな。
それを見たピンクは押し寄せるファンたちに駆け寄った。
「みんなー来てくれてありがとう!」
「ピンクだああああ!」
湧き上がる歓声。
それに笑顔で答えるピンク。
その間に、他の4人はスタジオへ急いだ。