閃きが勝ちを得る、のですぅ!
『……何を思ったのかしら? 諦め? 自嘲?』
水樹の唇の動きに気づいた雲龍怪人が訝し気に呟く。
それを聞いて桃奈は隣にいる水樹を見た。
そう、確かに水樹は笑っていた。
意味ありげに口の端を持ち上げ、何かを企んでいる、可愛い小悪魔な顔で。
「水樹……?」
桃奈の声に答えず、水樹は一言。
「後悔してもしらないですぅ」
好戦的で、挑発的で、余裕をはらんだ声と共に。
水樹は雲龍怪人を見据えた。
その攻撃的な鋭い瞳には先程の弱々しい欠片も無い。
『何を思っているか知らないけど、悪いけど貴方には──っ!?』
雲龍怪人の言葉が途切れたと思うと、苦悶の表情を浮かべ身をよじり始めた。
怪人特有の、聞き取りづらい甲高いケダモノの悲鳴を上げ、転がりまわる。
それをただ挑発するのでもなく冷たい瞳で水樹は見つめていた。
「何が、起きたの……?」
状況が掴めないまま桃奈は水樹と怪人を見比べる。
怪人が苦しめば苦しむほど、少しずつ雨と雹の勢いが衰えていく。
『そんなの、あたくしが聞きたい……っ!? あ、そういうこ、と! あたくしでも思い浮かば、なかった……』
なにかに気づいたのか悶ながら雲龍怪人は語尾を力なく呟いた。
「……残念でしたねぇ。そんなのにも気づかないお前は死ね、ですぅ」
そう言ったと同時に更に雲龍怪人は絶叫を上げた。
鱗に覆われた皮膚がシワを刻み、なんだか見えない縄にでも締め付けられているかのようだった。
否、実際のその通りである。
そのネタバラシをする時間ですぅ、と水樹は小馬鹿にしたように笑った。
「そのスカスカな脳みそでもやっと気づけたんですぅ? ワタシがお前の雨を逆手に取ったって。良かったですねぇ、最期に気づけて」
『……っ!?』
「え、どういうこと!?」
悔しそうに、痛みに声にならない悔しさを雲龍怪人はあげる。
唯一、桃奈だけが分かっていなく、水樹に説明を急かした。
「ピンクもまだ気づかんのですぅー? 仕方ないですぅ。ワタシはあの野郎についてる水分を縄のように使ったのですぅ」
こんな激しい雨の中だ、空気中には水樹の使える水分がたくさんありふれている。
雲龍怪人の鱗についている水滴も、そうだ。
互いに濡れている状況だからこそ、水樹は気づいたのだ。
その水滴を、桃奈の蔦のように、縄のように、操れば──。
「そういうこと……凄い、さすがブルー」
桃奈が感嘆の声をあげ、雲龍怪人がそれを睨みつける。
その瞳をふっと水樹は笑い飛ばした。
「お前が先に気づいていればワタシ達を瞬殺出来たのにですぅ。まさか気づかなかったんですねぇ。やっぱり……閃きが勝ちを得る、のですぅ!」
その言葉に反論する声は上がらなかった。
最後に──ひときわ大きな断末魔を轟かせると雲龍怪人は静かに霧散し、虚空へ消えた。
──空には、虹がかかったのだった。





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