雲龍怪人の雨とブルーの水
「な、なんなのあれは!?」
親友が怪人と対面しているのを見て祐奈は声を震わせている。
「怪人なんて僕も見るの初めてだよ……ここは、蒼井さんに任せて僕達は逃げるしかないと思う」
和も珍しく震えている。
「でもそんな事できる!?あたしも和くんも!大切な人を置いていって!?」
「……でも、蒼井さんなら」
大丈夫、と言おうとした和の声を祐奈は遮った。
「水樹は、一人個人の力だと、あんまり戦闘できないの!」
「……え?」
祐奈の叫び声に聞き返す和。
「一応あたしだって親友なんだよ?水樹の力がどれだけなのかも知ってる。レッド、グリーン、イエローは個人でも強いけど、ピンクとブルー……水樹は、個人だとそんなに強くないの、言っちゃえば」
「でも、蒼井さんは充分」
「あんな怪人相手で水樹がどこまで戦えるか分かる?あんな巨体で……しかも見た感じ天候操れそうだし……水樹の力がどこまで通用するか、信じたいけど……信じられない……」
弱気になる祐奈の瞳には不敵な笑みを浮かべている水樹と巨体な大蛇、雲龍怪人。
水樹の笑みでさえも脆く崩れ落ちそうな、あまりにも強そうな大きな相手。
しかし、和は自信満々に言い切った。
「まずは蒼井さんを信じるしかないよ。蒼井さんが活躍してる間に他のメンバーを呼べば良いんじゃないか?麻倉さんは他のメンバーの番号、分かる?」
「……ピンク、桃奈さんだけなら知ってる。前、会ったことあるの」
そう言いながら祐奈は離れた所で携帯を操作する。しっかりと水樹を見守りながら。
桃奈は丁度学校が終わった所で、今すぐ向かうとのことだ。
後は、どこまで水樹が活躍できるか。
雲龍怪人とは、ビューティーフラワーズの5人で前に対面したことがある、天候を操る怪人だ。
前回は怪人を追い詰めることが出来たが、5人合わさってギリギリであり、それも最後にやすやすと逃げられてしまった。
果たして、そんな強敵に水樹一人でどこまで頑張れるのか──。
「ワタシも舐められたもんですぅ。ワタシ一人でもこんな怪人ぐらいぶっ飛ばしてやるですぅ!」
『またそうやって戯言を。アタシは貴方の実力を把握している』
「どっちが戯言ですかねぇー叩きのめしてやるですよ!」
ニヤリと笑って水樹は手に発現させていた水球を雲龍怪人に叩きつける。
だが、そんなものではびくともしなかった。
相変わらずどっしり構えている。
「──なんて分かってますぅ!」
間一髪も入れず、水樹はすぐに次の攻撃へ移っていた。
なんと、傘を怪人に向かって投げたのだ。
『……え』
さすがにこれには怪人は驚いていた。
傘が当たっても痛くも痒くもないが、水樹の突拍子もない行動に一瞬止まってしまった。
「隙きありっですぅ!悪潰しの水圧ーぅ!」
その膠着した怪人に向けて、水樹は両手からシャワーよろしく大量の水を勢いよく、放つ。
怪人は水の量に圧迫され、迂闊に動けない。
『貴方にしては奇策』
怪人は動けていないが、ダメージは受けていなそうに見える。
それに比べ、水樹の服には水分が含み、瞬く間にずぶ濡れになってしまっている。
『でも』
「ごちゃごちゃうるせーですぅ!」
水樹は水圧を高くした。しかし、思ったよりダメージを与えられずに苛ついている。
彼女としては、傘を投げて気を逸し、強力な技「水圧」を放って仕留めるという作戦だったのだが……。
『全然効いてない。ならこっちから』
無機質な機械音のような声。怪人の不気味な声が水樹の頭にガンガン響く。
水樹は更に警戒を深め、圧迫の力を強くした、が。
「水樹ー!後ろに跳んでッ!」
その瞬間、祐奈の必死な声が聞こえたため、半分本能に任せて水樹は後ろへ跳んだところ──。
地面にぴしりと、まるでガラスのようにヒビが入っていた。
水樹はすぐに理解した。
雲龍怪人は空から雷を降らせたのだと。そしてそれを祐奈が気づいてくれたのだと。
「祐奈、ありがとうですぅ……。それよりマズいですぅ……」
小さな声で水樹は呟いた。
雲龍怪人は空から攻撃するため頭上を警戒して、しかもあの防御が高い巨体を相手にするのだ。
改めてこの怪人の強さを知らされる。
5人揃っても勝てなかった強敵を。
「……でもやるしかないですぅ!」
雨に濡れても、立ち阻むのが強敵でも。
ビューティーフラワーズのブルー……蒼井水樹の希望は折れない。





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