長谷川家の名付け伝統
長谷川は、ネーミングセンスがない。
もちろんのこと、長谷川の親もネーミングセンスがない。
そう、遺伝してしまったのである。
長谷川伸助
それが長谷川の父、同じ苗字の長谷川であった。
実の息子に「鯛」というたった一字でしかも、魚の名前。発音も「たい」というたった二字で言いづらい。
せめて「たいき」などの「たい」の後に何かつけられなかったのか、と思わずにはいられない。
だから、長谷川鯛という面白い名前はすぐ覚えられる。
鯛と名付けた伸助の名前も古い名前のようで、鯛と違った意味でユーモアがある。
しかも、「しんすけ」と読むのではなく「のびすけ」である。
とあるアニメの主人公の名前に影響されたのか、伸助の母が付けたという。
そう、鯛からはおばあちゃんにあたる、旧名西川瑠流で長谷川瑠流だ。
長谷川家のネーミングセンスの無さは西川家から貰ってきてしまったようだ。
瑠流という名前も半分センスの無さが出ている。
はじめは、瑠流の父が「流々」にしようとしたのを慌てて瑠流の母が止めたそうだ。
なぜ、ここまでネーミングセンスの無さが遺伝するのか。
結婚した相手がどれだけネーミングセンスがあっても長谷川家のセンスの無さは薄れることが無かった。
そればかりか、濃くなってきている気がする。
しかも、見た目ではネーミングセンスが無いということが周りが分からないため、できそうな長谷川に任せてしまうのだ。
そうして期待して名前を聞くと、呆然としてしまう、という。
「ああ、わたくし達が長谷川さんに名前を付けられたという時点で運は尽きてしまったのですわ……」
そんな話を飯川から聞いたグリーン、萌葱美登利は嘆いた。
「橙花も言ってましたけど、ビューティーフラワーズって名前が少し違う気がするのですわ。けれど鯛という名前よりはマシという気がするわたくしはおかしいのでしょうか」
「いいえ、十分正常よ。あの人のネーミングセンスには懲りるわね」
美登利の言葉にうなずく飯川。
「けれどなぜ飯川さんは長谷川家のことを知っているのでしょうか?」
美登利は疑問を口にした。
まさか自分がネーミングセンスがない話を長谷川からするわけないだろうし、それを飯川が知っているのはなぜなのか。
「ああ、それは鯛の母親から聞いたのよ。とあることが事情で、鯛の家に行く羽目になったときに鯛の母親に会って愚痴られたの」
「長谷川家に取り込まれた人も苦労しますわね……」
思わず苦笑する美登利。
「でもそれ以外は別にいいって言ってたけどね」
飯川もふふふっと笑った。
今日もビューティーフラワーズは楽しくやっている。





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