表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(性的に)呪われた騎士を救えと言われても、テニスラケットしか持ってません!  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/88

47.呪いの発動


『炎の刃!』

 ラインハルトの声が響き、ひゅんと目の前を小さな炎が飛んでいった。

 横目で確認すると、ラインハルトが対峙している魔獣は二頭、エスターの前には七頭いた。その内、四頭はわたしの魔法で足止めしているけど、二人とも複数の魔獣と同時に戦わなくてはならない状況だ。大丈夫なんだろうか。


 エスターは脇から襲いかかってきた魔獣を危なげなくかわすと、正面の魔獣に突っ込んでいった。魔獣が咆哮を上げ、エスター目がけて丸太みたいに太い腕を振り下ろす。鋭い爪をエスターが剣で弾くと、ガキッ!と鈍い音が響いた。

 攻撃を跳ね返された魔獣がたたらを踏む。その隙を逃さず、エスターが魔獣に剣を振り下ろした。エスターの剣を受け、魔獣がどうと倒れる。


 あの大きさの魔獣を一撃で沈めるなんて、すごい力だ。

 エスターの怪力に驚いていると、

『炎の槍!』

 後ろでラインハルトが更なる魔法を繰り出していた。


 『炎の刃』は、小さな炎の群れが獲物を切り裂く魔法だが、『炎の槍』はその名の通り、炎が槍のように一直線に獲物へと向かい、その体を貫く魔法だ。『刃』や『龍』と違い、高い殺傷力がある。


 炎に胸を貫かれた魔獣が、恐ろしい声を上げて暴れ回る。あの魔法を受けても即死しないなんて、すごい生命力だ。


 すると、ラインハルトと対峙していたもう一頭の魔獣が、ラインハルトの側をすり抜け、わたし目がけて突進してきた。

 わたしはテニスラケットを持ったまま、呆然と突っ立っていた。

 わたしは円に入っている。この円は防御機能のある陣だから、下手に動かないほうがいい。というか、動けない。恐怖で体が固まっている。


「ユリ様!」

 エスターが、戦っていた魔獣を剣で吹っ飛ばすと、わたしへ走り寄った。

「おのれ!」

 エスターは大きく剣を振りかぶり、後ろから魔獣に斬りかかった。エスターの一撃で、魔獣が膝をつく。そのまま魔獣はわたしに倒れかかってきた。下敷きになると思った瞬間、円がブワッと風を巻き起こした。風を受けて、魔獣が横倒しに地面に崩れ落ちる。


「ユリ様、ご無事ですか!?」

 エスターの問いかけに、わたしは震えながら頷いた。あまりの展開に声が出ない。こんな巨大な魔獣に襲いかかられたことなんてなかったから、恐怖で体が動かない。


 エスターは何か言いかけたけど、前方の魔獣が再び襲いかかってきた。エスターは剣で魔獣を横なぎに払うと、よろけたところを鋭く突いた。


 わたしはがくがくする膝を叱咤して、足を踏ん張った。

 これくらい、平気。なんでもない。頑張れ、あと少しだけ!


『風の盾!』

 エスターの前にもう一つ、盾を増やした。これで一対一だ、戦いやすくなるだろう。

 思った通り、複数の魔獣を相手にしていた時より、エスターの動きが格段に良くなった。対峙していた一頭を倒すと、『盾』に阻まれていた魔獣も次々と斬り伏せていく。


 ……よ、よし、後は、ラインハルトが相手をしている魔獣だけだ、と思ったその時だった。


「う……」

 ふいにエスターがよろめき、膝をついた。

「エスター!」

 わたしは慌ててエスターに駆け寄った。


「どうしたんですか、どこか怪我!? 大丈夫!?」

 見ていた限りでは、怪我を負った様子はなかったんだけど、見過ごしたんだろうか。どうしよう。

「エスター」

 膝をついたエスターの肩に手をかけると、ぐいっとその手を引っ張られた。


「え?」

 くるりと視界が反転する。

 仰向けの状態で地面に体を押さえ込まれ、わたしは驚いてエスターを見上げた。

「エスター? どうしたの、大丈夫?」

 エスターは無言でわたしの両肩を押さえつけた。息が荒い。


 なんだろう、エスターの様子が変だ。

 と思ったら、

「んっ!?」

 エスターの顔が近づき、唐突にキスされた。


 なに!? なになになんで!? 突然なんなの!?


 わたしがパニックになっていると、

「呪いの発動だ!」

 ラインハルトが叫んだ。


「エスターの呪いを祓え、ユリ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ