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(性的に)呪われた騎士を救えと言われても、テニスラケットしか持ってません!  作者: 倉本縞


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31.人は見た目によらなすぎる


「ユリ、落ち着け」

 ラインハルトがなだめるように言った。

「おまえが混乱するのもわかるが、感情的になっても物事は解決せぬ」

「……はい、すみません……」

 わたしはうつむき、小さな声で謝った。


 恥ずかしい。王族とはいえ、こんな小さな子どもに諭されるなんて。

 ちらりとエスターの様子をうかがうと、悄然とうなだれていた。


 あああ、どうしよう。

 絶対傷つけた。そんなつもりじゃなかったのに、どうしよう。

 あーもう、わたしのバカバカバカ! なんであんな事言っちゃったんだろう。自分で自分が信じられない。


「あの、エスター……」

「ユリ」

 わたしの言葉をさえぎり、ラインハルトが言った。


「その話は後にしろ。今は痴話ゲンカをしている場合ではない」

「痴話ゲンカ!?」

 わたしはかっと顔が赤くなるのを感じた。


「そんなんじゃないです!」

 エスターを見ると、エスターも真っ赤な顔でこちらを見ている。


 ちょっとやめて! 恥ずかしいからやめて!


「晩餐会の話をしていいか?」

 ラインハルトが微妙な表情で言った。

 この場から走って逃げたい気持ちを押さえつけ、わたしは黙ってうなずいた。

 あーもう、この場に埋まってしまいたい。痴話ゲンカって、そんなんじゃないのに……。


「……兄上が側室の話を持ち出した理由は、二つほど考えられる」

 ラインハルトの言葉に、わたしは首をかしげた。二つも?


「まず一つ目。おまえは瘴気を祓える。いま現在、瘴気を祓える魔法使いは存在しないから、その能力を手放したくないのだろう」

 なるほど。たしかに魔獣をいちいち討伐するより、発生元を絶ったほうが効率はいいよね。

「二つ目。他国への牽制に、異世界の偉大な魔法使いを王家に迎えたと喧伝するためだ。我が国の兵力は先の魔女との戦いで疲弊している。そこに付け込まれぬよう、対外的な効果を見込んだのだろう」

 いや、偉大な魔法使いって……、実際は魔法制御もおぼつかない素人スレスレ魔法初心者なんですけど。


 ラインハルトは難しい表情で言った。

「兄上のお気持ちはわかる。国益を考えるのならば、おまえを国に留めおくのが正しい道だろうからな」

 同志のまさかの裏切り発言に、わたしはショックを受けて固まった。


「……とはいえ、おまえの気持ちを無視し、無理強いするつもりはない。そんな事をすれば、エスターに殺されるだろうからな」

 冗談めかした言葉だったけれど、わたしはほっと息をついた。


「では、いかがなさいますか。やはりハティスの森へ……」

「……もう一つ、方法がある」

 ラインハルトが少し迷った後、口を開いた。


「ユリには既に想いあう相手がいるということにすれば良い。事実はどうあれ、晩餐会ではっきりそう口にすれば、兄上もそれ以上、事を進めようとはせぬだろう」

「ユリ様」

 エスターは素早くわたしの手を取り、懇願するように言った。

「お願いです、どうか私の名をお使いください。……私をあなたの恋人として、陛下にお伝えください」

「え……」

 恋人って。

 わたしが真っ赤になって固まっていると、ラインハルトが咳払いして言った。


「もしくは、私の名を出しても良い」

「え?」

 わたしは驚いてラインハルトを見た。いや、それはいくら何でも。

「あの、殿下、お気持ちはありがたいですが、殿下とわたしでは、いくら何でも年齢差がありすぎでは」

 ラインハルトは複雑そうな表情でわたしを見た。


「……ユリ、おまえは今いくつだ」

「え? ああ……、今年十八歳ですが」

「そうか。私は二十七歳だ」

 へー、と軽く流しかけ、わたしはギョッとしてラインハルトを見た。


「……え?」

「七歳ではないぞ、二十七歳だ」

「え……?」

 説明を求めてエスターを見ると、

「私は十八歳です、ユリ様」

 訴えるようにエスターが言った。わたしと同い年なのか。エスター、意外に若い。……いや、それは今どうでもいい!


「え、え? なんで? 二十七歳って……」

「……私は、火の精霊の加護を受けている」

 ええ、なんかそんな話は聞きましたが。


「精霊が私に与えた祝福だ。……精霊と同じ命、力を分け与えられた。それゆえ、私の体に流れる時間は、他の人間より緩やかになっている」

 淡々と語る殿下。


 精霊と同じ命……。ファンタジーだ……。

 というか、美少女殿下、まさかの年上!



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