表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(性的に)呪われた騎士を救えと言われても、テニスラケットしか持ってません!  作者: 倉本縞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/88

30.制御できない


「ラインハルト様! 黙って頭下げてればいいって言ったじゃないですか! なのに晩餐会って……、側室って、どういうことですか!?」

「私に聞くな!」


 謁見を終えたわたしは、半泣き状態でラインハルトに詰め寄った。

 ラインハルト、エスター、わたしの三人はいったんラインハルトの私室に戻り、変更された今後の予定について話し合うことになったのだが、わたしは混乱の極みにいた。

 ラインハルトも混乱している様子だったが、それに配慮する余裕などない。


「……兄上の申し出は、私にも予想外だった。おまえの存在は、兄上は既に把握済みだ。その上で何の動きもなかったということは、つまり見て見ぬふりをされていたということだ。なぜ今になってこのような……」

「リオン殿下の側室に、というお話ですが、これは何としても阻止せねばなりません」

 険しい表情でエスターが言う。


「あの、リオン殿下って誰なんですか」

 質問すると、二人が勢いよくわたしを見た。

 いやだって、わたし異世界人ですから。皆さんの常識は通用しませんから。


「……そう言えばおまえは、我が国について無知であったな」

「ユリ様は異世界から召喚されたのです。ご存じなくて当然です」

 エスターが庇うように言ってくれたが、ラインハルトは、ふう、と疲れたようにため息をついた。


「リオン殿下は……、私の甥だ。ここロージャ国の王太子であり、次期国王として陛下を補佐されている」

「……ひょっとして、王様の後ろにいた方ですか?」

「そうだ」

 よく覚えていないけど、なんか金髪の人がいたような。


「なんでその方の側室に……っていうか、たぶんリオン殿下にはもう正妃様がいらっしゃるんですよね?」

「一昨年、隣国の王女アデリナ様を娶られている」

「そんなとこにわたしをねじ込まれても困るんですけど!」

 わたしはほとんど悲鳴のように言った。


 いやほんと無理。異世界で顔もよく知らない王子様の側室にされるとか、地獄だ。


「わかっている」

 ラインハルトは仏頂面で言った。

「私とて、おまえを王家に迎えるのはごめんだ」

 理由はともかく利害は一致した! 共に戦おう同志よ!


「いざとなれば、ハティスの森に入ってしまえばよいのです」

 エスターが真顔で言った。

「ハティスの森に入れば、いかな陛下と言えど手出しはできません」

「その代わり城へは戻れんぞ」

 ラインハルトは難しい顔で言ったが、

「かまいません。ユリ様を元の世界にお帰しできればよいのですから」


 いや、わたしはいいけど、エスター達はマズいことになるのでは。陛下の命を無視してわたしを元の世界に帰らせました!なんてことになったら、なんらかの罰を受けるんじゃないか。


 わたしは希望的観測を述べてみた。

「王様は、わたしの意見をきく、とおっしゃって下さったから、晩餐会で元の世界に帰りたいって話せば、きっと……」

「わかっていただければよいのだが」

 ラインハルト、頭痛がするのか額を押さえている。

「ともかく、陛下直々にお誘いいただいたのだ。晩餐会には出席せねばならん」

「……わたし、マナーとかわかりませんよ」

「なにか言われたら、これが異世界のマナーだと言い返せ」

 乱暴だけど、実際そうするしかないな、うん。


「……ユリ様、今すぐにでもハティスの森へ参られますか? お供いたしますが」

「おいエスター」

 ラインハルトが咎めるように言ったが、エスターはわたしをじっと見つめた。


「あなたは、こちらの世界の都合で無理やり召喚されてしまいました。この上、あなたの意思を無視して婚姻を強要するなど、あってはならぬことです」


 エスターがいつも通り、正論を口にした。

 その通りなんだけど、わたしは何故かイラっとした。


「じゃ、じゃあ……、なんでエスターは、わたしに、その……、あんな事言ったんですか」

 エスターは虚をつかれたようにわたしを見た。


「わたしはもうすぐ、元の世界に帰っちゃうのに。なんであんなこと」

「ユリ様」

「もう会えなくなるのに、あんな事言うなんて。わたしがどう思うかなんて、どうでも良かったんですか」

「ユリ様……」

 エスターが悲しそうにわたしを見た。

 ズキリと胸が痛んだけど、言葉を止められずにわたしは言った。


「エスターは勝手です!」


 違う。エスターほど他人を気遣う人はいない。エスターが勝手なら、わたしを含め全人類が天上天下唯我独尊野郎だ。

 でも、この時は心の中がぐちゃぐちゃで、自分で自分をコントロールできなかった。

 ひどい事を言っているとわかっているのに、言葉を止められなかった。


 わたし、どうしちゃったんだろう。

 自分で自分がわからない。

 なんでこんな八つ当たりみたいなこと、エスターに言っちゃうんだろう?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ